アラスカ:デナリ(マッキンリー)遠征 (6194m) 2004.06.05〜07.01 |
■概要 |
デナリ(マッキンリー)は標高:6194m(20,320 ft)、北緯63度に位置する北アメリカ大陸の最高峰。5月〜7月がベストシーズン。我々は、休暇の都合もあり6月に取り組むことにした。例年1000人以上がアタックし、登頂率は、50-60%とのことだ。 インターネットで、多くの情報を収集する。デナリ国立公園のHPや国内の登頂記録、等々。又、登頂された方々からのアドバイスを得、概ね『日本の厳冬期+α』との認識を得る。特徴をまとめると以下通り。 |
■緯度の高い地域にある高峰の為、ヒマラヤよりは実高度:6194mより気圧が低い。7000m近い高度に相当。休養と天候を見極めながらの確実な高度順応が重要・・・タクティクスが決め手! ■強風と厳寒:6月の頂上付近の最低温度は-30℃、快晴の氷河上は汗ばむほどの陽気!日陰に入ると零下!・・・1日の温度差は50℃に達することもある。風は、70mile/h (32m/sec)は珍しくない。まさしく台風なみ! ■時期が進むとクレパスが発達する。特に、氷河登行時のヒドンクレパスに注意!チームワークの取れた氷河登行重要! ■軽飛行機が着陸するLP(ランディングポイント)から山頂までは約28.5km。標高差は、約4060mある。かなりな距離と標高差だが荷揚げは全て自力!装備(食料含む)は各自およそ50kg程度。要体力! ■技術:日本の雪山技術で対応可能。岩と雪のミックスした岩稜、急雪壁の登行、ラッセル・・・アンザイレン登行、歩行、確保、等。問題は、高高度(息が切れる!)で確実にできる事! |
・・・・・行くからにはどうしても登頂したい!・・・装備は、厳冬期装備に足、手、顔の防寒をプラスする。羽毛服(上のみ)、下着追加(ダマール又はフリース)、羽毛ミトン、高所帽、オーバーシューズ・・・・食料は、アルファ米+ドライフーズに嗜好品とし軽量化を図る・・・・・トレーニングは、体力:冬・春の雪山長期山行と日常のボッカ、高所対策:富士山山頂での宿泊、技術:冬季伯耆大山での雪稜、岩稜登行、等々・・・・・・・。 必ずしも十分じゃなかったが各人やれる事はやって臨んだデナリ! |
|
訪ったルートは、ウェストバットレス。天も味方したのか、全員体調十分、爽快な気分で、2004.06.26 19:00 快晴・無風の山頂に立ち、アラスカ山脈の諸峰を眼下にすることが出来た。 入山後、15日目である。しかもまさしくギリギリであったが予定のフライトをキャッチ、費用の追加も発生せず無事計画通り帰国!・・・・全てに感謝!感謝!感謝!・・・皆さん、御支援、御声援有り難う御座いました。 |
|
カヒルトナ氷河からのぞむマッキンリー南峰(最奥のピーク) |
■資料 |
■参加メンバー:原田徳一(37)、岡村繁雄(48)、高木康(50)、久保泰雄(56)、以上4名。(年令)。今回の山行リーダーは久保が務めた。全員、北九州山岳同好会『嵐』会員。 |
■山行日程(計画) 出国(6/5)から帰国(7/1)まで27日間とし、往復の航空券はFIXとした。タルキートナ〜LP(ランディングポイント)間の飛行機移動は天候次第なので往路復路に余裕をみている。又、登山活動中の天候悪化の場合、3日間程度の停滞が予想される為実際の登山活動にも余裕を見た行程とした。余裕の27日間!のつもりであった。結果的には、間一髪間に合ったが、あと3日ほど余裕を見て30日間のほうがよかったかもしれない。自然相手であるので謙虚に対応すべきである。 往復航空券手配及び入国〜LPまでの入山、LPからの下山〜出国までの飛行機、車の移動、現地レンタル品の手配、等は、旅行エージェント:潟Aドベンチャーガイズに一式依頼した。 |
■デナリ国立公園はこちら⇒National Park Service Denali 登山申請、等の情報はこちら⇒Mountaineering Information |
■登山許可証 |
■デナリ(マッキンリー)登行ルート概念図 5万分の1地形図を基に作成。概念図の絶対距離は誤差ありますが相対的な距離はほぼ正確です。 |
■実績行程概要 27日間の行程実績を示す。入山待ちの4日間がなければ概ね計画通りだった。入山待ちの実績はこれまでで最大5日とのこと。我々もそれに近い日数我慢したことになる。 |
■装備及び食料 日本の厳冬期を基準に羽毛製品をプラスした。食料は、α米+おかず。最近のフリーズドライ食品は品質が向上しており不満はない。各人毎日α米、1.5-2袋食用し最後まで食欲は落ちなかった。 |
■本報告に登場する御世話になった方々 ・加藤さん:アンカレッジ在住。宿泊及びタルキートナ〜LPアクセス、レンタル、等の手配を旅行社経由で依頼。 Midnight Sun Express ( in Anchorage) 及び Captain Cook Inn( in Anchorage)は加藤さんがオーナーです。 ・荒木さん:長野/東京在住。国際山岳ガイド。7大陸最高峰登頂中!詳しくは⇒ ・小島さん:富山在住。フリーカメラマンで海:Under Water-50m〜山:Alpine+4000mまでのDocumentary OK! ・松本さん:松山在住。1年のうち半年はアラスカの海及び山で撮影を続けているナチュラルフォトグラファー。 『山と渓谷』、2004年3月号に松本さんの写真・文が掲載されています。 神秘的で迫力ある作品、御覧下さい。⇒アラスカ写真記 ・岡野さん:千葉在住。女性ソロクライマー。厳冬期北海道(知床、日高、等)に足繁く通っているとのこと。 |
■【2003年 年次報告書】 Denali National Park & Preserve:Annual Mountaineering
Summary-2003 平均遠征日数:17.8日、デナリ及びフォーレイカーを登山したクライマーの平均年齢:35才、マッキンリーに挑んだ女性は125名で、全体の11%、デナリのガイド登山はクライマーの30%で登頂率は65%、全体の平均登頂率:58%より高い。 45ヶ国から訪れ、アメリカが50%強、続いて英国、カナダ、フランス、スペイン、等。コスタリカ、レバノン、サウジアラビア、スリランカ、ジンバブエからも来山している。6/15、115名登頂が最大、次は6/22で42名登頂した。 マッキンリーは、遠征隊数:325隊、クライマー:1179名、このうち登頂したのは688名で、登頂率:58%であった。登頂者数のうちおよそ80%はウェストバットレスルートからの登頂である。 |
荷揚げは全て自力、そりを引いて登行するカヒルトナ氷河 |
■参加者紹介 4名とも6000m峰は、初めてのチャレンジ。N.Haradaは、トレッキングで5000m以上の経験はあるが他は富士山の3700mどまり。雪山技術、体力に対するよりは高度に対する不安が大きかったことは事実である。登頂者の記録を読む、・・・当然、いろんな主張、考え方があるが、我々の基本方針は、『ゆっくりペース(息がきれないようにする!)で時間をかける、高所滞在日数を確保する、天候に不安がある場合は迷わず停滞!』としたため無事登頂・下山できたと考えている。 今回のメンバーは、平均年齢:48才で、山も含め何かと話題豊富な立派な『中高年』。しかし己の齢を知り身の丈にあったタクティックスで行けば、まだまだやれそう?・・・・・・少し頑固になりがちなのは仕方のないこと、勘弁してください・・・・ということで皆さん、今後ともよろしくネ!(Y.K) |
N.Harada | S.Okamura | Y.Takaki | Y.Kubo |
当初は、U.Atarashiも参加する予定でしたが、都合により参加できなくなりました。みんな社会人ですからよくある事です。残念に思ったM.Atarashiさんからこのイラストをいただきました。山頂でみてください!と。約束どおり、このイラストがU。Aさんに代わってマッキンリー山頂に立ちました・・・・・U.Aさん、Next
Chanceが必ずありますヨ。乞う、御期待! |
N.Hさんのメッセージ: ALASKAの素晴らしさを とても言葉には、できないのですが・・・いきなり、大自然からの洗礼を受けました。 「君達の都合で、自然は、動いてないよ!」とでも言うように。セスナが飛ばずに待機、4泊。途方もなく続く氷河。口を開けて待っているクレパス。声にならない程の美しい眺め。テントを潰してしまう程の降りしきる雪。なんとも不思議な雲。這ってなければならない程の強風。照りつける太陽に真っ黒け。マッキンリーを通じて出会った素晴らしい方々。悪天の為に、停滞、停滞。どうにもならない高度障害。・・・。自然の大きさと、人間のちっぽけさを感じました。 「一歩、一歩。」それしかなすすべは、無かったのですが、その一歩が、6,194mへの一歩でした。アタック日、自然が、迎え入れてくれ、快晴、無風で素晴らしい世界を覗かせてくれました。「登った!」というよりも「マッキンリーに、登らせて頂いた。」という思いでした。無事、山行を終えられたのもザイルを結んで下さった、3人の方々と、アラスカの大自然のおかげです。心から、感謝します。 次回は、ルンルンのアラスカ(アラスカ鉄道、デナリ公園、ホエルウォッチングなど)が楽しめたらなと思います!!ALASKA万歳!! |
Y.Tさんのメッセージ: 約1年半前にマッキンリーに行きたく、嵐の門をたたきました。久保会長から快い返事をいただき、その年に伯耆大山の雪山山行に3回、春の北アルプス、赤谷尾根・剣岳・早月尾根、夏の北アルプス 穂高・槍縦走・赤木沢・裏銀座 など年間70日の山行を行い、今年は厳冬期の南アルプス(塩見岳・間ノ岳・北岳縦走)に始まり5回の伯耆大山、2回の富士山高度順応登山などを経て数々のことを学びました。 マッキンリー遠征も快くOKしていただき、新入会員の私が足を引っ張らないか心配でしたが案の定一度ご迷惑をおかけしました。でもなんとかサミットに立て久保会長・岡村さん・原田さんのおかげで楽しい思い出に残る遠征となり感謝しております。毎日、日記を書かないとその日が何日かわからなくなったのは初めての経験でした。帰国してみるとあっという間の一ヶ月ですが日記を読むといろいろあったなと感じます。一部は私のHP(YAPPYLAND)にありますのでご覧ください。 |
S.Oさんのメッセージ: マッキンリー登山の入り口である、タルキートナからセスナで入山。過去に最高5泊の足止めがあったと聞いていましたが、いきなり4泊の足止めで、まず各メンバー精神的にダメージを食らってしまいました。焼酎(900mL)を8本持参した内、結局入山時までに7本飲み干しランディングポイントにベーコン等と一緒に焼酎1本のみデポすることになりました。 ランディングポイント、C1、C2、C3、メディカルキャンプ、ハイキャンプ、山頂とゆっくりゆっくりと高度を上げていきましたが、とにかく高度順応をクリアする為に兼ねてから言われていた『ゆっくり登ること』が必要だということをメディカルキャンプ:4330m以上での高度障害で思い知らされました。 特にハイキャンプで風邪をひいた高熱時と同じような頭痛と倦怠感に悩まされました。テントで停滞中徐々に回復するものの結局、アタックの前日高度障害用の薬を半分服用したところ即効で効果が現れ楽になりました。 凍傷に気を付けるようレンジャーステーション等でも再三聞かされました。我々のアタック時は比較的天候に恵まれ温度変化は比較的小さかったようですが、ハイキャンプより高度をあげデナリパスにさしかかると風の通り道で体感温度が急激に変化します。その時に防寒の対応が遅れると、凍傷の危険があると感じました。 ハイキャンプの5200m付近から上部の登攀で、予測されたことでしたが酸素濃度の少なさを体で感じることになりました。金魚鉢の金魚が酸欠でアップップしている気持ちがよくわかるような気がしました。 ゆっくり歩けること、高度順応がうまくいくこと、そして天候に恵まれること、これらが限られた日程の中でうまくクリアできるかどうかで、山頂を踏めるかが決まってくるようです。 約20数年、5月連休、8月お盆、正月とおおむね年3回、北アルプス、南アルプスを中心に毎年山行を続け、今回サラリーマンであるというなかなか自由のきかない状況において、多くの人達の理解と協力を得て、マッキンリーの山頂を踏むことが出来幸せである、と実感しております。 |
マッキンリーの頂稜を行く:南峰ピーク(6194m)より |