中御所本谷遡行
【08/09】

 今日は、中御所谷遡行の日である。ロープウェイの発車時刻を調べてこなかったが、臨時便が出ても始発は7時くらいだろうと判断、6時に幕営地出発。今日は、水と遊ぶ沢登にふさわしい素晴らしい天候に恵まれた。7時に千畳敷到着。発車間際の下りロープウェイの乗る。標高差:約1000mを、わずか7−8分で下降するところを、我々は、6時間以上の時間をかけて登り返さねばならない!

 しらび平着。今日は土曜日なので登山者がわんさか押しかけている。夕方、下山時は相当なラッシュになりそうな人出だ・・・・我々は逆ルートだからいいけど・・・同情します。

木曽駒ヶ岳幕営地からお花の咲き乱れる千畳敷に下降、さらにロープウェイで、標高:1600mのしらび平まで下山する


 日暮ノ滝までは遊歩道を行く。10分ほどで河原に出ると正面に2段の滝が現れる。1段目が日暮ノ滝である。ここまでは滝見物のハイカーも来れる。
 登攀準備して、滝の右カンテ状の岩に取り付くが、いきなりの岩登りで少々体が硬い。しかも少し滑っていていやらしい。残置ピン、2ヶ所にビレイをとり越える。続く8mは右手から巻き気味に越える。谷は少し左にカーブ、奥に15mの大きなチョックストンのある滝、とても登れそうも無い。ここはトポどおり左岸の水流のある小ルンゼを登り、左手ブッシュに突入、踏み跡らしきところを詰めていけば、懸垂ポイントに出る。20m足らずの懸垂下降で谷に戻る。

日暮ノ滝。右手カンテ状の岩を登る CS15mの滝。左岸から高巻きで越える
日暮ノ滝の登攀 CS15mは、左岸のルンゼから高巻き、懸垂下降で谷に戻る


 ここから谷幅の狭いゴルジュ帯に入る。右をへつって進めば手ごろな斜滝、右、左と好みにしたがって直登。更に進めば河原に出る。見上げると上空にはロープウェイ、ゴンドラがピストンで動いている。この辺りから直登可能なスラブ滝が続く。トポでは一部の滝を巻いているパーティが多いようだったので、あまり考えずに1ヶ所だけ小さく巻いたが、よく見ると登れそうなので出来るだけ直登するようにして遡行する。
 
 夏の沢はシャワークライミングがベスト!と思うがそうでなくとも、水流横の乾いた岩を登るのは気分がいい。やがて大きなチョックストンを持つ滝10mにたどり着く。ここは右のスラブを登り、草付き混じりの壁をトラバースして落ち口に出る。滑りそうで注意が必要だ。


本谷は両岸狭まるゴルジュ帯。へつりや直登で越えていく
ゴルジュを抜けると河原になる。上空を見上げるとロープウェイ!この辺りからスラブ状の滝が出てくる
無理せずザイルを出しながら出来るだけ水流につかず離れず遡行・・・・気分、爽快!
やがて大きなチョックストンを持つ滝。ここは右手スラブ壁〜草付を巻く

 
 CS10m滝を越えると、いくつかの小滝、斜滝が現れるが、すべて右か左から直登する。途中、雪塊もあり、爽やかな遡行になる。大きな岩塊を越えると、上部がハング気味の10m滝にでる。ここは巻かねばならない。右岸のルンゼを詰めるが巻きに入るポイントが分かりづらい。結局、上部まで登り巻きに入る。

 右手、本谷から離れないよう巻いていけば、展望が開け、大滝、支流の滝がうまく配置されたスケールの大きな谷上部が視界に飛び込んでくる!・・・・・巻くのは、いやだし面白くないし危険だが、巻いたからこそこのシーンを見れる機会もあるわけだから・・・・・たまには巻いてもいいか、と思う。

 本谷に戻る適当な箇所を探していくと水流のある支流に出る。フリーでそのまま下ると難なく本谷に出ることが出来た。やはり水流の豊かな本谷がいい。やさしい斜滝を越せば、巻き道から見えたあの大滝は目前だ。大滝:20mと右支谷に懸かる40mは、つながる岩盤をえぐって落ちておりなかなかの迫力である。


両岸の切り立つゴルジュになるが、現れる滝はすべて直登していく
やがて両岸ハングした直瀑;10m、手はとても出ないので右岸のルンゼから高巻く
高巻きルートからスケールの大きな谷上部が俯瞰できる (上)支谷を下降して本谷に戻る
(下)斜滝を越えれば大滝は近い
高巻きルートから俯瞰した大滝:20m、右支谷は、40mくらいありそうでなかなかの迫力である

 この辺りは大きく開けているだけでなく、立体的でもあり開放感と爽快感を十分味わえるところである。藪をしばらく巻いてきただけにかいた汗や付いた汚れを落としさっぱりした気分でしばし休憩する。しかし、次のアクションはまた高巻きである。細い水流のある左岸の支流を越して本谷に戻らねばならない。

 少し戻れば左岸にルンゼがあるので、それを詰める。少し登ると左手に消えかかりそうな踏み跡がある。高巻きすぎると大変だから、それを追う。かなり際どい所を巻いていくと浮石を積み重ねたような岩場に出る。突破するしかないのでザイルを出す。3手ぐらいでブッシュを掴め強引に上がると支谷(40m滝上部)に出た。渡渉、少し登り、そして本谷に下降する。

 本谷にはいくつかの斜滝がかかる。右から越えていけば二俣である。右俣のほうが滝が多くて面白そうだし、人工的なロープウェイから離れていくことになる。一旦、左俣の容易な滝をシャワーを浴びて直登り、左右を分かつ尾根を越して右俣に出る。

右ルンゼから40m滝、20m滝と続けて高巻くが、結構厳しい
巻いて本谷に戻り、斜滝を越せば二俣である。右俣をとるが、
一旦、左俣の容易な滝を登り、尾根を越えて右俣に入る


 右俣にはトポどおり小滝が連続する。これらの小滝群はすべて直登していく。しかし、そろそろ疲れも出てきたのか、少し面倒な気分にもなってくるが、越えなければ帰れないので、怪我しないように一つ一つ越していく。

やがて、傾斜はゆるいものの谷幅一杯に広がる大滝(30m)が見えてくる。左側の白いスラブが眩しい!
これが、”中御所本谷のフィナーレを飾る鏡の滝”だろう。

”鏡の滝”は水流で光っている所は滑りがあるので、水流左を行く。最後は、真っ白なスラブ岩を快適に越す!・・・・・いや〜、今日の滝の中では、爽快感最高!

連続する小滝群を気分よく越えていくと、やがて谷幅一杯に広がる『鏡の滝』が近づいてくる
天空に延びる『鏡の滝』、水流のあるところは滑っているが、乾いた岩は快適だ!
最後の白いスラブは、青空に映えて眩しく光る

 
 鏡の滝をこえると稜線が見え隠れしてくる。水流は細くなり、概ねゴーロであるが、申し訳程度に小滝が現れる。かなり疲れてきているので愉しい、とは言い切れないが・・・・まあ、愉しい気分で遡行を続ける。

 行くほどに水流は細り、小滝もより小さくなり源流の様相を呈してくる。上部の二俣を右に取るあたりから、急に水流は無くなる。どうやら伏流になったようだ。ゴーロをひたすら行けばお花畑に導かれる。少し歩けば、長谷部新道の踏み跡に出る・・・・・ここで遡行は終了!

鏡の滝を越えると、水流は次第に細く、小滝はより小さくなり、次第に源流の様相
・・・・そのうち伏流となり水流が途絶える
やがて自然とお花畑に導かれる。わずかで長谷部新道の踏跡に出る・・・・ここで遡行は終了である

 数分、踏跡をたどれば千畳敷カールの遊歩道に出る。朝、記念撮影した広場で沢装備を解き、しばし休憩する。
しばらくすると雷鳴が大きくなってきた。ロープウェイのアナウンスが、登山者に雷に注意するよう呼びかけだした・・・・そのうち、しらび平駅付近が雷雲に包まれたのでロープウェイは一次停止するという。登山者は、小屋に避難するように!・・・・・ウロウロしていたら危険だ。

 腰を上げ帰途に着くが、ここから300m近く登らねばならない。かなり疲れた上に、しっかり濡れてしまった登攀具がやけに重たい。それでも、早めに戻ったほうがよさそうなので休まず登り続ける。

 なんとか稜線に出た所で、雲に覆われ大粒の雹混じりの強烈な降雨になった。ダッシュ!走って宝剣山荘に駆け込む。

 すぐに近くで砲声のような雷鳴!いややばかったですねえ。千畳敷でビールなんぞ買っていたら雷雲につかまっていたかもしれない!(テンバより千畳敷のほうが安いだろう、と思いかえりに買う予定だった)

 1時間ほど山荘で待機する。ロープウェイがいつ動くか定かでないので、ツアー客キャンセルの電話がひっきりなしに入る・・・・小屋も大変だ。しかし小屋どまりの登山者はこれ幸いとばかりに”生ビール”を何杯も飲んでいるではないか!ガマン、我慢!ここで飲んだらきりが無い。

 雷鳴が遠のき、雨もほぼ止んだので急いでテント場に帰る・・・・・留守番の眞由美さん、心細い顔で、オカエリナサイ!

 朝の好天が、うそのような結末になった1日でした。しかし、遡行中に雷雲につかまったら!・・・・・ぞっとしますね。


 Comments by K.Mizoo  

 
 明るく開放的で岩が登れる沢だと思う。沢登に”高巻き”は避けられないが、4回もすると閉口してしまった。最初の『日暮の滝』が大きく構え、迫力(高度感)もあって登っても緊張感があって面白く、その後の滝も期待したのだが、CS15m滝から高巻きが始まった。
 そうすると沢筋から大きくはなれ、戻るのに一苦労だ。『水際に沿って出来るだけ高度を稼いでいければ』と思っても大きな滝は近寄りようがない。乾いた岩肌に豪快に滝が流れ落ちるのを見ながら、ブッシュを漕いで高巻いていった。

 スラブ状の滝(滑滝:10m前後)が多く、大抵は軽快に登れて面白かった。流倒木もあまり気にならなかった。夏の陽射しを浴びて流れ落ちる水も冷たくはなく、心地よかった。上を見上げると青い空と稜線が見える。高巻きの煩わしさはあったが十分遡行を愉しむことができた。
 急な流れも最後は伏流になり、突然足元から消えた。あとはお花畑のなかを歩いて『千畳敷』に出て終了した。(その後、空模様がおかしくなりはじめ、稜線に出るや否や雷雨になってしまった。山小屋で難を逃れたが、突然の悪天候に宿泊のキャンセルが相次いでいた。)

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