2008年の夏山は、中アの”名渓”といわれる、『中御所本谷』!少々古くなったが、日本登山体系によれば・・・・”中央アルプス屈指の名渓で、昔から多く岳人に親しまれている。次から次へ現れる滝は遡行者に息つく暇を与えない。骨の折れる谷である”・・・・・当然、『岳人』の日本百名谷にも選定されているので、ウェブサイトにも多くの遡行記録がある。 ・・・・”この谷は登攀的要素が極めて強く、巻きも難しい。初級者は入らないほうがいい。谷は期待したほど美渓ではなかった”・・・(あるいは)・・・・・”中御所谷は総じて素晴らしい沢だった。スケールの大きい滝の合間に、直登可能な小中規模の滝、巻きもほとんど藪らしい藪も無く、源頭に至っては藪漕ぎは皆無である”・・・・・ 感想さまざまだが、直登可能な滝が多く、従い登攀的な遡行となり、且つ2600mの千畳敷カールのお花畑に直接飛び出す!ことは間違いなさそうである。 多くのパーティは、しらび平から遡行、千畳敷に出てロープウェイで下山のようだが、我々は、もう少し滞在し夏山を愉しみたい!おまけ、というわけではないが宝剣岳東面中央稜の登攀をプラスすることにした。 行程について以下の条件を考慮しなければならない。 @中御所谷は、登攀的な谷である。したがって出来るだけ軽装での遡行にしたい。 A宝剣岳東面の岩場は、高山植物、等も保護のため千畳敷カールから直接取り付くことは出来ない。通常夏季は、宝剣岳ピークから懸垂下降40m×3ピッチで取り付きに出る、 B幕営指定地は、木曽駒ヶ岳山頂直下のみで、他所は幕営禁止である。 検討の結果、以下の行程とした。 ●1日目:木曽福島Bコースをとり、木曽駒ヶ岳山頂経由駒ヶ岳頂上山荘幕営地 ●2日目、3日目: どちらを優先するかは天候次第! ■中央稜登攀(幕営地〜宝剣岳〜取付〜中央稜〜宝剣岳〜幕営地) ■中御所谷遡行(幕営地〜千畳敷〜ロープウェイ〜しらび平〜中御所谷〜千畳敷〜幕営地) ●4日目:往路と同じく木曽福島Bコースを下山 尚、同行する岡村Mは、伊奈川ダム登山口から木曾殿越にで、空木岳を往復後主脈を北へ縦走、2日目幕営地で合流することになった。 岡村S、岡村M、溝尾、久保、以上4名 8月6日、21時北九州(JR小倉駅北口)出発。すでに学校は夏休みだが、車はさほど多く無い・・・・オイル価格高騰のせいか?順調に走行を続け、中央道中津川ICで高速を出て19号線を北へ向かう。途中、コンビニで食料を買い足す。木曽福島までは意外とコンビニは少ないので早めに寄るほうがいい。 須原の伊奈川橋手前で右折、伊奈川登山口へ向かう。前日まで雨だったのか林道は少し荒れ気味だが、走行に支障は無く、ぐいぐい高度を上げ、6時30分には、ゲートのある登山口(標高:1080m)に到着した。数台の駐車車両はあるが、登山者は見当たらない。ここで朝食をとる。 岡村Mは、ここから中ア主稜線を目指す。単独行になるが、木曾殿越までは、秋に踏破しておりまず問題なないだろう・・・・明日午後木曽駒での再会を約束して別れる。 19号線に戻り木曽福島へ向かう。標示に従いJR原野駅手前の交差点を右折、8時には、本年正月来たばかりの廃墟と化した木曽駒高原スキー場(標高:1350m)に到着した。懐かしのスキー場には人影は無い・・・ |
◆◆◆ 中御所本谷遡行 & 宝剣岳東面中央稜登攀ルート概念図 ◆◆◆ |
【08/07】木曽駒高原スキー場(08:15)〜7合目避難小屋(11:40)〜9合目玉ノ窪山荘(14:25)〜木曽駒ヶ岳(15:00/15:15)〜幕営地(15:30) 行動時間(休憩含む):7時間15分 標高差:約1600m |
7合目で、福島Aコースと合流する。麦草岳へもしっかりした踏み跡がある。ここから玉ノ窪山荘のある9合目までは、麦草岳〜木曽前岳の山腹を巻く様にして登っていくのだが、いくつか登下降あり、岩道ありで荷があると結構骨が折れる。おまけにブヨ?見たいな虫がワンサカまつわりつく!不快この上ないが我慢、ガマン! |
天候は好!だが暑い!林道をしばらくたどると尾根取り付き。幸の川でリフレッシュ! |
4合半の力水で一息入れ、樹林帯を登りをこなせば、福島Aコース合流する7合目である |
7合目から先が時間がかかる。トラバース気味に高度を上げるが、最後の玉の窪山荘への登りは結構シンドイ!・・・・ スキー場から6時間45分、15時に木曽駒ヶ岳に到着!お疲れさん! |
(左)眼下に今回のテント場が見える・・・1,2張りしかない! (右)宝剣岳西面の岩場。宝剣の左のスカイラインが中央稜? |
テント設営し、一息ついて飲み干すビール、その喉越し、言葉に尽くせません!・・・・旨い!、美味い! |
【08/08】 |
7時過ぎテント場出発。中岳を巻いて宝剣岳ピークに向かう |
宝剣岳の肩から見えるスカイラインが中央稜の上部のようだ | 宝剣岳ピークまで登る |
極楽平、檜尾岳、空木岳方面縦走路(左)、千畳敷カール(右):宝剣岳ピークより |
このピークからカール側にハイマツ混じりのゆるい傾斜のリッジが派生しているが、このリッジが中央稜の最終ピッチのようだ。フリーで少し下ると岸壁の上に出る。ここから40m×3回の懸垂下降で、取り付きの横断バンドまで下ることになる。ハイマツの根っ子に支点を取り下降開始。 ザイルワークに多少の不手際があり、下降に若干手間取ったが、1時間と少しで横断バンドに降り立った。わずか120mほど下っただけなのに少し蒸し暑く虫が多い。 |
ピークからハイマツのリッジを少し下り、そこから懸垂下降3Pで取り付きの横断バンドに出る |
残置ピンがあるのでルートを外すことはなさそうだ。早速、1Pにかかる。出だしが少し要バランスだが、細かいホールド頼りに一歩上がる。少し行けば傾斜の強い浅いルンゼ状で、ずり上がり右手を伸ばせばがっちり手がかかる。 更に登れば小ハング。曲がったハーケンが残置されている。1ポイントA0で越えるとテラスである。40数m一杯だから2P分かもしれない。セカンドはブッシュ混じりの大岩を登りそのままピナクル下のテラスまでザイルを延ばす。すでにルート図の3P目を登っているようだ。 【左:ピナクルのクラックを登る】 【右:ピナクルのコル。この上がオケラクラック】 しばらくで全員、ピナクル下のテラスへ集合。続いて、ピナクル中央にあるクラックをA0で登りピナクルのコルに出る。このコルがルート図の3P終了?のようだ。ここまでは、大きな岩塊の積み重ねのような岩であり、開放感はあるがすっきりしたフェースではないので・・・・・なんとも充実感に乏しい。 |
1P目、2P目の登攀。大岩の重なったような岩場で傾斜は割と急である |
4P目が、本ルートのハイライトで”オケラクラック”のあるピッチである。コルから一段上がり込むとフィストがきまるクラックが一枚岩に延びあがっている。壁の傾斜はさほど強くないので、割と簡単にザイルが延びる。いいサイズのクラックは数mで終わり上部は少しワイドになるが、ここも緊張感は無い。20mほどで岩の切れ目のコルに出る。5P 目は、手がかり十分なリッジで、ここも20m足らずで朝懸垂したハイマツに達した。 何とも物足りないが、5P、150mの中央稜は終了!実質登攀時間は、3名で1時間30分であった。 宝剣岳ピークで登攀具を整理、ピークの岩塔に登り記念撮影!のんびり下山にかかる。ぶらぶら散歩気分で帰幕したのが、12時。 午後は天気もいいので休養とする。テントの周りは、やたら虫が多い。ハエみたいなのも多く不快なので、近くの残雪まで行くと気温が少し低いためか、わずらわしい虫どももがいなくなる。ビールを購入、夕方までのんびりすごすことにする。今日は、縦走している岡村M到着の予定だ。 |
中央稜のハイライト!、オケラクラックの登攀 |
5P目のリッジ登攀。楽勝(左)、コンテでピークまで抜ける(中)、宝剣岳ピーク岩塔(右) |
今日の『中央稜5P』は、以前にも来て登ろうとして、取り付きが判らず時間切れであきらめた経緯がある。それで、今回は何とかルート全体を見極めて登っておきたかった。しかし結果的には特筆するようなものは無かった。山頂近くの『クラック(オケラクラック)』もすっきりした『クラック』だが、『特別に難しい』と思うようなものでなかった。次の日、登山道を降りながら見ると、山頂近くに薄く線を引いたようなクラックが見えた。 登攀はまず山頂から懸垂下降で取り付きまで降りてきてそれから登り返しだ。ロープの流れが悪かった。大まかに言えば、ごつごつした感じの(階段状)の岩場である。岩も割合しっかりしていて残置ピンも多く、『いつ誰がこんなに登りに来たんだろう?』と思った。 取り付きはすでに中腹以上の所にあり登る所は少なかった。少し被り気味の岩場にピンを探して登っていく。途中、Aoもあったが、ブッシュの目立つ岩場を登っていった。 ハイライトの『オケラクラック』もあっさり過ぎてすぐそこはハイマツ帯で、登攀終了だった。すでに山頂には人が集まり、かなり賑わっていた。山頂で記念写真を撮ってのんびりとテント場に引きあげた。 |
遅くとも16時くらいには、着くだろう、と思うがなかなか姿が見えない。そのうちに遠くで雷鳴!近づかねばいいなあ、と思うが次第に大きくなってくる。雷雲に包まれた稜線歩きは、いつ雷に打たれてもおかしくない・・・・・多分、檜尾岳避難小屋か千畳敷に非難したのではないか、と判断夕食をすませ昼の続きで一杯飲んでいたら、17時半過ぎに無事、到着した。やれやれこれで一安心! 聞くと、雷鳴を聞き、危険と思い足を速めたそうだ。宝剣岳への登路は、『キケン!通れません!』とロープで”通せんぼ”してあったので無理はすまいと思い、一旦千畳敷に下降、登り返したとのこと・・・・お疲れ様でした!まあ、一杯飲んでください。 |
【08/07】 今回はリハビリ登山ということで、一泊は木曽殿山荘泊まりとさせてもらう。 伊奈川ダムの登山口まで送ってもらい、ここから一人。ひたすら林道を歩き、うさぎ平から山道へ。いきなり急登、ずっと急登。吊り橋は2年前よりロープが かなりゆるんでいて、恐る恐る渡る。後はもうひたすらうっそうとした林の中を登るのみ、景色も変わらず、人にも会わず、唯一出会った下山者には、このコースを登りに使う人がいるなんてと言われてしまう。 あまりの単調さに途中睡魔と闘いながらやっと木曽殿山荘へ。昨日稜線で落雷にあい、一人が亡くなったと聞いてビックリ。なかなか天候が安定しない様。 |
【08/08】 天候良し、雷マークなし、ということで空木岳を往復することにする。 空木岳山頂からは、八ヶ岳、南アルプス、富士山、御岳山、乗鞍岳から槍も見える。山の観光客になった気分で360°の大パノラマをずっと楽しんでいたいものの、先が長いので、早々に小屋まで戻り、駒ヶ岳キャンプ地へと向かう。 東川岳から熊沢岳までは順調、ただし地図のコースタイムは、小屋泊まりの軽装者対象のせいでしょうか、このタイムどおりに進むのは、かなり厳しい。標高差はあまり無いが、アップタダウンを繰り返し、タイムどおりに進まないため、途中から焦りが出てくる。色気を出して空木岳を往復したことを後悔してしまう。 檜尾岳を越えた辺りから、疲労が増し、進み方がどんどん遅くなる。 すぐに休憩したくなる自分自身にはっぱをかけながら歩いていると、遠くで、雷。檜尾岳避難小屋と千畳敷の中間地点。思わず、足の回転数があがり、休憩も忘れて千畳敷まで猛ダッシュ。自分でもいったいどこにこんな体力を隠していたのかと不思議に思うほど。 結局、11時間行程、やっとの思いで到着、テントになだれ込みました。 今回は、時間的な計画ミスによる脅威、自然の驚異を身にしみて痛感した貴重な山行になりました。 |
中御所本谷遡行
Activity of M. Okamura on 9th. August
今日は休息日、沢登の3人を見送り、ゆっくりペースで池めぐり。湖畔に逆さにうつる宝剣と、お花畑を観賞しながらゆったりとしたいものの、高度が低いせいか、私が臭いせいか、とにかく虫が群がってくる。 早々にテントに戻り一息ついていると、いきなり雨と雷の集中攻撃。 沢組の3人を心配しながら、テントの中で一人1時間ちかく震えていました。雷が遠のきホットしていたら3人がご帰還。全員無事で何より。 |
【08/10】 冷たい湧水で喉を潤し、7合目に向かう。7合目着が、8時10分、2時間で降りてきた。この調子だとスキー場まであと3時間はかからないだろう。 |
週末とあって宿泊客の多かった駒ヶ岳頂上山荘。我々は粛々と下山準備・・・・・また来る日まで!さようなら! |
下山開始!駒ヶ岳西面をトラバースして直接玉ノ窪山荘に出る |
玉ノ窪山荘から3日前喘いで登った道を軽やかに下る |
足取り軽く、予定より早く出発地の木曽駒高原に到着した・・・・・ 皆さん、お疲れ様でした!4日間の山旅はこれにて終了です。 |
荷物の整理をすませ、正月に行った『フォレスパ木曽 阿寺温泉恋路の湯』に向かう。 エヤコン効かせて、気分よく高原から下界に下っていくにつれて、次第にいやなことやきつかった事などは、忘却の彼方に飛んでいく・・・・ このルート、来る度に、もう来ないだろう!と思って帰るが、数えたらつごう5回も来ている・・・・・人は忘れることが出来るからいいんでしょうネ・・・・いつも、いつまでも山は新鮮!です。 |
Reported by K.Mizoo, M. Okamura & Y. Kubo
Photo presented by K.Mizoo, S. Okamura & M. Okamura