伯耆大山北壁:弥山尾根(西)〜弥山 & 中ノ沢〜弥山

 2008.03.09 & 03.16


 2月の大山は雪の日が続いた。野田ヶ山〜ユートピア縦走のときも烏ヶ山のときもまさしく冬山であったが、3月の声を聞くとさすがの大山も春の訪れには逆らい難く、時折雪はやみ、晴れマークの日が続くようになった。そのような春を感じる3月初旬〜中旬にかけて北壁に出掛けるには絶好の日和に恵まれる。

 3月9日は、元谷から弥山尾根(西稜)から弥山へ、1週間後の3月16日は、中ノ沢に取り付き滝沢リッジ上部に抜けた。いづれも天候に恵まれ久びりに雪山大山を愉しむことが出来た。9日は、北壁のどの尾根筋も真っ白だったが、1週間の好天続きで、16日は、黒い岩肌とブッシュが目立つ大山に変わっていた・・・・・冬型気圧配置のときは限りなく降るが、好天が続くと融雪も驚くほど早い!・・・・・そういう点では、コンディションに恵まれた北壁を登れるチャンスはそう多くない、と思う。

 ともあれ、今年は縦走、ピストン含めて6回ここ大山に通い、4回はおおむね満足の山行、1回は元谷偵察どまり、残り1回は三ノ沢辺りの散策・・・・・まずまずの成果を上げることができた。勿論、反省点も多々あり、これらを胸にしまい、次年度につないでいきたい。




弥山西尾根〜弥山

 
山行期日 2008.03.09

参加者 岡村M、岡村S、赤澤、久保、以上4名

コースタイム
 大山寺駐車場(06:25)〜大神山神社(06:50)〜元谷堰堤(07:15/07:35)〜弥山西尾根取付(08:45)〜稜線(11:00)〜弥山(11:05/11:15)〜元谷(12:00)〜駐車場(12:55)

登攀概要:
 予報では、朝方と昼頃は風が強く、午後から下り坂に向かう、とのこと。滝沢リッジにするか弥山尾根にするかは現地判断とする。

 前日は、大山寺駐車場より少し下った所にある無料駐車場で幕営する。この所好天が続いていたのでノーマルタイヤで入山できた。路上には雪は無いが両肩はまだまだ相当量の残雪がある。

 早めに就寝、6時前に有料駐車場に移動する。支度をして出発。天候は良好、正面にはこれから向かう大山の主稜〜北壁のパノラマが展開する。

 大神山神社に出る。社殿を押しつぶさんばかりの積雪!・・・・・野田ヶ山からの下山時よりはるかに多い。

 林道に出る。しばらく進み左カーブを曲がれば、いきなり白い屏風のような北壁が全容を見せる。地形図上ではさほど広いエリアじゃないのに、視覚に感じるスケールは実に大きい


 元谷堰堤を横切り、小屋方面へのトレースを辿る。昨日、今日と好天なのでトレースはしっかりついている。先行パーティが見え隠れしている弥山沢左岸のトレースを辿る。
 
 しばらく行くとトレースは右手ブッシュ帯へ延びている。左岸をそのままいけるが、今日は楽させてもらうことにして我々もブッシュ帯への急登を辿る。しばらくで尾根の傾斜が緩むと、輝く城砦のような別山が姿を現す。

 すでに中央稜に取り付いているパーティが見える。しばらくでトレースは二分、右は別山、左は弥山沢をトラバースして弥山尾根の取り付きへ向かっている。

 弥山尾根は、久保以外は初めてである。(前回:2002年1月 参加者:新、原田、久保の3名) 午後から天気は下り坂との予報もあるので今回は弥山尾根とし、滝沢リッジは次回の課題にとっておくことにする。

 すでに見ると取り付き付近には先行パーティがいるので、別山との分岐で準備する。

 弥山沢をほぼ水平にトラバースし、尾根の真下に出る。直角に折れて取り付まであがる。結果的に、我々を含め3パーティが前後して登攀することになった。ザイルオーダーは、岡村S/岡村M、赤澤/久保、の2パーティとする。ザイルは、50m×1、60m×1、計2本使用。

参加者は、常連さんの4名。大山寺からは大山の主稜がくっきり望まれる
頭だけ出ている灯篭。大神山神社を押しつぶさんばかりの積雪
林道のカーブを曲がると、いきなり大山北壁が全容を見せる
(上、下)元谷に入ると小屋の左、弥山沢の右岸沿いに進む  
(右)輝く別山、左の弥山沢を挟んで弥山に突上げる弥山尾根(左:東稜、右:西稜)
急登を越えると城砦のような別山が現れる 弥山沢をトラバースして西稜の取付に向かう

 
 1P目:取り付きから尾根左を巻くように雪壁を登り、尾根に出る。 
 2P目:尾根の右を登る。急だがすでに数パーティ登っているので階段となっている。1ヶ所、2mほどの急で足場が不安定な箇所がある。ビレーはブッシュで取る。 
 3P目:2P目と同じく尾根の右からいき尾根上に出る。ビレーは、スタンディングアックスビレー。 
 
 4P目:リッジをまっすぐ登る。急な階段。ビレーはブッシュで取れるが、先行パーティで混んでいるので、後続も移動してもらいコンテで行くことにする。 
 5P目:急な岩場のようだが、雪が多くスタンスはしっかりしている。越えると傾斜が次第に落ちる綺麗な雪稜、少し進んで緩いところでビレー。このピッチが、リッジ上をいくので高度感も十分で快適!西稜のハイライトかな?
 6P目:急な雪壁だが、ステップはしっかりしているので問題なく尾根の肩に出る。

 7P目:尾根の右を行くが、傾斜はさほど無くキックステップがよく効く。先行パーティとザイルがからむので、セカンドも移動、コンテでいく。
 8P目:雪壁。登りきると傾斜が落ちた幅の広い、緩やかな雪稜に出る。しっかりしたブッシュがビレーポイント。ここまでくると右隣の別山が目線の高さになっている。
 9P目以降、稜線までは、コンテで行くが、天候がよくて今日みたいにトレースあればノーザイルでもOK。

 取り付いておよそ2時間半足らずで稜線に出る。比較的短時間で登れたのは、先行パーティのトレースと天候のおかげである。自らラッセルしていくとなれば、尾根だけでも倍はかかるだろう、と思う。


右手に別山を仰ぎ見て登攀開始。
写真右上:1P目は緩い雪壁、右中:2P目も雪壁だが、途中1ヶ所足場が悪い、
右下:2P目のビレーポイント、3P目でリッジに出る
4P目の急雪壁、先行パーティは5P目 5P目の急なリッジを越えると傾斜が緩む。最も雪稜らしいピッチである
西稜のハイライト!(と思う)、爽快な5P目の登攀 5P目のビレーポイント
先行パーティは、6P目の雪壁に取り付いている
7〜8P目。写真左:青、赤のザイルが嵐パーティ 
写真右下:8P目のビレーポイントだが、足場がしっかりしているのでコンテで登る
目線の高さになった別山。頂稜には雪煙が舞う・・・・かなり風が強そうだ
9P目〜頂稜までは傾斜が落ちるのでコンテで行く。左奥が弥山
広くなった尾根をひたすら登り続けると、多くの登山者でにぎわう弥山山頂の近くに出る
遠くに日本海を望む西稜最後のピッチを行く 雪に埋もれた頂上小屋


 終了点は、弥山三角点の近くである。今日は天候が良いので夏道もたいそう賑わっている。登攀具を整理していたら、スキーを履いた方に声をかけられた。聞いたところ、野人さん!で、スキーで大山を中心に滑降の可能性のある殆どの沢筋をアタックされている方である。先日、三瓶山南ルンゼの滑降にいかれたとのことだ・・・・情報源は、嵐のHPとのこと、嬉しいことだが公開している以上責任もある・・・・。

 腹ごしらえして下山にかかる。今日は天候が良いので夏道は盛況だ。7合目あたりから元谷へ下る。勿論、尻セードだが、今日は雪にしまりが無くすべりが悪い。いくらかは滑ったが大部分はテクテク歩いて元谷へ下った。

 堰堤あたりから振り返ると、登った弥山尾根のルートがよくわかる。相当な数のパーティが取り付いたためトレースが明瞭である。トレースのおかげで、相当楽をしたが、やはりなんとも物足りない感じはぬぐえない・・・・やはり、自ら刻むのがいちばんだ。来週、天候とメンバーが集まればまたくることにしよう!

甲ヶ山、三鈷峰、別山(手前岩峰):夏道から 強風の頂稜を行く多くの登山者


Reported by Y.Kubo
Photo presented by S.Okamura & K.Akazawa





To be continued on Next Report;

中ノ沢〜滝沢リッジ〜弥山