御嶽山:濁河温泉〜五ノ池〜摩利支天山

 2010.05.29-30 


■当初、富士山トレーニングの予定であったが、富士山を含む関東地方は雨時々曇りの予報。雨中の富士登山はどうもいただけないので転進することにする。参加者協議の結果、残雪のある最も近い山:白山に行くことになった。

 19時、戸畑発。白山は剱岳よりはかなり近く、時間的にも余裕が出る。山陽〜名神を抜け北陸道に入り福井の近くで2時間ほど仮眠・・・・福井北ICを出て九頭竜川を遡り勝山から峠越えして白峰に入ることにする。途中、遠くに残雪の白山を見ると俄然やる気が出てきた・・・5月連休ほどではないがまだまだ愉しめそうだ。


 157号線に入り谷峠を越え白峰に下る。ここで金沢からの道と合流、右折する。数分走るとゲート?説明によると時間制ではなく、しばらくの期間がけ崩れなどのため上流通行止め!とのことだ・・・あれれ、どうしましょう。
 待っても開く可能性はなさそうなので、白山の東側登山口、大倉尾根にまわろう!ということになりUターン、近道である”白山スーパー林道”へ向かう・・・が、スーパー林道オープンは、6月からで、今日はスーパー林道Walkingイベントの日であった。

 またまたUターン、今回は白山に縁がない!と大倉尾根はあきらめ、最後の切り札!ではないが、御嶽山へ行くことにする。御嶽山東面へ行くには時間がないので西面の濁河温泉口なら、午前中に行けそうだ。

 157号線を下り金沢にで、北陸道〜東海北陸道〜中部縦貫道を乗り継いで高山へ・・・・・361号線、秋神温泉〜岳見峠〜441号線・・・・11時、標高1800mの濁河温泉に着いた・・・・やれやれ、これで何とか残雪に会えそうである。




05.29 濁河温泉登山口(11:30)〜湯ノ花峠(12:40)〜お助け水:8合目(14:00/14:15)〜2550mビバーク地(14:50)
05.30 2550m(04:45)〜五ノ池小屋(05:40/05:50)〜摩利支天山(06:50/07:00)〜2550m撤収(08:00/08:30)〜登山口(10:20)


 温泉入口あたりに廃屋が2,3あったので寂れた温泉かと思いきや、人通りは少ないが結構瀟洒なプチホテル風の宿も多く、しかも明るく開けているのでちょっぴりリゾート地風で、さわやかな風の吹き通る気持ちのいい温泉街である。登っていくと登山口がありすぐ前に市営の駐車場がある。この道はしばらく行くと行き止まりのようだ。

 早速、支度をする。スコップも、勿論、アルコールもしっかりパッキングして、11:30出発。頂稜はガスの中だが、沢筋には残雪が見える。今日は特に目標を決めず行ける所まで行く予定なので、のんびり山行です。
 資料によれば、この登山道は、”飛騨小坂口登山道”と呼ばれ飛騨側で唯一、御嶽信仰の道として開かれた道とのこと。歴史が古く、従い登山道も良く整備されている。登山口に入るとすぐ草木谷をわたる。正面の飛騨御嶽神社里宮にお参り、草木谷左岸をいく。轟々と落ちる仙人滝を見て吊り橋(仙人橋)をわたり右岸へ出る。

登山口駐車場で旅支度 登山口、すぐに草木谷を渡る 仙人橋を渡り右岸に出る


 仙人橋を渡り右折するとオオシラビソの樹林帯の登りに入る。適度なジグザグの道は急傾斜も少なく歩きやすい。しばらく行くと右手が開けて展望のいい湯ノ花峠に出る。ここから飛騨頂上から摩利支天山に続く頂稜が見えるはずだが、あいにくガスの中である。

 登山道はこの草木谷の右岸にあたる尾根を伝うことになる。


【写真上】オオシラビソの樹林帯で休憩
【写真下】湯ノ花峠
湯ノ花峠から草木谷と御嶽の頂稜の望む


 朽ちた木の階段や真新しい階段、横木を敷き詰めた滑りやすい登山道を伝えば、数人の若者に出会う。ちょうど避難小屋の前である。頂上まで行ったの?と聞くと、すぐ上部から雪が出てきたので引き返して来たとのことだ。そろそろ雪道になりそうだ・・・・・標高2300m過ぎたあたりから残雪が出てきた。トレースがあるのでそれを追うと、8合目(お助け水)のベンチに着く。小休止。ここには、水はないのに”お助け水”とは?

 少し休んでいると一人の下山者あり。どこまで行くのかと聞かれたので、できれば五ノ池小屋あたりまで!と答えると・・・・・御嶽山は全山幕営禁止です。五ノ池小屋は6月オープンの準備中で泊れないですよ。今日は2人入っています・・・・そうですか。引き返すわけにはいかないので雪のある所まで行ってビバークにしましょう。
表面が融けた堅雪は歩きにくいのでここからアイゼンア装着、もう少し登ることにする。

【写真:左】のぞき岩避難小屋
 荒れ放題で、文字通り緊急用!

【写真」:中】
小屋を過ぎるあたりから残雪を見る


8合目(お助け水)
 ここは、標高2450m森林限界です。この付近からハイマツ帯にはいり、高山植物の分布も多くなり、雷鳥も生息しています。高山植物は、風雪に耐え何十年もかかって育ったものです。花を摘みとったり踏み荒らすと、厳しい自然にさらされ絶えてしまいます。貴重な高山植物を保護し、美しい景観をいつまでも大切にしましょう・・・
8合目(お助け水)で休憩・・・泊るには早いのでもう少し上まで登ることにする


 2500mを越えると、もう残雪の世界である。そろそろ泊り場を探さねば・・・尾根筋なので適当な平坦地が少ない。ハイマツ帯に入る手前に少し平たいところがあったのでそこを整地し泊り場とする。15時前でまだ早いがこれ以上登っても適地はなさそうだ。

 雲の動きが早く、ガスのかかっていた頂稜が一瞬に姿を見せる・・・・まるで夏空のようなブルースカイ、白い残雪とハイマツ帯の濃い緑のコントラストが眩しい。摩利支天山方面も時折くっきりした姿を見せる・・・気持ちい青空を眺めて飲むビールもこれまた格別の味がします。

 単独の下山者および3人グループの下山者があり、この地での幕営に付き話題になったが、一応雪山での幕営ということで決着?・・・・積雪期の登山禁止なんて聞いたことないしね。五ノ池小屋が6月1日オープンで、人の出入りが多くなる微妙な時期だから判断が難しいですね・・・

標高2500mを越えると残雪の山らしくなってきた。ハイマツ帯の直下にテント設営
ガスが切れると夏山を思わせる青空が広がる・・・緑と白と青のコントラストが眩しい!
森林限界のハイマツ帯直下を今日の泊り場とする・・・・・白い残雪と澄んだ青空を存分に愉しむ


 午前4時起床、簡単に朝食を済ましテント撤収する。必要なものだけをパッキングし残りはまとめてデポする。今日は快晴!すでに頂稜はモルゲンロートに染まっている・・・・・・残雪期の朝は朝は格別だ。勿論、気温は零下だがピリッと締まって心地よい。45分出発。

 少し登ると登路は右斜上していく。ハイマツ帯の登山道を辿る。残雪を踏むのは小さな雪渓2ヶ所、少し大きな雪渓1ヶ所のみである。右手はるか下方に登山口のある濁河温泉郷が小さく見える。そのさらに彼方には水平にたなびく雲上に白山が雪の頂を見せている・・・・通行止めでなければ、今頃はあの頂に立っていただろうに。しかし御嶽山も宗教色など全く感じさせない、すっきりした残雪の山岳である。やはり3000m近い標高は捨てがたい魅力を秘めている。

ハイマツ帯を辿る。3ヶ所ほど雪渓を越えると頂稜は近い

 ハイマツ帯を回り込むようにして行けば、五ノ池小屋の前に出る。飛騨頂上は小屋の裏手の一段高い所にある。正面にある雪原が五ノ池である。小屋のトイレを貸してもらい用を足し碑の立つ稜線に出ると東面の眺望が一挙に開ける。さすが3000m近い稜線である。雲海の彼方に中ア、南ア、そして行くはずだった富士山まで一望のもとだ・・・・もし行っていたら今日の富士山、日帰りが可能!まあ、結果論ですがきょうは御嶽山、楽しみましょう。

ここから剣ヶ峰往復、夏道で約2−3時間、今日は時間がないので3000mには少し足りないが摩利支天山(標高:2959.2m)を往復することにする。

もう少しで稜線に出る 摩利支天山が大きい
草木谷方面を望む。濁河温泉が小さく見える 五ノ池は残雪に覆われている

氷雪に覆われた三ノ池と小さな避難小屋。遠くに中ア、南アの山並みを望む
左最奥のピークが剣ヶ峰。右手が摩利支天山 夏にお世話になった避難小屋
雲上の五ノ池小屋 飛騨頂上(奥のピーク)と大龍霊神碑


 右手、ガレと岩の尾根に入る。中腹から夏道沿いに行けばカリカリの雪渓、キックステップは効きそうもないのでアイゼンをはく。回り込むように登れば賽ノ河原方面との分岐に出る。左に下れば賽ノ河原、直進すれば摩利支天山である。
 雪田を通過、岩尾根の左をまいて行けば残雪の急斜面になるので尾根筋に出る。左右の景色を愉しみながら踏み跡をしばらく辿れば三角点のある摩利支天山ピークに出た。


賽ノ河原への踏み跡を左に見て摩利支天山へ向かう
摩利支天山ピーク到着 継母岳(2867m)を望む。左の尾根を辿れば剣ヶ峰

賽ノ河原〜二ノ池〜雪の尾根を登れば剣ヶ峰(最奥のピーク)に至る
中ア、南アの山並、そして最奥に富士山を望む。手前の雪原が賽ノ河原


 東西1km、南北4kmの広大な御嶽山頂稜の中間あたりに位置している摩利支天山からの眺望は素晴らしいの一言に尽きる・・・・残雪の白と露出した岩稜の茶褐色が程よくバランスして、全て雪で覆われた白一色よりはるかに量感のある山岳風景を創り出している。それをさらに鮮やかにしているのは快晴の青空!

時間あればのんびりしてコーヒーでも一杯!いきたい所だが、ドライバーが明日早朝より出張なので深夜までには帰北したい!・・・・・そんな訳で10分ほどで山頂を後にする。

富士山いはいけなかったが、皆さん、満足の笑顔 下山は同じルートをたどる

 往路と同じルートを辿り五ノ池小屋前に出る。小屋は開設準備中である。ビバーク地でデポ荷を回収、そのまま下山。

 いつも思うが下山するときはえらく長く感じる。適当に休憩しながら下ればおよそ2時間弱で登山口に着いた。


残雪のピークから、3時間少々で下山する
 
 降りたところが温泉街、どの宿に入るか迷ったが、少し瀟洒な造りの、”プチホテル 原生林の秘湯 濁河温泉ロッジ”の露天風呂で汗を流しました。お湯の出が悪かったですが、100%かけ流しの露天風呂は、癒されるお湯でリフレッシュしました。
 
 今日の天候だったら富士山に出かけていても登れたと思うが・・・・ちょっとした選択で御嶽山の未知のルートを愉しめたのだから許してもらいましょう。 この小坂口ルートは、木曽福島側ほど登山者は多くなさそうだし、アプローチの濁河温泉までのドライブでさわやかな樹林帯を愉しめます。5月末の芽吹いたばかりの若々しい新緑も素敵でしたが、色づく秋もよさそうです。
 
 帰りは同じルートで飛騨高山に出て中部縦貫道〜東海北陸道〜名神を渋滞にもあわず」順調に走り抜け、予定通り12時までに全員帰宅!参加者の皆さん、お疲れさまでした。



参加者 三栗、栗原、岡村真由美、久保、以上4名


Report & Photo presented by Y. Kubo