今年の梅雨は例年より早く明けた・・・沢登りの季節到来! 6月は、西中国山地:浦石峡に出かけた。ゴルジュ帯中心の遡行に加え天候は曇天で、あまり明るくない沢登りとなった・・・勿論、泳ぎと滝登りで愉しくなかったわけはないが、やはり天空の開けた明るい沢がいい! 昨年7月、汗を拭き拭き夷守岳〜大幡山〜韓国岳・新燃岳〜高千穂河原と縦走した。大幡の稜線で左手矢岳を中心とする深々とした樹海から伝わる爽やかな沢音を耳にした・・・大幡川である。あの”大幡川”はこの辺りに突き上げるのか!・・・樹海をぬって遡行し、開けた稜線にたどり着く・・・いいねえ!そのうちに来ましょうネ!と話はしたが、意外と早くチャンスがめぐってきた。 地形図では大幡川だが、現地の標識は、『大幡沢』と記されているので、大幡沢とする。 『九州の沢と源流』では、高千穂川出合いからのガイドになっているが、最近の記録では、林道が横切る地点から上部のみが遡行されており、日帰りの記録が多い。 上部の明るい開けた沢が人気になっているんだろうと思う。そういう意味では、大幡川の美味しい所だけをツマミ食いする感じだから、大幡川ではなく”大幡沢”遡行のほうがいいような気がする。 【参考HP】 ●水流渓人のページ:大幡川 取付の確認に少し不安があったので、明るいうちに現地の確認が出来るよう前日午後の出発とした。 宮崎自動車道高原ICから高速を出て御池方面に向かう。旨いことに左折する交差点の右角にコンビニがある。ここで食料を買い足す。 御池方面にしばらく走れば皇子原への標識。右折する。サンヨーフラワー温泉のある皇子原公園を通過、坂道を登っていけば、『高千穂川』取付(2004.04遡行)の橋を渡る。 この林道?は、県道406で、舗装されており走りやすい。しばらく走ると右手に林道が分岐する。これに入るといくつかのコンクリート堰堤が設置された矢岳川を渡り左岸にでる。左手が広場になっており幕営するのによさそうだ。 道なりに走るとすぐ未舗装になる。昨年、現地で入手した地図には克明に林道が記載されており、それによると未舗装の林道を進めば、大幡川をわたった所で林道は崩壊で通行不可になるが、その終点の橋が、大幡沢取り付きである。 この林道で間違いないと確信し、先ほどの広場に戻る。今日はここで幕営だ。久しぶりの前夜発宴会付きの山行である。明朝まで残らない程度のささやかな宴を愉しんだ。 |
今日はこの広場で幕営する | 今回の参加者は、5名です | 大幡沢取付の広場 |
江島、栗原、原田、赤澤、久保、以上5名 林道終点広場出発(06:50)〜二段の滝(07:30)〜逆くの字の滝(08:20)〜二俣H:930(09:05)〜放水の滝(09:35)〜二俣H:1150(10:40)〜終了(11:10)〜大幡山(11:50)〜登山口(13:10)〜林道終点広場(13:30) 行動時間:6時間40分(休憩含む) |
少し遅めの起床、天候は曇天ベースだが雲は薄くはれてきそうな気配である。テント撤収、未舗装林道を取り付きへ向かう。路面は、一部荒れているが速度を上げなければ大丈夫である。 途中、右に林道を見送り、コンクリート橋を渡ると取り付きの広場である。到着は、6時半。数台は駐車可能である。橋の手前から河原に出られ、昨夜、テントサイト横を通過した2台の車が駐車している。先客は、沢登ではなく釣りのようである。 手早く支度し、06:50、出発。橋のすぐ上流には堰堤があり、左岸からまいて河原に降り立つ。予想していたより明るく、天空が開け、沢幅も広いではないか!これは愉しい遡行になりそうだ・・・・そう感じさせるほど第一印象がいい。 しばらくは変化のないただのゴーロ歩きである。急がずあわてず明るい沢歩きを楽しみながら右に左にのんびり行くことにする。 しばらく行くと釜のある小滝に出るが、泳ぐ気にはなれず左をへつって越える。出発して40分ほどで2段の滝に出る。 |
広く明るく開けたゴーロ歩きが40分ほど続く。3mほどの小滝はへつって越える |
2段の滝(10m+6m)に遭遇、ここからが実質的な大幡沢遡行となる。明るく開けた滝で威圧感は全く無し。10m斜滝は右手から取り付く。上段は丸い釜を持つ滝で、流木が滝の中心にかかっている。直登は無理のようだが、右岸壁からいけそうだ。ここはしっかりザイルを出す。少しあがった所にあるクラックにキャメロットでランニングビレイをとり、滝の落ち口へトラバース気味にあがりこむ。続く斜滝も登り右手ブッシュでビレイをとる。 一人ずつ後続し全員登ったのでザイルを片付けようとしたら35mザイルが無い!聞くとちょっとした勘違いで解除してしまったらしい。35mはメインザイルだ。無いと困るので後戻り釜をのぞけば?・・・・釜から流失せず、しかも沈まずに水中に漂っている!・・・・よかった、ヨカッタ! 懸垂で釜に降り回収する。 |
2段の滝を越える。スタンス、ホールド共適度にあるので体を慣らすのに丁度いい |
ザイルの回収で少々時間を要したが、上流は綺麗な滑床、滑滝が続く・・・・・こんな気持ちのいいところなにも急ぐことは無い。 散歩気分で右に左に蛇行する流れを追っていけば、開けた釜に勢いよく流れを落す直瀑:10m出現! |
2段の滝を越えると、沢は蛇行、滑床、滑滝が続く |
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10mの直瀑を右から巻くと直ぐ上流には、30m逆くの字の滝がこれまた豪快に流れ落ちている |
登山道のような巻き道 | 30m滝の釜でしばし休憩 | 黄土色と化した河床 |
蛇行する黄土色の河床、それを右に左にリズミカルに流れる水流を遡る。先ほどの滑床・ナメ滝よりは、少し傾斜が増し、斜滝!というべきか。いずれも水流の中を直登したり、流れの右や左の水際を気分よく登る。なんとも爽快な気分なので、時々立ち止まり・・・・顔を見合わせて、いいいねえ!・・・ しばらく斜滝のぼりを愉しむ。小さな釜を持つ斜滝も現れ、遡行に変化がつく頃、右手に黄土色の鉱泉湧水源がある。ここから湧き出た湧水が下流の河床を着色しているようだ。それにしてはかわいらしい湧水源である。ここを通過すると河床は、一転して鉛色になる。【本項の最後の写真】 |
蛇行する流れには斜滝、滑床、滑滝が配置され、厭きない遊びの場を創っている |
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鉛色の河床になり、3mほどの斜滝を越えれば、標高:約930mの二俣(写真右)に出る |
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豪快な二条の滝:10m。左から巻いて落ち口に出る。 |
まるで放水路から噴出しているような10m滝。ここでも霧しぶきをあびて、”涼”を愉しむ |
岸壁沿ってガレを詰め、上部岸壁にそっていくと切れ目があり岩の上に出る。 回り込んでいくと涸れ沢を一つ越え、ゴルジュ右岸の側壁上に出る。そして懸垂下降で沢に降り立つ |
沢に戻ると、また滝の連続となる。水流をくぐったり、ボルダリン的に頑張ったりして遊べば、20m近い斜滝に出会う。こういう滝は、滑るように流れる水流に逆らい沢靴のフリクションを愉しむのが常道。更に進めば岩全面に流れを落とす涼感満点の末広がりの滝(8mくらい?)、ホールド、スタンス豊富で右手からすすんでしぶきを浴びて気持ちよく登る。 ・・・・更にいくつかの滝を越えると、標高:1150mくらいの二俣に出る。右俣がA沢、左俣がB沢である。下山には右俣がよさそうだが、沢を見るとやはり左俣が綺麗だしまだまだ滝が続いているように思われる。時間的には、余裕があるので左俣をとり、途中から大幡山に近い尾根に出ることにする。 |
下の二俣から奥の二俣(写真右)までの1時間半は、10mクラス2ヶのほか、 斜滝、滑滝、滑床ありの変化に富んだ遡行になった |
さて、逆層で滑っているんだったら巻いたほうがいいか、と思ったがよく見ると水流の右側の壁が登れそうだ。偵察をかねて登ると上段まですんなりいける。更に、少し木登りすれば更にあがれる。ここから階段状だが落ち口の状況が分からない。念のためザイルを出しあがりこむとすんなり落ち口に出た。ザイルフィックスし全員、滝上に出て最後の大滝終了! |
水流はずいぶん小さくなったが、斜滝、滑床、滑滝はまだまだ続く |
右手から取り付き落ち口に出る | 逆層で滑った大滝。15mくらいはありそうだ |
大滝を越えると急に源流の様相に変わる・・・さながら森のある高原を流れる小川! 適当な所で、遡行終了!とする。標高は、1250mくらいだろう |
我々は、標識に従って直進する。少し行けば右に林道分岐、皇子原・大幡沢入口の標示あり・・・・どうやら迷わず帰れそうだ。この林道は、沢にかかる橋が崩壊している。2ヶ所ほど涸れ沢を渡り草で覆われかけた林道をたどれば入渓の広場に出た。時刻は、13時30分、出発しておよそ、6時間40分の沢登でした。 |
右手の尾根に取り付く | ガレ地から見る矢岳、右奥は高千穂ノ峰 |
ガスの中の高千穂ノ峰(写真左)、中岳〜新燃岳の稜線(写真右) |
あいにくガスに覆われた韓国岳(左)と甑岳 | 大幡池方面に向かう |
展望所より大幡池を望む。最奥は夷守岳、手前が丸岡山 |
標高:830mの登山口(写真左)を通過、林道を下れば皇子原/大幡沢方面分岐(写真中央)、 右折して20分ほどで出発地に戻る |
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Reported by Y.Kubo Photo presented by K.Akazawa