伯耆大山:野田ヶ山〜振子山〜ユートピア

 2008.02.10-11 

 今年は雪が多い。日本海側は、連日降雪が続く。雪雲のかかりかたを見ると、山口から島根西部は連日というわけでないが島根東部から鳥取方面は来る日も来る日も雪雲がかかる・・・気温も低い日が続く。

 天気情報では、3連休の前半、9−10日はよくなさそうだが、11日は幾分回復するだろう、とのことだ。
 
 今年の大山は3回目である。前回は、悪天で中退、前々回は、三ノ沢右俣尾根1400mまでで下山した。正月の中アも中途半端に終わり少々不満の残る結果である。今度こそ一本通したいねえ!・・・・積雪の多い北壁は後日、少し安定してから行くことにして今回は縦走することに決定。


 大山はどこを歩いても愉しめるが、@未知の尾根が含まれ、Aわずかでも、ロープを出す箇所があること、は考慮したい。又、参加者は6名で、車1台なので車回収を考えればルートはかなり限定される・・・

 設定したルートは、香取(久しぶり!)〜展望所駐車〜尾根末端からダイレクトに野田ヶ山(未知だが、多分ラッセルに終始)〜親指ピーク(ロープ使用?)〜振子山〜ユートピア〜主稜(剣ヶ峰〜弥山間ロープ?)〜弥山。
 
 スキー場情報では積雪2m近い、もっと多いと思われる野田ヶ山〜主稜を踏破できるか?・・・・時間しだいであるが、主稜線の縦走は出来ないとしてもユートピアまでは足を延ばしたい・・・・・。


コースタイム

●02/09
 
:北九州(門司港14:25)⇒高速(中国道〜米子道)⇒米子(買出し)⇒香取(20:30)
●02/10
 :香取⇒展望所(駐車、出発 07:30)⇒野田ヶ山北尾根1176mピーク幕営(14:00)
●02/11
 :幕営地(06:50)⇒野田ヶ山(08:10/08:15)⇒親指ピーク(09:50)⇒振子山(11:25)⇒ユートピア小屋(12:15/11:25)⇒元谷堰堤(13:30/13:40)⇒大山寺(14:30)

参加者

 伊津見、原田、岡村S、新、赤澤、久保、以上6名






02/09
 米子道に入って直ぐに規制がかかる。一旦、料金所に出て『タイヤチェック』をしてもらい高速に戻る。米子ICで高速を出て、買出しの為町に向かう。9号線をわたったところにサティがあり、食料と飲み物を確保する。

 雪まみれの町を想像していたが、町には残雪のかけらも無い。9号線を鳥取方面に向かい、9号線をまたぐ陸橋を越え山手に向かうと香取は近い。案内表示に従えば迷うところは無い。

 はじめは雪の無い普通の夜道、しかしやはり冬の道、高度を上げるに従い次第に雪が現れ、やがて前面真っ白になる。スタッドレスが効いているのがよくわかる。周囲の積雪もいっきに増えてきた。高度を上げるほどに風雪が強くなってくる。人家もまばらな夜の白い路面には、軽トラらしい轍が残っているのみだ・・・・1人だったら心細いだろうが、今日は飲兵衛6人組での訪問だから何かあってもどうにかなるでしょう!

 20時、なつかしの駐車場に到着。さいわい除雪はされているが、トイレの入口は雪に埋まっている。さ〜てテント張りますか、と車から出ようとしたら急に吹雪き始めた。この駐車場は、展望所をかねているので見通しもよければ風当たりも強い。本格的に吹き始めたのか、とてもここで幕営なんぞする気にならない。
 仕方ないので、もっと低い場所を探すことにする。来た道をスロースピードで戻りながら探せば、少し下った所右手に除雪された駐車場がある。そこはかなり広く風当たりも弱い・・・・・ここに厄介になりましょう!

 担ぎ上げる乾いたテントは使用せず、別途持参した2張りを設営、いそいそと小宴会に! ヨカッタ、よかった!
 ・・・・しかし、このまま降り続くと、明日は香取で撤退かもしれん。3年前だったか、3人で前夜香取に入ったまではよかったが、翌朝あまりの積雪に尻尾巻いて帰ったことがある・・・・・案じながらも飲食は滞らない。23時ごろになって雪が止んだ。どうやら、明日は登れそうだ。



02/10

 曇天。視界はほどほどで、行動には支障ない。昨夜からの積雪はわずかで助かった。朝食後、川床方面に向かい上部の展望所(標高:630m位)まで移動する。ここは路線バスの終点で、通常、除雪されている。ここに駐車し支度をする。

 07:30、出発。除雪された道路は、50m程で終了。さっそくワカンの出番である。
 
 野田ヶ山へは、通常はこのまま川床まで車道を行き大休峠方面への登山口(標識有)から入山、阿弥陀川にかかる橋を渡り急坂を越えて、野田ヶ山から北へ長く延びる尾根に出る。あとは大休峠経由か、適当なところから尾根上にでて直登すれば達せられる。

 今回は、野田ヶ山から北へ長く延びる尾根(北尾根?)を末端近くからトレースするつもりである。ワカンはいてしばらく車道を行く。つぼ足よりは潜らないだろうがそれでも膝下までズブリ!適当な所から左の尾根に取り付く。いきなり膝上まで来る。
 
 荷を背負っていたらスピードは落ちるので、トップは空荷でトレースをつけ、後は荷を背負って続くことにする。6人いるのでトップを入れ替わりザックを取りに戻り、のんびり歩いても追いついて3〜4人目に付けるのできわめて効率的である。6人歩けば立派な登山道になっているので、ラストは楽勝!ですが、意外ときついのはセカンド、トップがトレースつけたとはいえ、ザックの重みで更にズルズルいきますから。

車道をしばらく進み、適当な所から左の尾根に取り付く


 野田ヶ山から北に延びるこの尾根は、等高線が緩やかなので斜度は緩い。雪が深くなければ、たいしたアルバイトにはならないのだろうが、今日はそうはいかない。1時間ほど進んだ頃、ガスが薄くなり右手にぼんやりと国際スキー場が見える。川床の丁度横を通過中である。もうしばらくで川床からのルートが尾根を横切るはずだが、今日はトレースが無いので定かでない。右手阿弥陀川から延びあがってきた尾根が合する・・・標高:1000mあたりである。

 緩急のある登りをジリジリ詰めていく。ブナの原生林の尾根道は何の変哲も無いが気分は上々!川床ルートとの合流点らしき辺りに黄色のテープがあったが、それ以降はテープも赤布も無い。しかし高いところ目指していくだけだからルート外すことはない。トップ空荷の順繰りシステムでラッセルははかどるはずだが時間の割には進まないようだ。


順繰りでラッセルすること6時間余!・・・・膝を越えると思うように進みません!
(平均時間あたり標高差:100m)

 出発して6時間経過、13時半を過ぎた頃、トップ帰りの原田が言うには、1200mのピークまでトレースつけました。ピークから尾根が二分しているんで、後続には右をとるよう言いました、と・・・・・尾根が二分? 野田ヶ山まではストレートのはずだが、と思いそのピークまでいく。たしかに二分、右は細い尾根で下降気味、左はブナが綺麗に立ち並んだごく普通の尾根でそれなりの斜度で下っている。野田ヶ山から大休峠の下降ルートに似ているなあ・・・視界があれば判断するまでも無いが・・・・右手の尾根を100mほど偵察する。左も右も切れており、イメージが野田ヶ山から振子山に向かう尾根に似ている・・・・・みんなの高度計は、1200m台であるが、出発時点で修正していない。もし野田ヶ山ならばこの先適当なテンバは無い、迷うんであれば泊まったほうが無難か・・・・もう6時間以上もラッセルしているし、もうイイデショウ!のお泊りモード!

 まとめ;ここは多分、野田ヶ山でしょう。従い、ここで幕営します。もし違っていても次のピークが野田ヶ山だから、明日、1〜1.5時間程度余計に歩くだけですからね。泊まるとなったら整地は早い。30分ほどで6人用設営完了。一夜なので少々窮屈だが、一張で我慢する。

 嵐にしては少々贅沢なアルコール類、食料を担ぎ上げた。ここは、誰もいない、人里と遠く隔絶されたピークである。久しぶりに遠慮なく夕方まで楽しく歓談する。早めに就寝するが・・・・小用に出た時、ガスがすでに取れており左手に甲ヶ山と矢筈ヶ山の吊尾根が見えた!・・・・・・どうやらここは、野田ヶ山のピークではなく一つ前のピーク!のようだ。



02/11

 天候は、快晴に近い晴れ!前方に野田ヶ山が大きい!・・・・距離があるようだが、よく見ると木々の見分けがつくくらい大きく見えるので、さほど遠くはなさそうだ。まあ1時間半というところだろう。

 テント撤収、6:50、出発。ラッセルの手順は昨日と同じ。尾根は少し下降、少し登り返してコルに出る。右手にはピラミダルな鋭鋒;三鈷峰が望まれる。二年前登行した北稜も間近に望まれる。

 コルから尾根筋をはずれ左斜上、正面の沢にルートをとる。登るほどに急傾斜になるが・・・・ヤング?の頑張りで尾根筋に出て右に一登りで待望の野田ヶ山ピークに出た。

【写真右:野田ヶ山のピーク】

 紺碧の空を背景に、朝日のふりそそぐピークからの眺望は実に雄大である。

 このピークと振子山をつなぐ、少し曲がりくねって登下降のある痩せた尾根、その中間ほどにある三角錐の親指ピーク、屏風のような振子山の稜線の向こうには大きく盛り上がるユートピアの大地、その向こうに彼方に向かって延びる大山の主稜線、主稜の右端を締める鋭鋒、三鈷峰、そして当面の目標であるユートピア小屋、すべてが一望の下だ。

 遥かなる頂、大山!そう感じるピークは、ここ野田ヶ山が一番かな?

02/11、絶好の天候に恵まれる・・・・野田ヶ山〜大山主稜へ向け出発

幕営したピークから望む野田ヶ山、さほど遠くない。
狭い尾根を辿れば右手にピラミダルな鋭鋒、三鈷峰が威圧する
コルから野田ヶ山ピークまで、標高差:170mの登り。
1時間を要する、白い花の咲き乱れたような樹林帯のラッセル
野田ヶ山ピークからのパノラマビュー、遥かなる大山主稜を望む!


 振子山へのヤセ尾根に入る。ピークから急下降、一旦平坦になるがじわりと登りになる。相変わらずワカンでも膝まで埋まる。一つ目のピークは問題なく越える。

 二つ目のピークから先がヤセ尾根で左が極端に切れている。雪庇も出ているようだ。ワカンじゃ足許が覚束無いのでアイゼンに履き替え、ロープを出す。 40mくらいでピッチを切り、ロープをフィックスする。ここは1ヶ所2mほど切れ込みがあり、ブッシュを掘り出してすすむ。

 続くナイフエッジは見事である。野田ヶ山のピークからもそれとわかる白い刃のようなエッジである。左手はほぼ垂直に切れており、ルートの取り方しだいではリッジ上の雪塊が崩壊する危険がある。出来るだけブッシュ沿いにトレースする。エッジの終端は、岩場になっているが、掘り出せばホールド、スタンスはある。40mくらい延ばせば親指ピークとのコルに出る。

【写真左:野田ヶ山〜振子山のヤセ尾根 from 野田ヶ山ピーク】

 夏道は、親指ピークを越えるようにつけられている?と思うが、積雪豊富な今は左からトラバースして振子山側のコルに出る。ピークの直ぐ下を巻くより、大きく巻いたほうがいいようだ。とろうと思えばブッシュで中間ビレイも取れる。振子山側のコルに出れば核心部?終了だが、続く痩せ尾根も積雪多量で踏み抜きの恐れがありそうなのでもう1ピッチ、コンテでいく。
 
 夏はブッシュの生えた泥壁だろうが、今はべっとり雪が付き進むのに一苦労である。ヤセ尾根から急な雪壁に移る。快適な雪壁である。リズミカルに登りついたところでアンザイレン解除。振子山の稜線まではもう少しである。
 
 尾根にはもう一つ岩塔があり、ここも左からまく。もう安全地帯なのでアイゼンからワカンに履き替える。一登りで高度感のある痩せた稜線に出る。

 覆われた幕が切って落とされたようにいきなり視界が開ける!・・・・・・間近に迫る大山主稜線、白い急峻な雪の襞をおとす東壁の展望が素晴らしい!
 振り返れば、彼方の甲ヶ山、矢筈ヶ山、大休峠、野田ヶ山も一望できる。


赤澤さん、行きますよ!・・・二つ目のピーク(写真右)でアイゼンに履き替える
2つ目のピークからロープを出す ナイフエッジの手前で一旦カット
ナイフエッジの通過、
右手ブッシュも急峻、気が抜けない
中間の2名いるところがビレーポイント
親指ピークは左から大きく回り込むようにトラバースする
快適な雪壁を登り、岩塔を左から巻けば振子山の稜線に出る

左奥が東壁、中央が振子沢源頭、沢左は東尾根。
正面の緩やかなピークが象ヶ鼻でその右手にユートピア小屋が見える
左手前が野田ヶ山。遠くに甲ヶ山、矢筈ヶ山。
野田ヶ山と矢筈ヶ山をつなぐ尾根のコルが大休峠。右のピークは振子山

 振子山の稜線を西に向かう。比較的狭く右手三鈷東谷側はきれた稜線なのでワカンでの歩行は注意が必要だ。正面には、鋭鋒:三鈷峰が東谷源頭を挟んで鋭く立ちはだかる。登下降の少ない尾根を端まで行き、最後のピークから南西側の尾根を下るといよいよ大山主稜への登りになる。ユートピア小屋へは直登せずに象ヶ鼻から下る振子沢左岸に出たほうが楽である。

 左岸上に出るとクラストしており歩きやすいが所々バーンしている。アイゼンのほうがいいが、履き替えるのは面倒なのでワカンのままでガニ股もしくは斜登行で象ヶ鼻へ向かう。そろそろ皆さん、疲れが出る時間だ・・・・かなりキツイ!やがて象ヶ鼻に出る。ここからユートピア小屋まではわずかである。今日は天候に恵まれたので縦走者があるだろうと思っていたが、トレースは全く無い。剣谷から上宝珠越へ至るトラバースルートもトレースは無い。多分、見通しが良いので、小屋を経由せず直接、宝珠尾根を下降したのだろう。

 小屋着が、12:15、車の回収を考慮すれば時間的に縦走する余裕はなさそうだ。加えて今回の縦走パスの気分濃厚!しかも快晴だったのにいつの間にかガスが出てきた・・・・今回は、ここまで!下山しましょう!

 小屋で小休止する。小屋入口は氷付けになっており利用された形跡は全く無い・・・・それは当然のことで、アクシデントでもない限りここで泊まるぐらいなら元谷に下降するだろう。下降ルートの剣谷もガスに覆われてきた。勝間ケルンが見え隠れしている。

振子山の稜線を西に向かう・・・白いピラミッド、三鈷峰が実に堂々とした姿で迫る
端のピークから下降すれば、いよいよ大山主稜への登りだ・・・
振子沢左岸稜にあがり象ヶ鼻への最後の登りを頑張る

 勝間ケルンが見えるうちに下降しましょう! ここでワカンから再びアイゼンにチェンジする。更に、トレースは無いし、ガスで視界が閉ざされる可能性が出てきたのでアンザイレンする。コンテでぼんやり見えるケルンを目指して下降に入る。勝間ケルンには、SACの標示がある。このケルンは下関山岳会の皆さんが定期的にメンテナンスされている。宝珠尾根が視界に入っていれば問題ないが、ガスに覆われたり、トレースが無い折は大事な道標である・・・有難うございます。

 ケルンのある支稜を越えもう一つ支稜をこえれば宝珠尾根に出る。左手稜線からのトレースがある。やはり直接尾根を下降している。下宝珠越でザイルを解く。トレースを追うと元谷へシリセードで一直線で下っている。勿論、我々も一滑り!・・・オオッ!、快適!気持ちい〜イイイイッツ!今回の山行で最もスカッとした一瞬でした。

 尻が滑らなくなると仕方ないので歩くしかありません。テクテク大堰堤を目指して歩けば、今山行で初めて登山者に会う・・・・彼らは数人でトレーニング中でした。大堰堤に出ると別山沢や6合目方面からの登山者にであう。雪道はしっかり踏み固められている・・・やはり元谷は入山者が多い。

ガスに見え隠れする勝間ケルンを目指してトラバース気味に下降
尻セードで元谷へ一直線!・・・・・振り返れば北壁のガスもとれ稜線も見えるようになる
再び青空が広がり、すっかり春山のような気分になってきた・・・・もう少しで大堰堤である


 踏み固められた林道を辿り、大神山神社へ下降する。神社は、大量の積雪で今にも押しつぶされそうだ。

 14:30、大山寺の駐車場到着。皆さん、お疲れ様でした。

 さ〜て、後は帰北するのみです。香取までタクシーで車回収に向かう。4000円と少しで香取まで行くことができた。ここまでは順調でしたが、アクシデントは大山寺へ帰る途中で起こったのです・・・・・・アクシデント! まさに ”不慮の出来事” は思いもよらぬ時に起こるものです・・・・結果的に、長年親しんだ我々の足は、引退することになりました。お疲れ様!

多量の積雪に押しつぶされそうな大神山神社、
何事も無く下山できることを感謝して大山寺へ向かう

 伯耆大山や南・北・中央アルプス山行の”足”として活躍してきました愛すべきボンゴは、本山行を最後に引退しました。
長期間にわたり御愛顧いただきまして有難うございました。




Reported by Y.Kubo  
Photo presented by Y. Atarashi, S. Okamura & K.Akazawa

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