伯耆大山:三ノ沢〜天狗ヶ峰〜剣ヶ峰・弥山 2007.02.25

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■暖冬の今年は、大山も雪解けが早い。平年よりは1ヶ月近く早いような気がする。情報では、まだ2月だというのに大山のスキー場は、不可!のところが多い。

 ブッシュの多い尾根の登行はそろそろ終了?、ブッシュが出てダメなら、沢にルートを求めるしかない・・・・もう少し雪山を愉しみたい、と思い、比較的易しそうな三ノ沢に行くこととする。三ノ沢は過去3回ほど訪れたが、いづれも槍尾根に向かうルートである。今回はダイレクトに詰め主稜に出る計画である。


■残雪期に向かう今の時期、ダイレクトに沢をつめ主稜に出るルートをとる場合、条件が限られる。一つは、2〜3日間新雪がほとんどなく、出来れば朝の冷え込みが厳しい、という気象条件、もう一つは、落石や雪庇の崩壊の起こりにくい、気温の低い早朝に危険箇所を通過するよう行動する、という主体的条件・・・・が最低必要だろう。

 三ノ沢登行の場合、大堰堤をできるだけ朝早くでて、もっとも危険度の高い、槍尾根〜天狗ヶ峰〜剣ヶ峰を結ぶ扇の要であるスロート部を通過すれば、標高差、メンバーの力量、等から勘案しておよそ2時間ほどで稜線に達するはずである。

 06:00出発で、08:00主稜だから多量の新雪がなければ危険度はきわめて小さくなる・・・まさしく、Speed is safety!


【写真上:鍵掛峠付近より、02/25撮影】

【参加者】林、岡村M、新、赤澤、伊津見、久保、以上6名
【コースタイム】奥大山スキー場(04:10)〜三ノ沢取付(04:50-05:00)〜大堰堤(05:40-06:20)〜稜線(※08:15-09:15)〜剣ヶ峰(10:00-10:10)〜弥山(11:20-11:55)〜横手道分岐(13:10)〜桝水原(14:00)〜鍵掛峠(15:40)〜スキー場(16:05)

※主稜に出た後、一旦剣ヶ峰に向かうが、途中でリターン、槍尾根下降を試みる。しかしこれもやめ天狗ヶ峰に戻るまでウロウロした時間が含まれています。





  02/24、17:45門司発。途中、ちょっとした車両トラブルがあったが、23時には奥大山スキー場に到着する。情報どおりスキー場は積雪ゼロ!駐車車両は、1台のみで人気はなくガラ〜ンとしている。トイレ横にテント設営し、一杯飲んで就寝


【写真左:02/25、04:10奥大山スキー場駐車場出発!】

 02/25、3時10分起床する。手早く朝食を摂りテント撤収、支度をして、04:10出発。勿論、真っ暗なのでランプの灯りの下取り付きに向かう。ゲートは閉じているが、暖冬のおかげ?で環状道路は積雪ゼロである。

 黙々と歩を進めると30分ほどで健康の森登山口、勾配が緩くなると鍵掛峠である。カーブを曲がると第2のゲートがある。ゲートを越すと路上は20-30cmほどの積雪、しかし早朝なので雪は締まっており歩きやすい。

 三ノ沢取付で小休止。まだあたりは暗い。10分ほどで出発、沢にはワカンやらスノーシューズ、スキーのトレールがありそれを辿る。トレールは左岸につけられている。スキー場を出るときはさほど感じなかったが、沢に入り冷たい風が舞う・・・このところ暖かかったせいか冬に逆戻りしたような冷たさである。そういえば予報で冬並みに冷え込む、とは言っていたが・・・冷える!

 05:40、大堰堤に到着する。新雪と風でいつの間にかトレールが見え隠れするようになってきた・・・・そのうち消えてなくなるだろう。

少し明るくなるまで待機、その間アイゼン、ハーネス、等の準備をする。

 足元がランプなしでわかるようになった06:20、出発。堰堤の左手を越えて三ノ沢中央に出る。

少し明るくなってきたので出発する。時刻は、06:20 最奥の割れ目が南壁へのゲート

 プラトーを吹き抜ける風が冷たい。右手槍尾根側からはガスの塊が岩稜を覆い始める・・・プラトー正面最奥の割れ目が南壁:三ノ沢上部へのゲートである。ゲートを越えれば抜けるしかないが、写真で見ると上部は幾筋か岩稜が落ちており、ガスで視界がなければちょっといやらしそうだ・・・・・スノーシューズのトレースが、時たま見られるが、そのうちなくなる。雪はよく締まっておりアイゼン登行で問題なく進める。いくらか新雪があったようで、吹き溜まりになったところは膝くらいまである。

 ゲートまでは見た目よりは傾斜があるので、ジグザグに進む。又、沢中央は避けて右手よりゲートにはいる・・・ここで傾斜がグッと強くなる。新雪が溜まっており、崩れやすいステップを踏みしめながら両サイド岸壁の迫るスロート部を登っていく。

 正面にぼんやりとピラミッド状の岩壁が見える。ここが、剣ヶ峰方面と天狗ヶ峰方面を分かつ二俣のようである。どっちにするか?・・・・少し考え右の天狗ヶ峰方面を進むことにする・・・・・・剣ヶ峰手前には、かなり大きな雪庇が出来ているはずだ・・・・もちろん天狗ヶ峰のほうにも雪庇はあるが、剣ヶ峰のほうが規模が大きい。ガスで先が見えない今日は、どっちが安全か、といえば天狗ヶ峰のほうだろう・・・・さらに出来るだけ危険性を避けるため沢の中央を通らず、岸壁よりに登行を続ける。雪壁にはいくつか岩のかけらが転がっている・・・・落石注意!だが、今日みたいな日に落石あれば、音もなく、しかもガスに隠れた見えない魔球みたいなものになるだろうから・・・・あたれば不運、それれば幸運・・か。


スロート部のゲートまではプラトーだが、見た目よりは傾斜がある
中央は避けて右手から
スロート部のゲートに近づく
新雪で少々不安定だが、
ステップ踏んでスロート部を越える
正面に三角形の岸壁:岩稜の末端壁。末端が二俣のようだ
写真上:右俣にはいる
写真下:岩稜沿いに登る
右手槍尾根側からはいくつか支沢?が降りてきているようだ

右手、槍尾根側から落ちてきている岩稜をやり過ごし、傾斜が幾分強くなったところでアンザイレンする。少々不安定なところがあるがステップが効くので、しいてザイルを出すことはないかもしれないが・・・・精神安定剤的な役目もあるので、手間かかっても安心の登行でいくことにする。雪壁だから淡々と登るのみ・・・何の変化もない・・・・視界が利いて周囲の岩稜やら稜線やら見えれば高度感もえられ、いくらか退屈しのぎにはなるだろうが・・・・今日は其れも叶わぬ単純労働!

 そろそろ上部が見えてきてもいいのでは・・・・と思いはじめると、そのオモイが通じたのか、稜線らしき陰がぼんやり!・・・・近づくと稜線ではなく岩壁のようである。岩壁を越えることは不可能!稜線に延びる雪壁でなければ抜けれない・・・・・左手に目をやればぼんやりながら雪壁が上部に延びている・・・・あれか?40mほど岩壁の裾を回り込むように左斜上、上方に延びていると思われる雪壁に取り付く。

アンザイレンする・・・次第に傾斜がきつくなる・・・上方を岩壁に押さえられそうなので
左トラバースし上に延びる雪壁に取り付く


 岩壁をかわして雪壁にザイルを延ばす・・・すると上部にぼんやりと水平線がみえる・・・今度は岩ではなく雪の稜線のようだ・・・・どうやら抜けれそうだ・・・・着いたよ〜!

【写真右:先行4名主稜に出る】

 歩を進めると間違いなく稜線で、しかも雪庇はない。最後が少し急だが、問題なく主稜に出る。今までは南壁側で風は幾分緩やかだったが、出た途端、北壁側からの寒風にまともにさらされる・・・・凍傷になるんではないかと感じるくらい冷たい!まさしく冬の風である。見る間に睫やウェヤーに氷がつく、オ〜ッ、寒!・・・・まあ、何はともあれ全員何事もなく主稜に立つことが出来た・・・お疲れ様でした。時刻は、08:15、堰堤から予想通り2時間だ。

 まだ早いので、剣ヶ峰まで行くことにする。剣ヶ峰までは危険箇所はないが、アンザイレンのまま西へ向かう。ガスは取れず、寒風は吹きまくる・・・しばらく行くが、寒いしガスは取れそうもない・・・・剣ヶ峰にいってもこの天候じゃ意味ないねえ・・・ということで引き返し下山することにする。先ほどの三ノ沢終了点を通過、小ピークを登ればそこが天狗ヶ峰である。

 ユートピア小屋方面に向かい振子沢経由で帰るか、槍尾根経由だが、勿論後者が近くて早い・・・・槍尾根を下山することにしてそれと思しき尾根を下降するが・・・・どうも違うようである。一瞬でもガスが取れればいいが・・・・粘着性でも持っているかのように張り付いたガスはなかなか取れない。

 積雪量がいつもと違うせいもある?のか記憶とすっきり一致しない・・・こうなれば遠回りにはなるが主稜を縦走して弥山に出て夏道を下山した方が安全・確実である・・・・・方針決定!天狗ヶ峰に戻り弥山への縦走へ出発する。

最後の急雪壁を登ってすんなり主稜に出る・・・丁度、雪庇のない所に出た
4人に引き続き、赤澤/林主稜にあがる・・・・みんな冬並みの寒風にまつげも凍る!
剣ヶ峰方面に向かう。風が強くザイルが流される・・・慎重に行きましょう!
剣ヶ峰まで行かず、途中でターン、又天狗ヶ峰に向かう・・・・今日はここまで!

 
 再び剣ヶ峰に向かう。ガスも風も変わらないが・・・・先程ターンした辺りを過ぎた辺りで突然ガスが薄くなり、正面に”白い主稜線”現れた!お〜ッと思わず歓声・・・どうやら天候回復の兆し。進むほどに周囲がクリアになり視界が開ける、

 やがて剣ヶ峰到着。ピークにある標柱が顔を覗かせている・・・やはり今年は暖冬だ。あらためて記念撮影。先程行きつ戻りつしたが時刻は、まだ10:00だから十分余裕がある。しばし休憩して弥山に向かう。

 ここから、2ヶ所ほど危険箇所があるが、雪のついた今の方が通過しやすい。アンザイレンのまま歩を進める。見ると弥山から2パーティがこちらに向かってくる。
 
  ナイフエッジにかかる手前で、慣れた足取りの女性(単独)と離合・・・・天狗ヶ峰から間違いのトレースがある旨、伝える・・・・わかりました、と言ってくれたが、あの足取りではこの大山知り尽くした感じなので、余計なことだったかもしれない。
 
 ここからは、この女性がつけたトレースを辿る。

 ナイフエッジは、60mザイルで丁度小ピークにつく。ここは南壁側を通過する。小ピークには、2人連れが我々の通過を待っていてくれた・・・・・すみません。ちょっと手間取りお待たせしました・・・・この2人は姫路の方で、なんと福岡、北九州にお住まいだったことがあるとのこと。少しおしゃべりをする。

もう1ヶ所確保の必要なところは、コブを越える所である。ここはガレた細い稜線上のコブを越えるのだが無雪期の方が遥かにいやらしい。雪があればアイゼン効かしてすんなり通過できる。あとは自分を引っかけて転ばぬように歩けば弥山まで確保の必要はない。


写真左:最奥のピークが剣ヶ峰。左手南壁側に張り出した雪庇が大きい
無理して槍尾根を下らないでよかったね〜久しぶりの縦走の人もいるし・・・
しかし天狗ヶ峰のほうはガスがなかなか取れない
標柱が顔をのぞかせている剣ヶ峰。時刻は 10:00、今日はまだ誰もきていないようだ
弥山へ向けて縦走続行。ナイフエッジの通過は、確保する・・・・
前方2人連れが待っている小ピークまでちょうど60m
コブを越えると稜線漫歩 引きずったザイルを整理しながら弥山へ! Thank you, Mr. Hayashi


 コブを越え弥山に向かうと、縦走者3名ほどとすれ違う、いずれも単独である。弥山到着!いきなり多くの登山者に出会う・・・・さすがに雪山大山である。右手北壁からは弥山尾根からのザイルパーティが到着、夏道組と合流・・・・・なかなか賑やかである。

【写真右:弥山山頂にて】

 我々は、奥大山まで帰らねばならないので、今からが核心部?全員そろったところで記念撮影し、早々と下山にかかる。ちょうどお昼時なので登ってくる人もまだまだ多い。

 6合目で着込んでいたウェヤを適当に整理、ついでに腹ごしらえして今年2回目の夏道を下山する。
横手道分岐、13:00着。さらに身の回りを整理して遥かな奥大山スキー場に向かって歩き始める。

 経験から横手道は残雪があることが多く、近道ではあるが歩きづらいので、車道を行くことにする。積雪ゼロの桝水原スキー場;14:00通過、左折して環状道路に入る。すぐのゲートは閉鎖中。しばらく路上に雪はないが、一ノ沢手前あたりから積雪!・・・・しかし結構人が入っているので潜ってうんざりするほどの事はない。

 二ノ沢通過、文殊堂を過ぎて今朝取り付いた三ノ沢を通過、・・・・・そして鍵掛峠;15:40、ここから南壁が一望できる。路上の積雪はここでおしまい。雪の消えた舗装道路を下ること25分でスキー場駐車場に到着した。 時刻は、16:05.今日の行動時間は、ほぼ12時間!歩きの時間が多い1日でしたが、主稜に出た後、天候も回復し気持ちよく縦走を楽しむことが出来たので、長時間の歩きは帳消し?
皆さん、お疲れ様でした。


ピーカンではないが、弓ヶ浜もよく見える。頂上台地はすでに木道が見えている
02/04、中退した別山 元谷の大堰堤は土が見え隠れしている



【阿弥陀堂〜桝水原〜(環状道路)〜鍵掛峠〜奥大山スキー場】

桝水原スキー場 二ノ沢出合い 二ノ沢から望む槍尾根
文殊堂〜三ノ沢出合 おなじみの鍵掛峠から望む南壁
烏ヶ山
(健康の森登山口近くから)
奥大山スキー場から望む大山主稜と槍尾根

【Reported by Y.Kubo  Photo presented by Y.Atarashi & K.Akazawa】


【02/25午後の大山】