2006年夏山(U):中ア(木曽駒ヶ岳を巡る沢登&縦走)

【山行期間:2006.08.26-28】

 7月の四国山行と同じスタイルで、3000m級の中アを愉しむ計画である。
 縦走Gは、5名。クラシックルートである桂小場登山口から入山、西駒山荘経由で駒ヶ岳に登り周辺散策、下山は北御所谷の計画である。
 沢登Gは、2名。伊那側の『西横川』と木曽側の『細尾沢』を継続して遡行する。下山は時間の関係でロープウェイ利用の計画。いずれも実力相応の沢選定。

 合計7名なので道中少々窮屈な思いはするが、1台で出かける・・・当然、交通費は割安!車中は多少窮屈でも、山中では開放されますからネ・・・・・3日目、約束通り菅ノ台バスセンターで合流、縦走Gも沢登Gも十分愉しんだ”我慢し甲斐のある山旅”!となりました。


木曽駒ヶ岳を巡る沢登&縦走登行ルート概念図

西横川(中御所谷)&細尾沢(正沢川)〜木曽駒ヶ岳


■2泊3日の日程で、中ア:木曽駒ヶ岳をめぐる、『明るく開けた愉しい(楽しい)沢登!』、を計画する。ネタ本は、『日本登山大系』。

 ひろい読みをすると・・・・『茶臼山から木曽駒ヶ岳、麦草岳へかけての稜線を源頭にもつ正沢川流域は、総じて明るい沢が多く、水量も豊かでなかなか気分のよい遡行が期待できる・・・・特に木曽駒ヶ岳に突き上げる細尾沢は、美しい滝を連ね、楽しい遡行を味わえるということでは、木曽の渓谷の中でも指折りの沢』・・・・・これで細尾沢、決まり!

 折角だから比較的短い沢もう1本、ということで東面を探す・・・・『中央アルプス屈指の名渓』である中御所本谷は、我々の力では10時間ちかくかかりそうで、行くならこれ1本だろう。中御所谷支流の『西横川』を見ると・・・『30m級の大滝2つと中流部の連続するスラブ滝は全て直登でき、実に楽しい遡行が期待できる

 ・・・・上部ブッシュ帯にはいる前に長谷部新道が横切っており、やぶこぎから開放される』、ということで、もう1本は西横川で決まり!


■行程
 菅の台バスセンター駐車場ベースとするため以下のルート設定とした。
 
【8/26】菅の台ー(バス)ーしらび平〜西横川取付〜西横川遡行〜長谷部新道〜千畳敷〜駒ヶ岳頂上山荘指定地幕営
【8/27】幕営地〜木曽駒ヶ岳〜玉ノ窪山荘〜福島Bコース〜木曽駒高原スキー場〜正沢川取付〜正沢川/細尾沢遡行〜大滝頭付近ビバーク
【8/28】ビバーク地〜細尾沢上流部遡行〜頂上木曽小屋〜木曽駒ヶ岳〜千畳敷ー(ロープウェイ)ーしらび平ー(バス)ー菅の台


●西横川遡行:約900m、終了点〜幕営地:約400m
●幕営地〜スキー場:約1600m(下降)、正沢川取付〜細尾沢ビバーク地:約600m
●ビバーク地〜駒ヶ岳山頂:約900m、駒ヶ岳〜千畳敷:約300m(下降)

 2泊3日の登下降標高差は、遡行:2400m、登山道登行:400m、登山道下降:1800mとなり、多少体力と精神力が必要なルート設定になるが・・・・まあ、何とかなるでしょう!


■参加者:赤澤、久保、以上2名

西横川(中御所谷)〜木曽駒ヶ岳
 
 8/25、20:00小倉出発。8/26、5時過ぎには伊那ICを出る。まずは縦走Gの5名を登山口の桂小場まで送る。小黒川渓谷キャンプ場経由でおよそ30分走れば西駒コースの起点、桂小場駐車場到着。明後日、菅の台バスセンターで、13:00〜14:00の再会を約束して別れる。

 バスセンター着は、06:10、駐車場は8割ぐらいの入りか、バス停には多くの登山者が列をなしている。奥に駐車、すぐ支度して並ぶと運良く06:30に乗車できた。シーズン中は、ひっきりなしに臨時バスが出ている。

07:05、しらび平着。取付はすぐなので、ここで準備をするロープウェイを利用する観光客や登山者と別れ少し車道を戻ると西横川取付の橋に出る。

 07:20、左岸から入渓。河原に降りるとすぐ堰堤、左から巻く。続いてもう一つ堰堤、今度は右から越える.。

 沢は、流木が多く雑然とした感じである。しばらくでナメ風の小滝がある。簡単越えると二俣に出る。右俣は東横川で、奥に20mの滝が見える。我々は左俣(西横川)にはいる。

 沢の幅が広くしかも両岸が広く開けて明るい。岩盤上を水流は気持ちよく流れ、無色透明でなかなか綺麗な流れである。

【写真左:しらび平ロープウェイ駅】
【写真右:今回の参加者です】
西横川遡行〜千畳敷登行ルート概念図

堰堤(写真上)を2つ越す。小滝(写真下)を登れば、二俣に出る(写真右)
右俣(東横川)には、20m滝が見える

 左俣には入り、しばらく行くと正面に大岩と流木が立ちはだかる。大岩を右からそして行けば、小滝群である。トユ状や斜滝やナメ滝風の小滝を適当に越えていけば、先行している2パーティに出会う。丁度、30mの大滝の一つ前の滝を右手スラブから登攀中である。セカンドの女性があがるのを待って、我々もスラブを行く。水心の直登出来そうだが、見るからにシャワー間違いなし・・・まだ濡れたくないからね。


大岩を越えると、快適な小滝が続く
奥に30mの大滝が見えるところまで来ると先行パーティに追いついた
我々もシャワーを避け右のスラブを登る

 この滝を越えると、1つ目の30m滝、ブッシュの皆無な広い沢なので落口まで含め滝全体が一望できる。さすがに高い〜。しかし見るからにホールド、スタンス豊富で楽に登れそうである。ここで一本立てる。昨夜は完璧な睡眠不足なのでやはりキツイし眠たい。一息入れて、登りにかかる。

 思った通り、手を伸ばせばホールドが、足をおけばスタンスが・・・という具合に快適クライミングになる。右手から取り付き、中間から右岸の岩壁に移る。途中浮き石があるのでラクに注意!念のため上半部は間隔を取って登る。気持ちのいい登攀で落ち口に出る。


釜を持つ30mの大滝。ホールド、スタンスは豊富 (写真上):左岸より取付く
(写真下):中段で右岸の岩壁に移る

 30m大滝を越えると左から4段20mのトユ状滝が出合う。本流は10mのナメ滝で荒削りの花崗岩の河床はヌルヌルして滑りやすい。少し左のトユ状滝を登り右に移り直上する。上流は連瀑帯、7〜10mクラスのナメ滝、トユ状滝、段状滝、等が続く。いずれも直登可能だが、花崗岩の河床は、ヌルヌルしており非常に滑りやすい。無理することはないので水流に沿って適当に右や左に愉しみながら越えていく。

7〜10mクラスのナメ滝、トユ状滝、段状の滝が連続する
一旦静かになるが、上流には次の連瀑帯が!
いずれの滝も直登出来るが、ヌルヌルして非常に滑りやすい
注意して愉しみながら登る

 ひとしきり滝登りが続くと、沢は少し静かな流れに変わる。連瀑帯でいつの間にか標高を稼いだとみえて、2100m近くになっているようだ。水流の周囲に目をやれば、可愛らしいお花でで一杯である。お花畑の中を遡行するなんて、やはり高所の沢でなければ味わえないね。

 ナメを越えると平凡なゴーロ帯がしばらく続く。時刻は、9時半過ぎ、このころになると夏山特有のガスが次第にあがってくるが、ガスは居座らずにさっと去ったり、またあたりをボンヤリ包んだりして沢の風景にメリハリをつけてくれる。
ゴーロを辿れば、6mのナメ滝。滝の左を越えると傾斜が強くなりガレ場風になると、奥に岩塊が屹立する二俣が望まれる。奥の二俣でいよいよ本沢もフィナーレが近づいてきたようだ。

傾斜の緩いナメをのんびり行けば、綺麗なお花が迎えてくれる
ナメのあとは平凡なゴーロ帯 ガスがかかる6mのナメ滝
奥の二俣。本流は、入口がゴルジュっぽい左俣で、30m滝が取り付きとなる

 これから辿る左俣に懸かる30m大滝は、下流の30m滝よりは少し陰湿っぽい色相をしている。しかしルートは階段状で登攀は問題なさそうだ。

 時刻は、9時50分、入渓から2時間半である。標高は、2200mを越えている?すでに600m以上遡行、残り200m強と思われる。 しばらく休憩、腹ごしらえをし腰を上げる。

 ウェブサイトで、浮き石によるラクの記事を見たので念のため一人ずつ歩を進める。滝の下部、ナメを4m登り、続いて左壁のルンゼを20m程注意して登る、が階段状で特に問題なし。

 落口直下は6m程立っているので資料通り右にトラバース、左岸の岩稜を登る。ここもヌルヌルで滑りやすく最後の一手が少し要バランスだが、問題なく落口に達する。


30m大滝全景。ルートは、左ルンゼ〜右壁 (写真上):下部は、左のルンゼを登る
(写真下):上部は右手から越える

 30m大滝を越えると、樋状斜滝や8mナメ滝を越えていくが、標高も上がったせいかここまで来るといっそうお花畑が華やかになる。急なゴーロは高山植物に囲まれ、疲れた気分を和らげてくれる。しばらくゴーロを辿れば水は涸れ、涸沢の登りが続く。傾斜はきつくなり、草付混じりになってくるのでそれなりに力が入る。
しかし、涸れ沢の登りもそう長く続かない・・・・・

30mの上流は、樋状斜滝を越えていくが、周りはお花が一杯である
本沢で滝らしい最後の8m滝を越えるとそこは、フラワーワールド!


お花畑に囲まれるとついニッコリ! ここまで来ると終了点の長谷部新道は近い

 あと、100mと思い辿っていけば、ひょっこり眼前にトラロープ登場・・・長谷部新道である。あれっ、もう終わりか、と思うぐらいあっけなく遡行は終了した。どうも高度計が低めを標示していたようだ。時刻は、11時。入渓して3時間40分だから、標準タイムである。

【写真左:長谷部新道の存在を示すトラロープ】

 標高差900mにしては少々楽すぎたような気がする。高巻きはゼロだし、ほとんど一直線に登りっぱなしだったからだろう。しかも開けた明るい沢だから、開放感いっぱいで、樹林が迫るようなうっとおしさを感じなかった・・・・・ちょっぴり物足りないが、おおむね当初の目標の【愉しい沢登】になった。


長谷部新道に出たところで沢装備を解き、靴を履き替える。先程までいなかった虫が急に接触してくる。追い払いながら支度をし、腹ごしらえして、11:20千畳敷に向かい出発する。新道は、急傾斜の斜面をトラバースするようにつけられている。一般登山道としては使用禁止になっているようだが、踏み跡はしっかりしており、要所要所には、トラロープが張り巡らされている。

長谷部新道を辿る。周りはお花で一杯です

 急傾斜のトラバースとはいえ、お花畑の中を行くようなものだから、のんびり花を愛で、いくつもの小尾根を回り込みながら歩を進める。40分ほど行くと丁度ガスがとれ千畳敷と宝剣岳を中心とする鋭い岩稜の稜線のパノラマが眼に飛び込んできた。
よく目にする千畳敷からの宝剣岳とカールはとはひと味違う風景にしばし見とれる。谷を挟んで千畳敷とほぼ同じ標高で見るので空撮的な風景にも見える。


近くに見えてもなかなか着かない。終了点からおよそ1時間後、ようやくカールのお花畑に出た。
カールからは、立ち入り禁止のロープが張られている。


 カールは多くの観光客、登山客で賑わっている。カール内の散策コースを巡る人が多いが、1時間ほど頑張り八丁坂を登り乗越浄土(稜線)までいく人も相当いる。履物は下界のままの人も多いので、ここは町の延長のようなものである。
宝剣岳と千畳敷カールを望む・・・滅多にお目にかかれない光景です
ホテル千畳敷を望む およそ1時間かかってカールにはいる

 小休止の後、観光客や登山者にまぎれ八丁坂をのぼり稜線に出る。正月素泊まりでお世話になった宝剣山荘前通過、中岳は巻き道を通り、今日の幕営地:頂上山荘指定地に到着・・・・・・お疲れ様です。昨夜の睡眠不足で二人ともお疲れなので今日はここまでとする。時刻は、13:30.今日の行動時間は、6時間強でした。

 ツェルトをしっかり張り、幕営手続き、水とビールの調達を済ませ夕方までのんびり過ごす。

天気のいい夏休みだから多くの人で賑わっている
頂上山荘前の指定地で幕営。ビールと水は小屋で調達(水とトイレは幕営料に含まれている)

【コースタイム】
しらび平07:10〜入渓07:20〜終了/長谷部新道11:00/11:20〜千畳敷12:30/12:40〜頂上山荘前幕営地13:30


(続く)細尾沢(正沢川)〜木曽駒ヶ岳