祖母・傾山系:クマガ谷左俣(本谷)遡行 2006.08.06 |
■前回(2004年9月)は、左俣にはいる予定だったが取付からミスをし右俣に入ってしまった。勿論、右俣(右)は未遡行だったので、愉しく遡行させてもらった。何処で間違ったかはすぐ判明した。取り付きの橋から入渓するが、分岐まではほんのわずかの距離である。おなじ轍は踏まない・・・今回は確認して左俣(本谷)にはいり、夏の1日、シャワークライミングたっぷりの遡行を愉しませてもらった。 ■左俣は、、顕著な滝が要所に配置され遡行にメリハリを与えているようである。『くの字滝20m』、『ルンゼ状斜滝30m』、『悪相の20m滝』が適度に現れ緊張感を高める。これらの滝の前後には、いくつかの小滝が配置されて主役をサポートしているかのようである。すこし不満なのは、入渓してしばらく続くゴーロ帯が少々退屈だが、シャワーしっかり愉しませてもらうことになるのだから・・・贅沢はいえませんネ。 ■参加者:中原、岡村S、伊津見、久保、以上4名 ■コースタイム:入渓06:34〜上部二俣11:25/11:40〜登山道12:20/12:30〜本谷山山頂12:35/12:45〜ブナ広場13:40/13:50〜車道15:00/15:10〜駐車地点16:20 ■参考記録 ・クマガ谷右左俣遡行 2003.06.29 ・クマガ谷右右俣遡行 2004.09.05 |
駐車地点から5分で入渓 | ||
上流の林道が実質的な取付 |
■前夜発。原尻滝から数分走った河川敷の駐車場で幕営。明朝早く出発、下尾平から林道を左折、上の林道まで入る。ここだと入渓はすぐだし、下山にも都合がよい。支度して、06:34入渓、左俣にはいる。10分ほど岩を越えていけば林道。現在地の確認をし、06:45、実質的な遡行開始。 谷は、左右から樹林に覆われ薄暗い。朝が早いせいもあろうが、岩の膚色も谷の雰囲気に大いに影響しているようだ。谷は大岩がゴロゴロしたゴーロで大岩をなめって落ちる滝や岩の間からの小さな直瀑やらが続く。右に左に、そして直接乗り越えながら進む・・・・変化に乏しく、少し飽きが来そうになる07:20、小休止し、一息入れる。まだ30分少々しか経っていないのだから、ガマン、ガマン、気を入れなおしていきましょう! |
ゴーロの遡行が小1時間ほど続く、ガマンして辿るしかない |
腰を上げる。見ると周りは原生林に深く覆われなかなか明るくならない。谷は次第に傾斜が増したようで岩を積み重ねたような滝を越えて行くと、やっと滝らしい滝が出てくる。大岩の間にかかる直瀑で、滝下から右手に這い上がり巻いて越える。続いて小滝を連ねた瀑流帯になる。なんだか少し騒がしくなってきたようだ。詰めると巨大なテーブル岩と四角いブロック岩の間にかかる二条の滝で、易しい右手から越える。 続いて2,3の小滝を越えると、谷ガ明るくなり正面に、側壁を持つ『くの字滝20m』が華やかに登場!今までがうす暗かっただけに若々しい緑の中の白い水流がやけに華やかに見える。 |
谷の傾斜が増し、滝が出てくる。直登は無理なので右から巻く |
小滝を連ねた瀑流帯を詰めると二条の滝。易しい右手から越える |
濡れて黒光りする岩膚をくの字に走る白い水流、それを原生林の濃い緑が際立たせる・・・・鑑賞に値する立派な滝!くの字に折れる水流がいい!・・・これは濡れなきゃ損です。よく見ると落ち口直下に瀑心を横断するバンドがあり、そこがいけそうだ。滝下に入ると深い釜がある。右からへつりを試みるが不可能、仕方ないので右手草付の岩に這い上がるとうまいことにバンドがある。辿ると次第にルンゼ状になり瀑心を横断するバンドに出そうだ。ルンゼに入るとすぐシャワーを浴びる。水流の向こうは全く情報はないので、念のためザイルを出す。一歩登るごとに降りかかる水量は級数的に増えるが、気分は悪くない・・・そして・・一気に瀑心を越して右岸にでる、とバンドは続いていた。 皆さん、しっかりシャワーを浴びて右岸に到着・・・いや〜気持ちいいね! そのまま岩のルンゼを直上するが、浮石が少々有り、要注意である。滝頭に出て小休止。泳いだ後のような心地よさに満足! 『くの字滝』を越えると、上流は小滝、斜滝が続く。幅広5mは巻いたが、後はいづれも直登を愉しむ。やがて、両岸から切り立つ岩壁が迫り、チムニー状のゴルジュを形成、ソコを水路のごとく流れ落ちる『ルンゼ状斜滝30m』が展開する。 |
20m”くの字の滝”。水流にそっての突破は出来そうも無いが、落ち口直下のバンドが行けそうだ |
瀑心へ接近・・・一気に突破!ずぶ濡れだが、最高のシャワークライミング! |
それでは、向こう岸で会いましょう!・・・・Ein, Zwei, Drei ! |
ルンゼを直上、滝頭に出る | 幅広5mは、巻いた? | 釜から這い上がる |
愉しい斜滝が続く。いづれも直登し越えて行く |
『ルンゼ状斜滝30m』の登攀は、緩い傾斜のチムニー登りだが、水流に抗して進まねばならない。水量の多いときは当然、巻くことになると思うが、今日は見る限り何とかいけそうだ。下段の斜滝を越え、小さな釜はツッパリで行くとルンゼに入る。ルンゼ内は適当にホールド、スタンスがあるので、ツッパリを交えながら中間まで登る。丁度、ルンゼ内に釜が有り安定したスタンスが得られる。水流左手のスラブの端に残置ピンが有り、一人そちらに上がる。ここでザイルを出し、ルンゼの直登を試みる。 ルンゼ内の釜を大きくまたぎ激しい水流に手を入れればしっかりしたチョックストーンがある。それをつかみ強引に競りあがると落ち口右手のコブ岩下に出る。ここに残置ピンあり。早速、ビレイを取る・・・本当にほしいところにピンが有りほっとする。後2mほどだが、水流に沿っていかねばならない。右手ホールドは注意していたが、不用意に踏み出した左足がスリップ!2mほど滑り落ちてしまう。おっとヤバイ!ヤバイ!・・・登り返し、今度は注意してクリア、滝頭にでて上部のブッシュにザイルフィックスする。 後続は、左手スラブから水心に移りコブ岩の左から越えるが、上部から見るとスラブのほうが難しそうだ。 少し時間がかかったが、全員滝頭に出て小休止。この滝で全身シャワーは2回目、今日はシャワーデーのようだ。 ルンゼ状斜滝30mを越えると、斜滝、小滝がいくつか続く・・・・・まるで、次の大滝まで余韻を持続させるための仕掛け?のようなものだ。丁寧に無理せぬように越していけば、出ました〜!『悪相の20m滝』が・・・・・『くの字滝』よりは貧相? |
水路を遡上するような登攀 | ホールド、スタンスを丁寧に拾って登る |
コブ岩の左、水流に沿って越える | プルージックビレイで登攀 |
難しそうな右岸のスラブを登る | スラブから水心に移り コブ岩の左から越える |
まるで、次の大滝まで余韻を持続させるための仕掛け?のような小滝、斜滝が続く |
飛沫をあげる釜を持つ20mの滝は一見すると・・・巻きましょう、といいたくなるが、この滝もよく見ると中段にバンドがある。釜にはいり右手から取り付くとバンドまで比較的容易にあがれる。見ると滝頭からの水流がすべてバンドに当たり砕け散っている。技術的には何の問題もなく『歩く』だけだが、半端なシャワーじゃすまない。ここを渡らなければ上流にいけないので、イチッ、ニイッ、サンで駆け抜ける・・・・・・勿論、速さには関係なく全身ずぶ濡れ!だか、気分は、爽やか!さっぱり! しかしこのバンドは、泥と落ち葉の詰まるルンゼに吸収されてしまう。従って、次はルンゼを登らねばならない。下方を覗くと滝の取り付きまでストレートに切れ落ちている。ほんの数mだが、切られた枯れ木しか手がかりが無く、足元定かでないのでザイルを出す。上部は木の根がありそれを伝う。 20mを越えると、気持ちのいいナメ滝風の小滝が続く。なかなか気分のいい所だ。やがて谷はせばまりその間に滝が落ちている。越えると更に小滝が続くが、しばらくで谷は静かになりゴーロ帯にはいる。これで終わりかと見上げると、すぐ上流に滝が見えてくる。 10m斜滝は右手から越え、続く緩い斜滝を越えると大岩を積み重ねたようなハングした滝に出る。 |
岸壁に囲まれた20mの滝。一見いけそうも無いがよく見ると 中間にバンドがある。右手から取り付く |
本日3回目の本格?シャワークライミング! 長居無用、一気に駆け抜けるべし! |
泥と落ち葉の詰まったルンゼを登る。ほんの数mだが 念のためザイルを出す。上部は、木の根を伝う |
気持ちのいいナメ滝風の小滝が続く。 なかなか気持ちのいい所だ(写真上、下) |
谷は狭まり、大まかな小滝が続く・・・・面倒くさがらず丁寧にいきましょう |
谷は静かになりゴーロ帯にはいるが、すぐ上流に滝が見えてくる |
10m斜滝。中間から右手を越える | 容易な斜滝が続く |
12mのハングした滝が行く手を阻む。濡れて鈍く光る大岩を積み重ねたような滝で、爽やか感は無く少し陰湿!しかし、この辺りは周りが明るく開けているので、目をほかに移せば陰湿感はすぐ消失する。右も左も巻けそうだが、右をとる。少し倒木の多いのが気になるが、苔むす岩と緑豊かな自然林が愉しめ目にはやさしい風景が広がる。 |
濡れて鈍く光る大岩を積み重ねたような 12mのハングした滝。 どちらからでも巻けるが、 右手から巻く。 あたりは倒木の多いのが気になるが、 苔むす岩と緑豊かな自然林が愉しめる |
登れそうな右手に取り付く。上部はシャワー、 最後の乗り越しがいやらしいので右に逃げる |
20m斜滝、上部はとい状。 下部の1/3ほど登って右から巻く |
20m滝を巻いて越せばほぼあたりは源流の様相、詰めが急傾斜となり緊張する奥岳渓谷とは違い、斜度は緩やかで広く開けて明るい。遡行図でも滝記号は無く実質的な遡行は終了である。谷の水流は次第に細くなる。のんびりと倒木を越していけばやがて二俣に出る。時刻は、11:25、標高は、およそ1400m。残りは、250m、1時間弱で登山道に出そうだ。右俣は南に向かい僅かに水流があるが、左は、涸れ谷で、南東に向っている。もう水流はなさそうなので小休止を兼ねて靴を履き替える。 |
源流の様相、もう滝はなさそうだ。倒木を越えていけば二俣(右写真)に出る。 標高はおよそ1400m。あと200mで終了である |
下山は、右俣を辿るほうが早いが、久しぶりの祖母山なので本谷の山頂を踏んで下山しようと思う。又、資料でも左を行けば本谷山山頂近くに出る、とあるので、その通りに行ってみることにする。しばらくは涸谷を行くが倒木がうるさいので、笹の獣道を行く。まるでヒトが通ったみたいによくついている。しかしケモノとヒトは身長?が違うのでいくらかササは分けねばならない・・・・どちらかというと涸谷が楽だ、というので又谷に戻る。詰めればしばらくで涸れ谷は終了。あとは進路を南にとって適当にササ薮をこいで行けば、登山道に出る。時刻は、12:20、二俣から約40分かかった。 |
左俣をとる。涸谷を詰めると次第に細くなりやがてヤブにきえる。 たいしたヤブこぎもなく登山道に出る(右写真) |
登山道を右に取れば、すぐ水場の標識。右下すぐの所にある。しかし水量は少なく秋口には涸れそうだ。すぐ横に、テント1張り分のヤブがはらわれている。水を補給し、ランチタイムにする。 ここからは、登山道を外れ右の急傾斜の尾根を下る。急だがヤブはまったく無い。急な尾根をブッシュにつかまりながら下降すると、右手から小沢、左手からも小沢が迫り、これらの沢を分かつ尾根を下降する事になる。ブッシュは途切れないが立ち枯れのブッシュも多く、緑の葉があること、ゆすってグラグラしないこと、など確認しながらつかまねば急なだけに危険である。下るほどに急になり、岩場も出てくる。巻いたり直下降すれば最後は二俣に出る。二俣のすぐ先が尾平越トンネルに通ずる車道である。最後は二俣に出る手前はザイル必要。 |
ブナ広場到着。小休止しましょう | 下降開始、少し左斜方に下降する | 車道に出る。汚れを沢水で落とす |
沢で泥を落とし洗顔、少しだけ小奇麗になったところでもう一下り。今度は車道を歩く。しばらく行くと傾方面に向う車道が方向を尾平方面に大きくかえるヘヤピンカーブに出る。ここで車道から外れ右手植林帯にはいる。涸れ沢に沿って下ると、砂防堤が現れ、すぐ下が林道である。右に行けばクマガ谷右俣を横切り、続いて今日の左俣(本谷)を横切る。荒れた林道を進めば、イボシ谷方面からの最近舗装された林道に出る。左にとればしばらくで駐車地点に出る。 先週の四国:伊予富士谷の印象が強く残っているせいか、少し物足りないような気がするクマガ谷左俣(本谷)であった。 しかし滝数はおおく、今日はシャワーたっぷり愉しめる遡行になった。夏はやはり谷(沢)がいいですねえ・・・・・皆さん、お疲れ様でした。 帰途中に温泉が無いので入渓した橋のたもとで行水して帰北の途につきました。 |
ヘヤピンカーブから植林帯ヘ | 砂防堤の下の林道にでる | 今日遡行したの左俣(本谷)通過 |
(Reported by Y.Kubo Photo presented by S.Okamura)