西中国山地:太田川水系大谷右俣〜十方山 【2004.04.11】 |
■日中の気温が20℃以上になる日が続くようになった。シャワーかかるのはまだ冷たいだろうが、水につかる程度なら・・・ということでお誘いしたら常連のカメラマン?が参加希望。計2名で出かけることにする。さて何処に行くか? ■目的地の条件:あまり難しくない、遡行時間:4〜5時間程度、明るく開放的,、終了後のヤブ漕ぎが殆どない、できればピークに突き上げる、しかも下山が容易(登山道がある)、そして未知・・・勿論、日帰り可能・・・近場でそんな沢(谷)あるの? ■実はネ、あるんですよ・・・十方山に突き上げる太田川水系:『大谷右俣』! 以前から『西中国山地の沢』で下調べしておいた谷で、十方山(1318.9m)に直接突き上げる沢で、入渓地から山頂までの標高差は約800m。 さて、ほんとに身勝手な条件を満たしてくれるのかどうか?・・・ |
■ここは、西中国山地の一角。『中国山地の西部、島根、山口、広島の3県10ヶ町村にまたがる山岳を中心とした区域』で、冠高原、三段峡、匹見峡、寂地峡などがある景勝地。 ■坂根谷、大谷、ニノ原谷、瀬戸谷の案内・遡行図については、『西中国山地の沢』(宇部山岳会 三浦 章著)を参照ください。 ■地形図:戸河内(1/25000) |
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今回のメンバー! |
4/11、6:00AM小倉出発、中国道吉和IC経由で、8:00十方山登山口駐車場到着。丁度、広島からこられた2人組が出発準備中。聞くと、ニノ原谷から十方山、とのこと。沢支度していないが?・・・話では濡れないでいけるらしい。 我々も、支度をし8:10出発。立岩貯水池脇の車道を行く。うす曇で風はなく池面は鏡面のようだ。車も通行せず人もいないので静寂そのもの、鳥のさえずりしか聞かれない。大谷取り付きである大谷橋に近づく。丁度、先ほどの2人が沢に入っていった。ニノ原谷と言っていたが・・・・大谷も濡れないで行けるのかな? |
第一金庫岩までは、ゴーロが続くが、時折小滝が現れる。庭園散歩と思えば愉しい遡行になる |
大谷橋8:45着。準備をして9:00橋の手前から入渓する。右岸に踏み跡があるので水流に入らなくともいいが、折角来たんだからできるだけ水流に沿っていく。 しばらくは、ゴーロが続く。今日は2人だから気が楽である。鮮やかな新緑はまだだが、芽吹く前の木々もなかなかいい。時々、小滝が現れる。かわいらしい釜を持つ滝も出てくる。右に左にかわして行く。さしづめ庭園散歩といったところか。 |
通称、第一金庫岩。形が立方体だからでしょうネ | 濡れないように、突っ張りでF6通過。 |
苔むした岩を縫って流れる水流を追えばやがて四角い大岩:『第一金庫岩』に出る。形が四角いから金庫?でしょうか。金庫岩の右手を伝えばF6、F7。透明で全くにごりもよどみもない清澄な水をたたえている小さな釜をへつる。滝はまだ濡れたくないので両足突っ張って越える。 やがて二俣。右俣をとると長〜いゴーロが続く。退屈なゴーロ歩きの中にいくつか小滝が現れる。苔むす岩を左右に配置した小滝はいかにも庭園風で、少し苛立ち気味の気持ちを落ち着かせる。40分ほどで『第二金庫岩』。この岩も大きい! |
日本庭園風の小滝が処々に現れるから気持ちが和む | 第二金庫岩。この岩も大きい! |
第二金庫岩の右を巻いていけば、斜滝(F11)。気温もあがってきたので少し濡れながら直登する。次はチョックストンのある滝(F12)で、2条になって落ちている。シャワーなしではいけそうもないのでパス。右の岩を巻いて越える。F12を巻いたところで小休止。時刻は、10:40.標高は、720-750m位。ここまで歩行距離では、十方山までの50%弱だが、標高差は30%弱。今から急になってきそうだ。 |
F11は、2段の斜滝。適度に濡れながら快適登行 | F12チョックストンのある滝。水流を避けて右壁を登る |
やがて本谷の核心部、ゴルジュである。困難さ、という意味ではなく、本谷を代表する『顔』としての核心である。、ゴルジュといえば暗く鬱陶しい、と思いがちだがこのゴルジュは両岸は切り立っているものの天空は大きく明るく開け、実に爽やかな気分に浸れる。顕著な滝も瀞もなく大岩で構成されている為通過も容易だ。丁度、中間辺りに大谷奥俣が、垂直の2段の滝(すだれ滝)を落として出合う。 このゴルジュが、大谷右俣の『顔』なら、すだれ滝は、このゴルジュの『顔』でしょう。すだれ滝あってのゴルジュ! 天空は開放して左右の空間を限定しているゴルジュで、聞こえるのはこだまする水音のみ、不思議と気持ちが落ち着きます。時間取れればこのあたりで大休止、お勧めです。 |
明るく開けたゴルジュに入る | 中間辺りで右岸から出合う『すだれ滝』 |
ゴルジュの最後は大岩。左の小滝もいけるが、右手の倒木伝いに簡単に越せる。ぬけると左右が広がる。やがて右手からガレ沢が出合う。左に水流を追う。この辺りから急に傾斜が増す。ゴーロ滝や小滝が続く。ラクに気をつけて、膝を打たぬよう丁寧に登行を続ける。 やがて、本谷の顕著な滝としては最後になる2段のF16。 |
ゴルジュの最後は大岩。倒木伝いに濡れずに越せる | ガレ沢を分けたあとはゴーロ滝、小滝の連続。 |
F16二段。右はヌルヌル、左を行けばシャワー | 上段はトユ状。簡単に越せる | 急なゴーロを行けば二俣。左が本流。 |
F16下段は、シャワーはやめ簡単な右の乾いたスラブを登り、上段はトユの左を行く。 上部はゴーロが続く。標高1050mあたりで顕著な二俣。右は水流僅か、左は本流。あと300m程であるが、水量はまだまだ豊富だ。左を取ると4mほどの小滝。右から直登、上流を見ると小滝の連続! 傾斜も相当ましてきたので注意して行く。右岸に残雪!そういえば先程から水が冷たくなったと感じていたが・・・融雪水のせいか。 小滝、小滝、・・・・・水量は減じない? 稜線が目に入る。まだ水がある・・・・とうとう水流を追いかけて十方山頂上部の笹の高原に出る。時刻は、12:25。遡行時間は約3時間半。のんびり遡行であったが、2人なので結構早かった。 |
このような小滝やナメが、標高差で200m以上連続する。滝登りの好きな方は愉しめます。 稜線近くなっても水量豊富 |
残雪の頂上部高原。さすがに眩い白さは失われていますが間違いなく雪! |
さすがに笹が邪魔になってきたので夏道探そうと右に水流を離れあがる・・ひょいと左を見れば広大な残雪! 残雪見て納得!豊富な水量のもとはこの融雪水でした。 山頂は左手なので、左手に渡り残雪を踏んで山頂を目指す。 山頂着は、12:45。 広大な笹の高原がぐるり360度広がる。標高が近い中国山地の山々が目線の高さに展開する。 心地よい気温、乾いた微風、空はすっかり晴れわたり、遮るものはなにもない広大で遠大な展望・・・・谷(沢)を辿って高原に出る今日のルートは、期待以上!。大満足です。 小休止して13:30下山開始。しばらくは笹の高原を行く。緩〜い傾斜の高原はを散策気分で下る。やがて樹林帯に入るが、このコース(南尾根)は急な下りはなく、しかも広い歩道で明瞭、迷うところ皆無。まだ若芽の木々を愉しみながら下降し、14:45登山口駐車場に到着。全行程、6時間半でした。 ザイルはj持参しましたが、出さずじまい。沢遊びを愉しみたい方にはお勧めです。 しかし、広島の方のお話では、頂上部高原には、マムシ!が多いとのこと、ヘビの好きな方?はもう少し暖かくなってからお訪ねください。 (Reported by Y.Kubo & Photo by K.Akazawa) ■温泉:露天風呂のある匹見峡温泉。吉和からR488で匹見町に入りましたが、標高1000m近い山越えルートで、せまくカーブの連続、特に山越えしたあと裏匹見峡辺りまでは離合所が少なくかなり神経使います。通行される方、御注意! |
山頂より西方、冠山、寂地山方面をのぞむ。白いのは残雪。 |