伯耆大山:北壁 八合尾根 【2004.03.14】

■先週の日曜日(3/7)は、豪雪で撤退せざるを得なかったため今日の好天は、実に嬉しい限りなのだが・・・月曜日から『暖かい好天』続きで先週の土日、あれほど降った雪はすっかり消失、岩肌が剥き出し!岩と雪とブルースカイ、写真にはもってこいの被写体になるんだろうが、このままでは大山の尾根筋や岩稜は、緩んだ岩、グズグズの雪、そしてブッシュの踏み抜き、等で快適登行から困難(危険)に変身するのは間違い無し!・・・・

『冷え込む好天』が我々の理想なんですが、そうはうまくいかないようですねえ。
このまま気温が下がらなければ、今日(3/14)が雪山大山のラストになりそうで残念!。もう1回ぐらい冬型になってほしい!・・・・。


林道から望む北壁(小屏風岩、滝沢、別山、八合尾根)

■今日は、雪山講習会。しかし元谷で終日雪訓ではおもしろくない。快晴で風もなし、気温も高い、といっためったにない好条件なので、比較的容易な尾根登行の実戦講習とする。


 初めての雪の大山となる川中、三栗両名、久しぶりの大山であるベテランの毛利さん、その他の常連さん、みんなが楽しめそうな尾根、ということで北壁入門ルート?:八合尾根に決定。

■3/13夕刻、車2台で北九州出発。23時過ぎには下山駐車場着。天候良好なので混みあっているのでは、と思っていたがテントビバークは我々だけでガランとしている。皆さん、ここよりも大山寺橋横の駐車場のほうを利用しているようである。

少々寝酒して24時には就寝する。高気圧のど真ん中、明日の好天は約束されているので安心して眠りにつく。3/14、快晴の朝を迎える。

【写真:7:20、駐車場を出発】

登山届を出し大神山神社経由で元谷に向かう。振り返ると夏道が朝日に輝いている、・・・がやはり3月だ、その輝きにはピリッ、とした冷気を感じない。もう山も春です!。

元谷にはいると北壁が眼前にフルスクリーンで迫る。白く輝く雪壁と黒々した岩壁の紋様が際だち、朝の斜光線で北壁に刻まれた雪稜、岩稜の彫りが深い。

墓場尾根は残雪僅か、別山の上部も黒々している。登攀条件としては今のほうが厳冬期より悪いかもしれない。今日の目標の八合尾根は、まだ十分雪稜の体裁を整えており楽しめそうだ!

八合尾根の登行ルートを目で追う。雪壁を登った下部岩壁下が取付、ルンゼを上り右岩の上部に出る。そこから左にトラバースし上部岩の左を登り尾根筋に出る。あとは尾根通しに忠実に詰める・・・少し傾斜があり痩せているようだ・・・上部の『黒い三角形』は、岩かそれともブッシュ?・・・ボロボロの岩なら右を巻いて上部にいけそう。あとはリッジ通しで夏道(稜線)にでることができそうだ。

本日のルートは、別山の右の尾根、夏道の八合目辺りに突き上げる八合尾根

 一部地表が顔を見せている大堰堤の上部を通過、取付に向かう。三栗、川中両名はトレースのない斜面でキックステップやらフラットフィッティングでの登行の講習を受けながら登る。すぐ近くを登行している8名ぐらいのガイド登山グループと分かれ八合尾根末端に向かう。彼らは、六合沢〜6合目のようである。

 取付着が9時20分。今日は、8人の1パーティとし、40m+30m=70mのザイルをフィックス、基本的にはカラビナケーブルで登行、必要に応じて更にザイルで確保することにする。準備をし9時半登攀開始。

行者谷を詰め、取り付きへ! 登行のトレーニングしながら取付きへ!

覚めるような青空に向かって登攀開始 1ピッチ目、急な雪壁の登行

 急な雪壁直上、岩壁下から右に回りこんでルンゼへ、そして右の尾根に上がりブッシュにフィックス。人数多いので大き目のレッジをつくる。後続、元気いっぱいで到着。次は雪壁にしっかりしたステップきりながら左斜上、別山沢側に出て直上し、フィックス。

 ここまでくると高度感が出てきて眺めがいい。少し上部に移動、傾斜が落ちたところで一本立てる。人数が多く、しかも一つのパーティで行動している為、時間がかかるが、その分ゆっくりでき愉しみながらいける。こういうのんびり登行もたまにはいいですネエ。

写真上:2ピッチ目、左斜上する
写真下:難しくないが慎重に!
リッジらしくなってきた
くつろぎタイム。今日は余裕があります!

 次から少し緊張感の出る痩せ尾根のピッチが続く!といっても尾根は細いものの左右の切れ込みが深くない為、ゾクッとするほどじゃない。でも雪山バリエーション初めての2人は少し緊張していたようです。

 2ピッチほど行くと、堰堤から眺めた『黒い三角形』が近づく。この三角形の手前のリッジが悪い!雪の消えたガラガラの幅の狭い尾根上に岩の大塊がちょこんとのっかかっており右も左も危険で巻けそうにない。仕方ないので少しバックし、右手の急傾斜の雪壁をトラバースすることにする。

 距離は20m程、傾斜は部分的には60°位だが雪は良く締まっており、快適に通過し、三角形の真下に出る。ここでフィックス、各人緊張した面持ちで通過。見上げると黒い三角形は岩の詰まったような岩壁である。



暖かい日が多かったため、少しブッシュがうるさいが快適な雪稜の登行が続く

大岩の乗っかったリッジ。右トラバースで通過
核心部?のトラバースを終えると
黒い三角形の岩壁
岩壁下を右斜上して尾根上に出る
(左)甲ヶ山、三鈷峰、宝珠尾根を望む。(右)小岩壁を越えると稜線は近い。

岩壁に取り付く。ルートは直登もしくは右斜上で5mほどだが、触る岩は殆ど動く。岩をボロボロ落としながら行けない事はないが・・・安全を考慮、一旦下降し雪壁を右斜上、岩壁の右リッジに出、直上し尾根上に出る。大塊の乗った尾根とこの岩場の通過は、気温が下がり氷結すれば問題のない箇所だろうと思うが、今日の状態ならここがこの尾根の核心部!。

見上げると稜線はすぐそこである。尾根は次第に広くなり、最後は雪壁ひと登りで稜線に出た。お疲れ様でした!到着は、13時20分、取付から4時間弱、駐車場から6時間の登行であった。


カメラが向くと
ついこぼれる笑み
最後はコンテで稜線へ
なかなか様になっていますねえ。

 下山は快速シリセードの計画であったので、小休止の後シリセードの準備にかかる。(といってもカッパを着用するだけですが)
夏道を七合目辺りまで下降、右手の急な沢に飛び込む。適正速度になるよう制動をかけて滑るが、それでも迫力満点のスピード!ほんの数分で行者谷出合い近くまで滑ってしまう。

 しばらく女性群を待ったが降りてくる気配がない。のども渇くので大山寺の食堂で合流する旨電話し先に下山する。(要するに、ビールを飲みたい一心なだけです)
15:00には食堂着、久しぶりに大山そば定食をいただく。

行者谷出合いまで一直線!
快適シリセードで一滑り
シリセードの終着点。続々到着。

 女性3名は、安全の為6合目まで下降、そこからチャレンジしたが、1名のピッケルがぶっ飛び制動不可能となりうつ伏せ状態で『滑落』!勿論停止したが、横たわっている所にハンサム?なスキーヤーが駆けつけ、優しく声をかけられた!・・・・が・・・・・やはり思いなおして自力で立ち上がりシリセードせず歩いて下降したとのこと。
 
 遅くなった女性群も15:40には食堂到着。本日の『山』は無事終了、参加者の皆さん、お疲れ様でした。

■主要装備:
 ザイル(40m30m15m各1、スノーバー×2、各人登攀具一式)

■参加者:
 三栗、川中、岡村M、毛利、岡村S、高木、赤澤、久保、以上8名

■帰北:神郷温泉18:30出発ー小倉着22:30〜22:50


(Reported by Y.Kubo & Ptoto presented by K.Akazawa, Y.Takaki)