祖母傾山系:クマガ谷右右俣遡行  2004.09.05

 嵐の仲間にはせっかちが多い?今回の目標は、実は『熊が谷本谷』、しかしながら実際に遡行したのは『熊が谷右俣』でした。理由は単純!、取り付きを間違ったからです。

 古祖母山〜障子岳〜黒金尾根!の周回ルート予定の女性群2名を尾平越トンネル駐車場まで送り1台はそこに駐車する。
 もう1台で下尾平に戻り、前回(04.06.29)同様,下尾平の広場(H:474m)に駐車する。身支度を調え7:40出発。すぐ入谷せず、谷の右岸の車道を上がる。民家を通り抜け上の林道に出て右折、すぐ熊が谷にかかる橋(H:530m)に出る。谷の左岸を少し進んだところから、7:50入谷する。

 本谷の出合(H:540m)は、橋のすぐ上流。しかし谷に入り左岸沿いに調子よく進んだため、あっという間に入谷直後にあった出合を通り過してしまいました!・・・・昨年は右・左俣と本谷の分岐をしっかり確認したんですが・・・すっかり忘れておりました・・・・・人間ですからネ、よくある話です。

 先人の記録の確認の為、沢登やっているわけではないし、取り違えたからといって、その山行が意味のないものになるわけでもない・・・ということで今回もしっかり右俣遡行、愉しみました。谷(沢)は、いつも新鮮な感動を与えてくれます。


クマガ谷右右俣遡行ルート概念図

※谷の名称を修正しました。(2006.08)本図の名称は、
2003.06当時の”祖母傾最新情報”のまま記載されています。


 ゴーロの谷を淡々と進む。15分足らずで上部の林道に出る。この林道は、地形図(1/25000)には記載されていない。昨年、イボシ谷から尾平越経由下山の時通った林道で、そうとう荒れている。流路を確保してコンクリートで固めただけの橋?がありそこで小休止。今日は天候曇りだが、湿度がやけに高く暑苦しい。もう汗タラタラである。5分ほど休憩し再度谷にはいる。

下尾平の空き地に駐車。 入谷後、15分足らずのゴーロ歩きで、上部の林道に出る
はじめは単調だが、しばらくで斜滝が現れる。水は透明度が 610mあたり。右から支流

 時折現れる斜滝を越えていくと、標高610mあたりで右から支流。さらに進むと谷は俄然水音で騒々しくなる。
 連瀑帯にはいると谷は一気に高度をあげる。『九州の沢と源流』では、滝記号が8ヶ記されている。下流から、5m、4m、18m幅広、7m、ゆるい20m(他資料では2段20m)、5m、12m、15mである。連瀑帯を遡行している時は遡ることに夢中になるので、既存の遡行図と照らし合わせたりなぞなかなかしないものだ。(それは君等だけだ!・・・・ソウデス、スミマセン) 従って、小落差の滝や容易に越せる滝は記憶が薄〜い。

 ここの連瀑帯で、”見て、登って、登れて”良し!は、18m幅広斜滝(幅いっぱいに流れるストレートな水流が綺麗!)、12m(2条で大柄、外傾気味階段状で快適登行!)、15m(多段で流れ方向が変化する日本庭園風。)でしょうか。見所、愉しみ所、いっぱいなのに所要時間は、40分足らず!もっとゆっくりしたらいいんですが、ねえ・・・・(他パーティの記録もそうですヨ!参考まで)

そろそろ連瀑帯、気分が高まる 連瀑帯にはいる。はしゃぎ過ぎてはいけません!慎重に、丁寧にいきましょう

 右、左と適当に動き回って5m、4mを越えると、18m斜滝。まるで人工の堰堤から流れ出るようなストレートな水流を落としている。すっきりしてなかなか綺麗な流れである。白い流れを右に見ながらカンテ状の左壁を登る。この滝を越えると緩傾斜の滝が続く。傾斜は緩やかだが、滝心は登れないので水流沿いに登る。水流沿いは意外とホールド、スタンスが豊富である。見上げると奥に12mの滝が望める

18mの斜滝。直登は不可。左壁を越える 写真最奥:12mまで、斜滝の3−4連瀑
緩〜い斜滝だが、滝心は不可。
右壁を越える。奥に12m。
階段状12m。前回は左を登ったが
今日は中央突破!

 階段状12mの滝。一見易しそうだが、少し外傾気味なので慎重に登りやすいところをつめる。昨年は、滝中央に近づけないほどの大水量だった為、左手のカンテ状岩稜をつめている。ザイル出したので多分カンテラインのほうが難しい?かな。

 12mを越えると多段状の15mの滝。ここも飛沫を全身で受けながら左壁を登る。これを越えると左から左俣が20mの滝を落として出合う。標高は、およそ820m、時刻は、9:10である。

シャワーを浴びる15mの登行 二俣手前の15mの滝。水流左に沿って登る。
飛沫を浴びて快適!
左俣の出合(写真:左)をトラバースして右俣出合の滝(写真:右)の左を越え左俣にはいる


一端、左俣を少し登りトラバースして右俣出合の滝を左から越える。すぐ上流に短いゴルジュがあり斜滝が見える。釜を持つ10mほどの滝で左はいけそうだが、あえて右のへつりを試みるが・・・ツルツルで釜にドボ〜ン。仕方ないので易しい右岸に転じ滝心をシャワークライミング・・・気持ちいい〜!

15m:右をへつるがあえなく敗退!→左から取り付き水心へ移動、シャワーを愉しむ

2段23m。通潤橋から放水しているかのようだ

谷は左に折れると、2段23mが勢いよく小さな曲率の放物線を描いて水を放っている。

 まるで通潤橋の放流口から放水しているかのようだ。
近づくと下部がハングしており直登は不可、左を小さく巻く。
 
 急だが適当な間隔でブッシュがある。2段まとめて小さく巻いて谷に戻る。時刻は、9:25、ここでレスト。


【写真:2段23mを巻いたところで小休止】

 10分程休んだ後出発。斜滝を2つほど越え、さらに樹木が頭上を覆い薄暗い緩傾斜の樋状の滝をいくと、前方がライトに照らし出された舞台のように明るい。暗がりから抜けると天空が開け清流を程よい速度で流すナメ斜滝が現れる。開けた谷はやはり気分がいい。しかも目前の滝は易しそうだ。



小さな釜のある30m斜滝は、右手水際をいく。越えるとすぐ釜を持つ20m、左手からホールドを拾い、一段上がる。上部は傾斜が緩くなるが、ホールド、スタンスに乏しい。左手草付きに逃げて越えると右手から支流。本流は左である。

【写真:休憩後、出発。斜滝を2つほど越える】
樋状の滝の上流は明るく開ける 30mは右手を、次の20mは
左から越え上部で左手草付きへ

 しばらくで階段状のナメ滝。先ほどよりは明るさはないが、原生林に囲まれてのジャブジャブ歩き、気分はまさに水遊びである。緩い傾斜のチョックストン滝は突っ張りで越える。谷をまたぐのもいい気分である。谷はゴーロに変わり、やがて右から枝沢が出合う。手前の枝沢はガレで水流僅か、次は小沢で奥に滝を落としているのが見える。標高は、1060m位、時刻は、10:00である。急ぐ旅じゃない、小休止!
 最近は、スタミナにイエロー信号?休止回数が多い。


本流は、カズラや流木で少しうるさい。ひょっとしたらもう終わりが近いのでは?と思わせるようなうるささである。しかし、それも少しの間で、谷は又すっきり、緩傾斜の小滝が続く。
小滝は、何も考えることはない、イケイケどんどんの世界だ・・・・・気分よく行くと・・・・でました!でました!右俣最大の大滝出現!


階段状ナメを行く。水量はいい具合で、赤い岩肌を浸してさらさら流れる 谷をまたぎ
突っ張りで越える

右から枝沢2本出合う。
本流は葛や流木がうるさい正面である
緩傾斜のナメ状斜滝が続く

 2段30mの大滝出現!右俣最大の滝である。水流の中心は登れそうにないが、水流右手がいけそうだ。取り付くとホールド、スタンスは適当に有り水しぶきを浴びながら攀じ登る。上段は、岩がぬめっており危険なので無理をせず右手草付きを登る。
 30m大滝を越えると次は7mの斜滝。水線の左をあがり上部で右に移動し直上。細かいスタンスを丁寧に拾いながら遡るのはなかなか愉しいものである。

7mを越えると次は23m。これもなかなかの迫力である。これはもろにシャワーが愉しめそうだ。
 水流の右手から上がり中段に出る。ここから水流をくぐって左へトラバース、勿論全身ずぶぬれ・・・気分は最高です!

 左手水流沿いにあがればこの23m滝は終了。さらに進んでハング滝を右から越えると全体的に傾斜も緩み谷の終わりが近い。標高1150m付近で小さな二俣。右をとると水量はさらに細くなる。辺りは苔むす岩が多くなりもう源流の様相、小斜滝や樋状滝を越えていくと次第に水が涸れる。


2段30mの大滝。
このクラスになるとさすがに迫力がある
大滝の飛沫を浴びながら
右手水流沿いに登る

7mの斜滝:左側→右へ
7m斜滝:上部の登り 23mの滝:中段では水流をくぐって
過激なシャワーを浴びる

1150mで小さな二俣。
右を行く
水流は細くなり
源流の様相
水流は涸れ
苔むす岩のガレをいく

 水流が涸れ、苔むすガレ場に変わる。本谷山周辺の谷は、ツメが緩傾斜の苔むすガレになり、騒々しい谷からの開放感を味わえ穏やかな気分にさせる雰囲気十分である。しばらく歩いて標高:1250mあたりで終了とする。時刻は10:55、ここで談笑しながらランチタイム。

 腹ごしらえして、11:18腰をあげる。ガレをつめササの尾根筋にあがる。この谷は入渓者が多いのか、割としっかりした踏み跡がある。踏み跡は、岩場をうまく巻きながら右斜上していく。時たま、スズタケの濃い所があるものの楽なやぶこぎである。
 20分ほどで縦走路に出る。時刻は、11:38、下尾平からおよそ4時間の旅であった。一寸短いような気もするが・・・まあしっかり遊んだから、ヨシ!としよう。


 小休止の後、尾平越経由で下山の途につく。ブナ広場着が12:10。なにやら人声がする。次第に女性の声が近づいてくる。登山者がいるようだ・・・・・あれっ!嵐の2人じゃないか!・・・・なんでこんなとこにいるん?・・・・みんなも本谷に行ったにしてはえらい早いんじゃないの?・・・まあ、いいじゃないですか。離れ離れになって探し回らなくて済んだんだから・・・・ということで期せずして7名全員が早めに集結、一緒に尾平越トンネル駐車場まで下山したのでありました。

この辺りで終了、ランチタイム 稜線まで20分ほどの
楽なヤブ漕ぎ
稜線の縦走路に出る

 今日は前線が近くにあり、ベースは曇り空だったが、時たま青空が見え日が射したり、突然小雨になったり、雷鳴がとどろいたり、めまぐるしく変化した半日だった。しかしそれが気にならないほど愉しませてもらった。又、右俣は左俣よりは流程が短いが、20mを超す大滝が適度に配置され、シャワータップリの変化に富んだ遡行になったと思う。参加者の皆さん、お疲れ様でした。次回は、間違いなく本谷に行きましょう!
(Reported by Y.Kubo. Photo by K.Akazawa & Y.Takaki)


■参加者:豊田、高木、橋本、赤澤、久保、以上沢登組5名 田村、鉄井、以上ハイク組2名 計7名
■温泉:長湯温泉