尾鈴山系:甘茶谷左俣〜尾鈴山 【2004.08.22】

■『清流の谷』尾鈴は、北九州からの日帰り圏で最遠の地であるにもかかわらず仲間内では人気がある。今回の沢登りも6名参加することになった。尾鈴瀑布群は、矢研谷、欅谷、甘茶谷に点在し、見ごたえある滝を愉しむことができる。昨年、台風直後に甘茶谷を訪ねたが、大増水の為下流部はパスし標高:670mの二俣から入谷した。今回は、昨年パスした甘茶谷の瀑布群を愉しむ為キャンプ場から入谷、二俣〜左俣(本流)を遡行することにする。

★参考HP:『甘茶谷左俣遡行〜尾鈴山』(自然派マガジン山旅人の雑記帖)
  写真は、S.Hashimotoさん:いい写真がいっぱい掲載されています。同時にご覧ください。





■8/21、15:00北九州出発、20:45尾鈴:クエントウキャンプ場入口の駐車場(トイレ有り)到着。移動時間は6時間程度!ジリジリしか進まない道路整備だが移動時間は確実に短縮されてきている!・・・嬉しいことです。

 さらに嬉しいことに今回は水流渓人御夫妻(西都山岳会)に焼酎と氷を差し入れていただきました。この氷、そんじょそこらで手にはいるものではなく、自ら落水の滝(大崩:鬼の目山)の氷瀑から掻き取り保存されていた正真正銘の天然氷、・・・いや〜山のエキスいっぱいの天然氷に注がれた入手困難なプレミアム焼酎のオンザロック、その味・・・格別!でした。

 2時間ほどの短い時間でしたが、愉しく歓談させていただき有り難うございました。
水流渓人さんの話では、音から察するに水量多目?、とのこと・・・・・何処から入谷するかは明日見ての判断とする。


■8/22、天候は曇りだが雨の心配はなさそうだ。林道を少し進みキャンプ場の駐車場へ移動、支度して6:55出発。

 キャンプ場への橋のすぐ上流に堰堤がある。左岸を行き堰堤を越えた所から入谷する。驚くほどの水量ではない。

 入谷すると早速、青緑のクリスタルガラスのように澄んだ淵に出会う。小さい沢ならいざ知らず、これほど大量の清流が谷幅いっぱい流れていることに魅せられる。ここは右から小さく巻く。

 下流部は大岩がゴロゴロしており、乗り越しや廻り込みに精を出さねばならない。又、谷幅が広いのでルート選定の自由度は大きいが水量が多く流れも早いので渡渉にも気を使う。

 しばらくいくと矢研谷方面への林道が通るコンクリート橋に出る。

 丁度橋下がゴルジュになっており泳ぐ意外は通過困難。一旦林道に出て橋を渡り谷に下りる。おりた所で時刻は、7:50。1時間ほどたったのでひとまず小休止。


大岩の乗り越し、廻り込み、渡渉に精出す下流部。谷幅が広くスケールが大きい
大岩を伝うように渡渉を繰り返す コンクリート橋が見える 橋下は通過不能

 10分ほど休憩の後、スタート。地形図では、この橋から上の二俣までの間に『瀑布群』の記載がある。ゴーロの谷を遡っていくと美しい滝群が現れる。
大きな釜を持ち、扇形で末広がり状に水を流す美しい滝は右水際を散歩気分で登る。谷は大きく開けて明るく爽快な気分に浸れる。

 ゴーロの小滝を2−3越せばほぼ谷全体に広がる幅広の滝だ。『次郎四郎の滝』と称されているのはこの滝?だと思う。ここは中央部の岩稜をシャワーを浴びてフリーでらくらく越せる。本流部は豪快に清流を釜に落としており、立ち上る水煙にまみれて汗なんぞぶっ飛んでしまう。


甘茶谷の瀑布群を代表する滝?。右は『次郎四郎の滝』?中央をフリーのシャワーで気持ちよく突破する

大ナメ出現!ゆるい曲率のスプーンでえぐれた岩床を清流が程よい速度で流れる。清い流れを見て思わず座り込んでしまう・・・・・気持ちいい〜。
ミナサ〜ン、いらっしゃ〜い!・・・・全員で記念撮影。
 愉しいナメが終わると大岩のゴーロがしばらく続き、そしてソーメンを流しているようなナメ斜滝、これもきれいだ!その上部はまたまたナメである。

地形図の甘茶谷に記されている『尾鈴瀑布群』は、下流より次郎四郎の滝、太郎滝、えのは滝、千畳滝・・・等々名称がつけられているようであるが・・・・現時点では次郎四郎の滝以外はわからない。次回にでも林道の看板から下りて確認しようと思う。

ケヤキ谷や矢研谷の滝ほどのスケールはないが、大きく明るい谷のナメを含む一連の滝群は、遡行者を愉しくさせること請合いです。

明るいナメが続く ナメの斜滝を越えると又、ナメ出現
ここで本日のメンバー紹介。左から、赤澤、高木、原田、久保、橋本、豊田

 広大なナメを過ぎると谷幅は幾分狭くなり、ゴーロや淵が現れる。次第に左右から樹林が迫ってくると小さなゴルジュ。ここは右から越える。さらに2条の滝の中央岩稜を越えると堰堤が現れる。時刻は9:30、本日の行程のおよそ半分終了、小休止する。


ゴルジュは右を巻いて通過 2条の滝。中央の岩稜をフリーで越える 堰堤を前にして何見てるの?

 堰堤を右から越えると右俣(万吉谷)が出合う二俣(H:670m)である。昨年6月はここから入谷したが、左岸への渡渉に少々手間取るくらいの水量だった。今回はジャブジャブ歩ける程度、右俣(万吉谷)の出合いも静かでひっそりした感じだ。

これでも水量多目?なら通常はもっと静かで、本当は沢靴はいて歩き回る谷ではなく、鑑賞する谷なのかもしれません。
ウロウロ、ジャブジャブしたかったら2−3日雨が降った後がいいですよ!


H:670mの二俣。右が万吉谷(右俣) ひっそりした万吉谷出合 左俣(本流)を行く

  時刻は、9:45、入谷から3時間ほど経過。”水遊び”だったらちょうどいい引け際の気分!だが今日は今からが本番。まだH:670m、あと700m以上ある、皆さん、ガンバリマショウ!気合入れなおして本流である左俣にはいる。
 左俣にはいると岩屑で荒れた感じになるが、しばらくで小滝が現れる。小滝といってもちゃんと一人前に釜をもっている。右からあるいは左から越えると頭上にコンクリート橋が現れる。

左俣(本流)にはいる。釜を持つ小滝を越えていくとコンクリート橋が現れる

 尾鈴山登山口に行く林道が通るコンクリート橋をくぐる。橋上から見える甘茶滝が次に控えている。 

 右からヘツリ気味に巻くと上流は釜を持つ斜滝が続く。巻くもよし、へツッて水際を遡るもよし、勿論泳いでもOK、選択肢は盛りだくさん、お好み次第である。

 谷(沢)を遡行している時は、遡上する鮭みたいなもので、ひたすら上流へ行くことだけ考えればいい。こんな単純作業、大好きですネエ。
橋からも見える”甘茶滝” 水中のスタンスを拾うのがコツ!

手頃サイズの小滝が続く。へつれない場合は巻くしかない。右は、泳いで取り付くが自分の体を挙げ切れずおしくも敗退!

 連瀑帯を抜けると核心部のゴルジュ。左岸を簡単に巻けるが、折角だ、アタック!最奥までヘツリでいくが最後がいやらしそう。
無理することはないので少し戻り直上して巻く。

次の釜は左から取り付く。一見難しそうだが水中のスタンスに乗り右手いっぱい伸ばせばうまい具合にホールドがある。斜上し落ち口に抜ける。


右岸をヘツリ気味に巻いて落ち口に抜ける
左岸をヘツリ、アタックしたが最奥の壁が登れず側壁を攀じ登り巻く 2条の滝。右は直瀑、左は2段

 滝は続く。次は谷幅いっぱいの岸壁に流れる2条の滝で右は直瀑、左は2段、左の水流よりの岸壁を越える。まだまだ続く。次の斜滝は水流の右水際を抜けるが、落ち口の水流が早く流されそうになる。水流を大きく跨いで思い切って上がりこむ。水量が通常なら何の問題もないところだろう。続くナメはジャブジャブ、好みで登ろう。


2条の滝は左滝に沿って岩を登る この斜滝、落ち口注意! 気持ちのよいナメ滝は思い思いに!

 ゴルジュ出現!短いが形はしっかりゴルジュだ。釜を持つ6mが奥に控えている。ここはいけそう。右をヘツリ釜をつめる。かぶった岩のすそを這うように行けばがっちりホールド!後は階段状の壁を越えて落ち口へ。ここは読みどおりいけて快適!

 次は適当にシャワー浴びながら登る3段の階段状斜滝。段状で記念撮影向き?というわけじゃないが撮ったらそこそこいける。

短いゴルジュ。読みどおり快適に通過 シャワーが気持良い、3段の階段状斜滝

 斜滝を越えると、左から支流あり。標高は880m近辺。

見ると緑濃い自然林を縫って、遡れば愉しそうな小滝が連なって流れ下っている。

 支流もよさそうだが尾鈴が遠くなる。迷わず右をとる。ここからあと標高差:50m足らずで、又二俣になるはずだ。


 右を行くとナメ、さらに進むと釜を持つ6mの滝。逆層気味だが右に廻り込み水際を登る上部がぬめって少しいやらしい。

 さらにCS8m、ここは直登不可なので右手のルンゼ状の濡れ壁を登る。難しくないが、ここは釜がないので落ちればアウト、慎重に!

H:880付近の二俣。左支流も小滝の連瀑 左の支流

逆層気味だが右水際を登る CS8m、右手濡れ壁を注意して登る H:940mの二俣。左が本流だが、右をとる

 CS8mを越えると、H:940mの二俣に出る。時刻は、11:20、先ほど休憩したので休まず進む。

 左のほうが深く本流だが、尾鈴山へ近い右をとることにする。

 ここまでくるとすでに源流の様相。あれほどあった水量はいつの間にか細くなり、岩は小粒に、そして岩肌はもろくなってくる。しかし次第に傾斜が増し小滝は続く。
 源流域は、どこの谷(沢)でもそうだが、豪快さはないものの小滝が続き結構愉しい。


尾鈴山の近い右の支流へはいる。しばらくは小滝が続くが快適に越せる

 H:1100m付近で右から10m以上はある立派な滝が出合う。ここまでくればどちらとってもよさそうだが、滝の方角が北北西〜北。地形図と照合すると尾鈴山頂への距離は短いが、藪漕ぎが長くなる。谷は長くていいが藪は短いほうがいいので早く縦走路に出る方角:西の左俣をとる。

 H:1100mを過ぎると水流はさらに細く、谷も狭くルンゼ状になる。H:1150m付近で水流は涸れる。時刻は12:05、大休止して靴を履き替える。うまくルーと取れれば稜線は、1270-80mくらいだからのこり100mちょっとである。たいした藪漕ぎにならずに済みそうである。ついでに腹ごしらえして12:20スタート。

 水流のなくなったガレをつめる。岩屑が細かくなり歩きづらくなった地点で左手樹林帯に上がる。ガレのルンゼ沿いに上がりガレが消える頃右手にトラバースそのまま右斜上する。『猛烈なヤブ漕ぎ』(資料)を覚悟し皮手袋まで準備してきたが、期待に反して下草も無いスカスカの樹林帯、足の疲労に耐える以外の苦難はなく楽々12:40平坦な縦走路に出る。

H:1280mだから尾根筋の最も低い地点に出たようだ。

小休止。ビール回し飲みして、12:48尾鈴山山頂へ向け出発、13:00山頂着。

H:1100mで右から出合う滝 源頭のガレを詰める 尾鈴山頂着は、13:00でした。

再度小休止、腹ごしらえして13:20下山にかかる。見通しのきかない登山道だが退屈しないように『合』標識が設置されている。急坂を淡々と下り最後に、整備された階段を下れば荒れた林道に出る。ここが尾鈴山(甘茶谷)登山口。下山は右、すぐに先程通過した甘茶滝が見えるコンクリート橋に出る。林道の三叉路着が14:00、あと40分は歩かねばならない。15分ほど小休止、気分入れ替えて駐車場目指し林道を下る。

途中右手に、林道までぬらすほどのシャワーを落とすあじさいの滝が出合う。この水量だからやはり今日は多目!なのでしょう。ともあれ疲労しきった足を激励しながら歩くこと45分、15:00キャンプ場駐車場に到着。本日はこれで終了!およそ8時間の行程、参加者の皆さん、お疲れ様でした。
(Reported by Y.Kubo & Photo by K.Akazawa)

★清流には目を奪われるが、その透明度と清涼感をさらに高める滝(ナメ滝、斜滝)が多い。釜を持つ滝が多く、ヘツリがおもしろい。落ちても安心!ヘツリがいやなら簡単に巻けるので初心者含めて好みに応じて愉しめる手ごろな谷だと思います。但し、キャンプ場から入谷すると行動時間が長くなり、それなりの気合とスタミナが必要です。

■参加者:豊田、原田、高木、赤澤、橋本、久保、以上6名
■装備:ザイル(30m×1、15m×1)携行、15m2回使用。その他、沢装備1式