石鎚山南面:面河本谷〜南沢〜天狗岳 【2004.07.24】

昨年は、南沢の予定を急遽変更、北沢遡行とした。しかし下調べ不十分だったこともあり行程の半分以上が藪分けとなり必ずしも満足の行くものにならなかった。今年は晴天続きで沢の状態もよさそうなので、計画通り本谷〜南沢〜石鎚山を目標に出かけることにした。

■7/23、19:00小倉出発。途中食事して、柳井発22:50のフェリーに乗る。乗船する車も客も少ない。7/24、01:10三津浜港着、33号線経由で面河着が02:40。石鎚スカイラインゲート横の無料駐車場で仮眠を取る。

 5時半過ぎ起床、国民宿舎の近く亀腹の駐車場まで移動、身支度を整える。アブが多くまつわりつくので道路にでて着替える。支度していたら釣り人2名が到着。相手も当然谷だろうから、トラブルは起こしたくないので急いで支度する。
6:10、出発。晴天続きのせいか昨年より水量は少ない。夏休みに入ったばかりだからなのか人影なし。第1、第2キャンプ場も無人!

 遊歩道を進み、熊淵で橋を渡り左岸を進む。遊歩道はすぐ通行止めになるが、ロープをまたいでいけるところまで行く。虎ヶ淵をまいてしばらくで遊歩道は通行不能になる。6:40、ここで入谷する。

遊歩道が切れたところで入谷


10分ほどで準備するが、先程よりアブが多い。6:50出発。
水量が少なく、少々迫力不足ではあるが、白い大岩がゴロゴロする河原を右に左に行きやすいところを選んでのんびり歩く。白い岩をゆったり縫いながら流れる水流は何のよどみも濁りもなく透明で河床がくっきり!。今は白い岩と緑の原生林のコントラストが美しいが、紅葉の秋はもっと目を奪う鮮やかさに飾られるのだろう・・・・

先程から、まとわりつくアブの数が増加し、少々うるさくなってきた。停止すると一斉に”襲われる”ので休まないで歩くことにする。折角、”四国一”といわれる渓谷を探勝しているのにうるさいやつらだ!・・・・

金山谷出合を過ぎ、堰堤辺りまでは清流と白い大岩を愉しみながらの遡行・・・アブがいなけりゃネ!

赤味がかったナメの河床、清流・・・・しかしこの辺りからアブとの本格的な闘いが始まりました!

 残念なことに金山谷出合から番匠谷出合の間に2箇所の堰堤がある。谷の探勝者を拒むように立ちはだかる堰堤の為、谷の風景は台無しで、2箇所ともに堰堤の上流側は埋め尽くされ、水流は全くなく平凡な河原と化している。

 昔を知る人のトポには、”かつての花崗岩の谷の美しい面影はなくなった”・・”石鎚スカイラインと下流の取水堰の影響か?”とあるが・・・まあどうしても建設しなければならないワケがあったのでしょう。

 2箇所とも左に踏み跡があり簡単に巻ける。

 この頃になると、我々とアブとの闘いは、”激闘”!。更に数を増したアブはより攻撃的になり体中を射しまわる・・・停止して足許から胸まではたくとバタバタとアブが足許に落ちる・・・何回繰り返してもその数は減らない・・・こちらが停止しては狙われるのでできるだけ動き回る・・・アブが追いかける・・・逃げる・・・止まっては”殺戮”?・・・を繰り返す。谷を愉しむどころではないワ!

 このアブも谷筋から離れ巻き道のブッシュ帯に入ると少なくなる。まだ朝食を摂っていなかったので2つ目の堰堤の巻き道でとる。何とか一息つく。標高は920mくらい。8:25出発。

堰堤はあるものの、それでもまだ谷らしさは残っている。アブと闘いながら番匠谷出合を過ぎる。ここから犬吠谷出合辺りまでは河原が続く。
出合を過ぎるとすぐ魚止め滝。時刻は9:00、標高1000mを越える。少し気温が下がったようだ。アブの数もかなり少なくなり休憩が取れる程度になる。

小休止の後、左から魚止めの滝を巻く。ここから滝らしい滝はないが”本来の谷らしい谷”をしばらく行けば、9:30、標高およそ1120mの南沢出合着。右手に5mほどの滝で出合うが水流は殆どない。赤い識布がさがっている。

堰堤とその上流を除くとまだ谷らしさは残っている

犬吠谷出合 魚止めの滝。右岸を小さく巻いて通過

念のため、少し溯り左岸に出合う滝のないことを確認、少し休憩、9:50南沢遡行開始。出合の滝は右手を行く。資料では30分ほどで二俣とある。地形図でみると標高1250-1300m位か?

1200m過ぎた辺りで右手に滝が見える。支流?かもしれないが、二俣には違いないのでチェックの為右に入る。滝は15m強?トポでは17mとあるので可能性あり!、ということでフリーで登る。しかし、ルートがトポの表現とは違う。あらためて地形図を確認すると、方向が東により過ぎていること、細かく見ると二俣はここより50-100m上流のようだ、といことで間違い!懸垂下降で元に戻る。20分程時間をロスした。

急なゴーロをしばらく行くと顕著な二俣に出る。どちらも水流は無。高度計は、1250m。ここがトポにある二股、迷わず右を行く。


南沢出合。標高はおよそ1100m、赤い識布が下がっている 1200m過ぎ右に支流。
これはルートでない!
本流の二俣は右。水流無し

二俣を右にいくと行く手に15m(17m?)はある滝に出合う。水流は殆どない。左から取り付き中間で右に移りそのまま直上して抜ける。今日は水流が無いので沢全体が”岩場”だが、水流があれば、ここは滝!といえるんだろう・・・水流が無い今日は、易しくない壁?(=滝)、もしくは易しい壁?・・・・どちらかでしょう!

中沢もそうですが、石鎚南面は流域面積が限定されている為通常水流が少なく、特に晴天続きであれば水流は期待?できません。
沢登というより、比較的容易な岩登りと考えた方がいいかもしれません。


17mの滝。水流は僅かである。濡れた個所に注意! 左から取り付き、中段で右にトラバースし直上

2-3の4-5mの壁?を越えると本沢最大の大滝:25-30m。どこでも登れそうだが、近づくとそうでもない。中央のカンテかその右のジェードル?カンテはホールドが丸いのでガバのあるジェードルを強引にあがる。後は、丁寧に登れば滝上に出る。沢は上空が開け対面に面河尾根が望める高さに上がってきた。
大滝を越え、2-3の小壁を越えると、15mはありそうな立派な滝というか壁。水流のある所は難しそうなので右手のやさしいところを選んで直上する。難しくないが高さがあるだけに気を抜かないことが必要である。不注意でスリップしたらアウトですから。

南沢最大の滝。25mはありそうだ。 これも15m以上はある。中央右手を直上
全てフリーで通過できるが慎重に! 面河尾根(1400-1500m)が望めるようになる

更に、5-6mの小滝をいくつか越える。続いて広大なスラブが現れる。上空は更に明るくなり、ここまで来るともう沢ではない!このスラブは緩傾斜、好きなところどこでも登れそうだが、そうはいかない!全体的にホールドが丸っこくにカチッと決まらない。それでも下部はいいが上部に行くと結構高度感も出てくるので少々気持ちが悪くなる。

中央部から取り付き、次第に左へ!最後は左のブッシュとのコンタクトラインを登り、上部は再び中央へ。そして最終は濡れていた為右の笹に逃げる。スラブを越えると単調なガレだが、周りはお花で一杯になる。覚える気があまりないので花の名称は不明・・・ヤマアジサイくらいはわかりますが。


クラックのある滝、黒いヌルヌルの苔の生えた滝、等を超えると広〜くあかる〜いスラブに出る。

面河山(1525m)が対面に望める ようやくスラブが終了 スラブを越えるとお花畑!

南沢上流域のお花畑に咲く花。この他にも多数咲いています。


南沢は短い沢だが、結構変化に富んでいる。お花畑が終わるとまた岩登場!今度は樋状だ。50mくらいは樋の中を行く。傾斜は緩いが一部濡れているので注意していく。ここを越えると左手に南尾根の岩稜が望まれるようになり、南沢もいよいよ最終章に近い。ガレ場の急登は標高1600m辺りまで続くが、それからは笹原になる。


セッセ、セッセとひたすら登る。この樋状の滝、ゆうに50mはありそうだ

遠望する笹原は、よく手入れされた芝のようできれいだし歩き回ったら気持ちがよさそう!に思える。しかし実際に取り付くときついことこの上なし。笹丈は腰くらいで、所謂藪分けほどのうっとうしさはないが、足許が定まらない。おまけに傾斜がきついのでいきおい”手”で登ることになる。少しでも楽をしようと笹のくぼんだを行くが、上部に行くほどにガレは吸収され消失、最後は腕力頼りで尾根に這い上がる。

標高差、およそ200m、笹分け?30分、13:00に東稜(標高:1800m位)に出る。面河亀腹から7時間かかった。
東稜は冷たい風が吹き渡り疲れきった体に心地よい。本日の前半は、アブとの闘いだったが、後半の南沢は快適!であった。しかし、面河から詰めるとなるとかなり体力を要するコースであると思う。昨年は愛大小屋〜北沢転進でよかったのかもしれない・・・・・


南尾根の岩稜の向うに南尖峰の岩峰が屹立する 尾根(東稜)まで残り200m!

靴を履き替え、登攀具をしまい13:20、天狗岳に向けて出発。南尾根の頭を超えると、中沢終了点に出る。中沢も最後は笹分けである。
南尖峰を越え天狗岳にいたる東稜上部は潅木の生える痩せた岩尾根になっており、岩と潅木のバランスがすばらしく絵画的である。秋の東稜も是非訪れてみたいものだ。

南尖峰を越えると天狗岳の登山者の声で急に賑やかになる。ガスが濃く稜線からの眺望はない。
13:40天狗岳着。西日本の最高峰、さすがに登山者が多い。記念写真をとりすぐ出発、土小屋まで帰らねばならないので、弥山頂上小屋でアサヒビールを一飲、気合を入れる。面河に帰るバスは、土小屋発16:30だから慌てることはないのだが・・・・水では元気が出ません!

東稜から南沢源頭の笹原を俯瞰。右手は南尾根 南尖峰の岩峰


上:天狗岳

左:中沢の終了点。中沢も東稜に直上する。最後が笹分けになる。

東稜は、一般ルートではないが踏跡は明瞭。痩せた岩尾根であり多少腕力の要る個所もある。土小屋からの一般道からの取り付きも明瞭。秋の紅葉時がよさそうだ







ビールを飲んだら疲れが一気に足にくる。スチール製の階段で整備されすぎた巻き道を二の鎖小屋まで下降、そこから土小屋ぬ向かって、これまた整備された登山道を行く。なんと二の鎖小屋から土小屋間で4.6kmもある。我慢と辛抱の歩きで15:30土小屋に到着。およそ9時間半のお遊び!御疲れ様でした。

(Reported by Y.Kubo & Photo by K.Akazawa)


■追記

 25日は、法皇山脈の赤星山ハイクの予定でした。面河から移動、湯之谷温泉でアブの傷を癒し赤星山山麓に移動,
。翌朝、林道を登山口まで行く、ここまでは行く気満々!しかし登山口駐車場についた途端、又もやアブの大群が!・・・・2日続けてアブと闘う気力全くなく、車から出ることもなく尻尾巻いて帰北しました。ご報告まで!
アブは怖いですよ。
アブについて.K。Akazawaさんが調査しましたところ、”イヨシロオビアブ”だろう、とのことです。下記参照ください。

http://www.city.nagoya.jp/10eisei/ngyeiken/insect/d_tabani/hi.htm

  http://www.itc.pref.toyama.jp/syuppan/jh089033.html

土小屋への登山道から石鎚主稜線をのぞむ 鶴の子の頭は勿論!左山腹を巻く