残雪季の富士山(追):御殿場口〜富士山 
【2004.05.15〜16】

■先々週は、最も標高差の少ない富士宮口からの登行であったが、今週は、最も標高差の大きい御殿場口とする。
5/14、20時半過ぎ北九州発、4名交代で運転し5/15、6時半すぎには御殿場口登山口に到着。少しガスがかかっていたが、それもすぐ取れ、身支度をして出発する頃にはすっかり晴れ渡り快晴となる。

6:50頃、身の軽そうな1名の登山者出発。 我々も7:15には出発する。今回もボッカを兼ねているので20kg以上のザック重量になる。


本日の御殿場ルートは、登山口が標高:1440mだから、山頂までの標高差は2300m余り、3000mまでは、300m/時間、それ以上は、200m/時間で行くことにする。


予想所要時間は、およそ9時間。到着予定時間は、16時過ぎになりそうである。
登山口から、遥かなる富士を仰ぐ! 7:15、
御殿場口を出発

700台の収容能力の大駐車場は、ガラ〜ン!、数台あるが写真撮影目的のようだ。登山道に入る。広大な砂礫の斜面が眼前に展開する。富士ははるか彼方!シーズンは出店になる小屋辺りでブルトーザー道と合流する。緩んだ砂礫の道は、よくもぐり歩きづらい。ブルトーザー道のキャタピラーのトレールが比較的締まっているのでそれを辿る。

ブルトーザー道に沿ってほぼ一定間隔で打たれた木の杭が果てしなく続き、そして砂礫の丘に消え入っている。100m?近い間隔で打たれた杭だが、間隔は次第に小さくなりまるで遠近法で描かれた絵画のようだ。先行者が砂礫の大斜面の中に小さく見える。近くにいるようだが、杭の数を目で追うと実際には1km以上も離れているのである。

延々と続く杭、足許はグズグズで、先々週の静岡の方が言われたとおり、まさに『2歩前進、1歩後退』である。我慢、我慢・・・。

『君の〜行く道は果てし〜なく遠い。なのに、なぜ・・・』と問われても・・ネエ。
実は本日の泊まりが山頂なもんで・・・。

 登り初めから到着まで、ほぼ全ルート中において到着予定地点が見える長大なルートは、多分富士山だけだろう。富士に至るルートの中でも『単調さ』という点では、御殿場ルートが一番!単調作業を持続的に且、緩急なくこなす精神力をつけるにはもってこい!のルートです。しかしねえ・・・・・好き好きとはいえ、そんなヤマヤ、いるのかなあ・・と思いながら歩きづらい斜面の堅そうな部分を拾いながら歩を進める。

砂礫のオアシス?で休憩 ルートは宝永山の山腹を巻き
火口壁の上部に出る
標高2000mを越える

左手に見上げていた二ツ塚(1929m)と横並びになる辺りから登山道の道標がブル道から右手にはずれる。道標に従うがブル道より歩きにくい。やがて再びブル道に合流する。この辺りからわかりやすい登山道を行く。こまめにつけられたジグザグ道を丁寧に辿る。決して急いではいけないし短絡して登ってもいけない。なんせ先が長いんだから・・・・定速、低速登行が長時間・単調運動の決め手です。

快晴微風、さえぎる何者もない、植物も皆無の砂礫の大斜面と黙々と対話する?・・・・非常に素直な思いになるのは、気分を変える何者(物)もないからでしょうか。

次第に、博物館にある火山のレプリカのような色彩の宝永山(2693m)と並ぶ高度に達する。11:15、標高:2750m着。さすがに風が冷たくなってきた。見上げると、7合目小屋はまじかである。30分ほど快晴の空を見上げて大休憩する。残り標高差:1000m余り。11:45腰をあげる。相変わらず続く緩いジグザグを詰めれば、12;25、7合目3000m着。風がやや強くなり、気温が低下する。上着を着、手袋をつける。あと800mである。ここから、200m毎に休憩を取りながら行くことにする。


砂礫はズルズルでジグザグに登っても結構きつい 3000mを越えるとさすがに冷える! 宝永山、二ツ塚は眼下

宝永火口はすでに眼下になった。この辺りから残雪が出てくる。雪壁はないが所々、トラバースあり。長田(おさだ)尾根の標柱のある赤茶けた岩稜を回りこむといよいよ最後の登行である。富士宮ルートは最後が急できつかったが、御殿場ルートは最後までジグザグが刻まれペースを乱されることはない。


長田尾根の標柱 尾根を右に見て斜上 ようやく残雪季の山らしくなってきた

やがて浅間大社奥宮の鳥居が視界に入る。忠実にジグザグを詰め、15:30鳥居をくぐる。やっと着いた!。所要時間、8時間15分。予定より30分ほど早いが概ね予想通りの登行であった。
休憩していた先行・単独の方と情報交換。最近、富士宮口や吉田口から登り山頂ビバークしたが強風でテントを潰され非常に恐ろしい思いをした・・・・等々。で今日は泊らず下山するとのこと・・・・我々は、宿泊が目的なので・・・・それでは気をつけて!・・・辺りは誰もいないから我々だけのようだ。
風が次第に強くなる。気温は高く寒くない。到着した銀明館の軒先にテント設営する。スノーバー2本とピッケル4本で外張りを固定し、1ヶ所近くの石柱に固定する。設営した所は積雪量は十分だが気温が高く融雪中?で深部はシャーベット状、でも夜間は凍結するのでしっかり固定するだろう、と高を括っていたが・・・・・従って、ポールを直接張り綱で固定しなかった。

浅間大社の鳥居が本日の終着 小屋を風除けにして設営、しかし・・・ 入居前に全員で記念撮影

先々週は、2人でビール1缶のみ。しかし今日は気合入れて担ぎ上げたので各自ビールと焼酎!
しかも4人とも快調なので、御機嫌よろしく夕方まで過ごす。少し風が強くなったが気にせず、早めに就寝。


10時頃、うるさいテントの音に目が覚める。相当強くなってきたようだ
少々気になるので起き上がり外に出てポールを直接ザイルで鳥居に固定する。富士市と御殿場市の夜景がきれい〜、と言っていたらポツリ!ポツリ!


風は次第に強くなり、テントを大きく揺らす。時たま強烈なヤツがテントのグランドシートに入り込み背中が浮き上がる、周辺に置いた荷物がシュラフノ上に転がる、あたかも人が外から押しているような錯覚になるほど頭を押される・・・でも我慢、我慢、よくあることだ。

寝ているような覚めているような時間がすぎる・・・・2時半、テント内におちる雨だれが多い、シュラフはびしょ濡れだ!外張りが轟音を放っている。外張りが飛ばされた!
ランプをつけ全員起床、調べるとポールが一部湾曲、破断していないが長いポールのジョイントが外れ、鋭角に折れている。固定していたピッケルはぶっ飛び、それがテント本体に当たり数ヶ所破断!・・・・要するにテントは潰されていたのでありました。

雨風はおさまる気配はない。更に破断が進むと所持品が飛ばされるので急遽雨具をつけパッキング。明るくなるのを待って撤収することにする。荷をまとめ半壊してなお雨風に打ちのめされ続けるテント内で車座になって夜明けを待つ。翻弄されながら黙ってうずくまると、なんとも気がめいるし、明け方近くでさすがに冷えてきたのでガスをつける。火を見るとホッと気分が落ち着く。

 4時15分過ぎには逃げるように下山開始。下れば少しは収まるだろう・・・・しかし幾らも下らないうちにカウンタパンチを浴びる。猛烈な烈風が吹き出し我々4人ともあっ!という間に文字通り吹っ飛ばされる。しかもなかなかやまないので立ち上がろうにも立てない。体を保持できないのである。仕方ないので這うようにして下る。この風が冬の氷雪面で吹いたら!と考えると・・・・あな恐ろしや!とても生きて帰れないワ・・・


登山道脇のトラロープとピッケル頼りに烈風の合間をかいくぐり何とか長田尾根標柱までたどり着く。ここまで来るとさすがに飛ばされることはない。全身ずぶ濡れだがもう安全地帯だ。

あとは適当なペースで一気に登山口まで下る。
下って思うにこのルート、飽き飽きするのに飽きるぐらい長い!約3時間の下降で、7:15-30に登山口にたどり着いた。
皆さん、ほんとに御疲れ様でした。

【Reported by Y.Kubo  Photo by Y.Takaki & S.Okamura】


■まだ8時、早いので温泉あるかなあ・・・で思いついたのが昨年11月お世話になったローカル色豊かな溶岩温泉。地元のお客さんが多いので頼めば何とかなるだろう・・・・東富士五湖道路終点富士吉田ICを降りればすぐそこ。
風呂は清掃前だったがOK。溶岩レストランもオープン前だったがこれも開けてもらう。営業時間外に対応いただき有り難う御座います。勿論、溶岩プレートステーキいただきました。

帰路は、富士吉田ICから中央道経由、帰北は22時でしたが、全行程、関東から九州まで雨、アメ、あめ!・・・・ホントにお疲れさまでした。

■参加者:原田、岡村S、高木、久保、以上4名