伯耆大山 東壁:壁沢右岸稜〜槍尾根  2003.03.16

 今週末もダメ予報でしたから、半ばあきらめていましたが・・・うつろいやすい春の天気がいいほうに移ったみたいで・・・イヤイヤ、午前中まででしたがひさしぶりに青空ものぞく天気に恵まれました。出発直前予報では、晴れ⇒雨、到着したときは快晴。月も出ており彼方にぼんやりと大山の白い稜線が望める、ひょっとしたら・・・と期待はしてましたがほんとに晴れるとはねえ。来ないとわかりません、山は。勿論、逆の場合もありますが。
 ニコニコ顔で奥大山スキー場駐車場を 6:20出発。大山環状道路を鍵掛峠方面へのんびり足を進めれば30分程で『鍵掛峠登山口』へ至る。道路からは快晴の空をバックに白銀の槍尾根が望まれる。道路は除雪完了しているがゲートは閉ざされ通行はできない。多分、ここ数日のうちには開放されるだろう。

本日の取り付きは『鍵掛峠登山口』 気持ちの良いブナ林をのんびり行く

 人の丈以上もある雪壁を乗りこして天然のブナ林にはいる。幸いトレースがあるのでそれを追う。ここのブナ林は平原上で勾配も緩やか、しかも快晴という絶好の天候の為為気分がすこぶるよく足も軽い!勿論軽装ですから荷も軽いんですが、広々としたブナ林をほぼ北に進路をとる。朝日が射し木々の間から青空がのぞく。気分爽快!

ついてますねえ、青空も出てきましたよ! 鳥越峠からトラバースする

 文殊越からのトレースと合流、鳥越峠に上がる。ここから標高1200位を維持しながら駒鳥小屋上部を通過、キリン沢手前の尾根までトラバースし本沢へ下降する。本沢に降り立ったのが8:50、標高は1100m。ここから稜線まで標高差は600m弱だ。

本沢を行く。正面が壁沢右岸稜取付 左にキリン沢を見る

 東壁は初めてなので条件よければ壁沢右岸稜、ダメでも東壁本沢と振子沢を分けている尾根(天狗ヶ峰北東の1636mピークに突き上げている)をいくつもりである。小休止の後、出発。すぐ左にキリン沢を見る。正面が壁沢右岸稜の取り付きである。近づくとトレースがある。みるとキリン沢右岸の尾根筋から降りてきているトレースである。多分、文殊堂〜1405mピーク経由か?
 
 どうするか、東壁は初めてなのでちょっと迷った・・・・天候は? すでに早々と青空は雲で覆われグレーの曇天となったがしばらくは持ちそう・・・本日はトレースを使わせてもらうことにする。尾根は取り付きから急激に立ち上がり、登るほどに傾斜がきつくなり次第に痩せてくる。キックステップを利かせて登ればしばらくでひょっこり展望が開けた小ピークに出る。

 鋭い岩峰を天に突き刺した槍ヶ峰が眼前に迫る。槍ヶ峰の下方には大きな雪庇2ヶ所が見える。ここからやせ尾根になるのでアイゼンを履き登攀具をつける。お茶一杯飲んで出発。ブッシュがあるのでいくらか気が楽だが踏み抜いたら止まりそうにない。慎重に、そして確実に踏み込んで進む。マシマロのようなキノコ雪を越えていくと、トレースが消えた。

 左下の沢を覗くとトレースがある。先行パーティは尾根の途中で沢に下降し巻いた?ようである。ナイフエッジの突端まで行く。正面には槍ヶ峰から派生した岩稜が垂直の断崖となって壁沢に落ち込んでいる。先はいけそうもないが左は急傾斜だがブッシュが出ている。それを伝えば下降出来そうだ。ピックを利かせブッシュをつかんでクライムダウンする。

ブッシュの痩せ尾根を行く 進路を絶たれ左にクライムダウン

 次は雪壁だ。アイゼンをけこみ急雪壁を越える。傾斜が落ちたところで小休止。右手は槍ヶ峰から直接落ちている岩稜、登行意欲を湧かせる岩稜である。駒鳥小屋ベースで時間の余裕を持って取付けばいけそうだ。次回の課題かな?

 ルートを左の雪稜にとる。この辺りうっすらと乗った新雪の下は堅雪でアイゼンがよく効く、がスリップは禁物。尾根は次第に痩せ左側が断崖状になる。この辺からが本ルートの核心部か?ルートは稜線の大きな雪庇の間に突き上げる岩稜にとられている。途中出てくる岩はホールドやスタンスにするにはボロボロすぎる。大山は出っ歯が一番頼りになります。

気持ちの良い雪稜を行く ルートは2つの雪庇の間に抜ける岩稜

 アイゼンとピッケルのコンビネーションで登行を続ける、と大きな雪塊の上に飛び出す。高度感抜群!ここが最後のナイフエッジ。ここで落ちたら何にもならないから1歩1歩確かめながら通過、残り30m程、雪壁を登れば稜線に飛び出る。時刻は11:10、取り付きから約2時間かかった。

 登攀終了!、と同時に我々の終了を待っていたかのように小雨がぱらつきだした。いや〜予報って正確ですねえ。今日は実質的に終了ですから降られてもさほど恨めしくはありませんが。
 

最後のナイフエッジ。高度感抜群 槍ヶ峰をバックに記念撮影

 南壁三ノ沢方面をパチリ、そして全員で記念撮影をして早々に下降開始。数センチの新雪の下はガチガチ、急傾斜になれば下降も容易じゃない。キリン峠までは慎重に下る。1405mのピークからは文殊越〜鳥越峠のトラバース地点まで一気にシリセード。ここは快適そのもの、あっという間に樹林帯に入る。そのうち滑らなくなるから歩くしかないが、いったん楽するとなかなか気合が入らない。

登行尾根を稜線から俯瞰 キリン峠に向け下降

トレースを追っていくにもかかわらず5歩に1歩ぐらいは脛までもぐる。腿までもぐるとウンザリ。右がもぐったり左がもぐったり、ヨタヨタしながら下降。12:30車道に出る。駐車場着は12:45であった。6時間強の比較的短時間の行程であったが前半は青空の雪上散歩、後半は緊張した登行となり、おおむね『充実!』。参加者の皆さん、御疲れ様でした。(Y.Kubo記)

登行ルート概念図


概念図●からの上部(実線は登行ルート)


■幕営地:奥大山スキー場駐車場。無料。181号線江府町から、鏡ヶ成〜蒜山方面に入り20分程度。
■今回は天候に恵まれ、見通しOK、雪の状態も良好の為ザイル使用せず。
 しかし安全の為上部のナイフエッジはザイル出すべきだったのかもしれない。(反省点)
■温泉:神郷温泉。いつもは181号線日野町付近から山越え(日野街道)するが、距離は長いが181号線をそのまま走った方が楽です。
■壁沢右岸稜:仮称です。多分、通称名があると思います。壁沢は25000分の1に記載されています。
■装備:冬山装備一式+登攀具。念のためスノーバー、アイスハンマー携行したが使用せず。
■参加者:新、原田、赤澤、久保、以上4名