伯耆大山:大ノ沢〜弥山 2003.2.23 |
■春に向かう天気のリズムと人間社会の暦がなかなかあわない。前回に引き続き今週末も大山は吹雪。残念ながら期待した眺望は得られなかった。 しかしながら弥山の南面に広大な雪面を展開させている大ノ沢は、上部が急傾斜となり部分的にバーンしているため緊張する登行となった。 全体的には単調ではあったが結構充実した1日であった。 【写真右:トンネルから横手道へ】 ■22日14:45橋本邸(門司)出発。天候はうっとおしい小雨、何処に行くか?現地判断にしましょ!ということにして400km強、雨の中ドライブ、19時過ぎ現地着。小雨なのでウロウロして雨宿りできそうな東屋を探すが・・・徒労に終わり結局トイレの完備した下山キャンプ場駐車場に幕営。時刻は20:30。 5時半頃起床、外は霧雨。視界はあるが見上げると上部はガスの中だ。目的地候補は、@一ノ沢右岸稜、A大ノ沢。25000分の1マップでは前者のほうがルートファインディングが必要か?今日は多分ガスの中だろうから後者の大ノ沢に行くこととする。テント撤収し桝水原に移動、スキー場駐車場で支度をする。 7時40分出発、閉鎖された車道を行く。積雪量は1月よりも多いようである。しばらく行くと正面に大ノ沢が望める。ブッシュ帯の上部(1200m以上)はガスで見えない。出発して20分ほどでトンネル着。トンネル手前から取り付く。雪は膝下ぐらい、右岸を行けば更に20分のひと踏ん張りで横手道を横切る。 横手道から右岸に上がり左のブッシュ帯と沢上部にむかって何段も設置された堰堤群の間を行く。時折膝上まで潜るものの適当に締まり歩きやすい。大ノ沢は南面なので風もなく静かだ。『風もなく静かでいいねえ』と誰かが言った途端、風が出て霧雨が雪に変わる・・・・いつものことだがなぜかこうなる?小休止してカッパを着る。進むほどに傾斜が強くなってくる。 |
横手道から大ノ沢右岸へ! | 延々と堰堤が設置されている大ノ沢 |
次第に左のブッシュが薄くなりやがて途切れる。このへんで方向を左に振り最後のブッシュの所で休止。雪も締まり傾斜も出てきたのでアイゼンをはき登攀具をつける。標高は1200m位である。残念ながら今日はガスであるが。ガスがなければ正面は大雪原のはずだ。左手に小さな雪庇のある尾根がぼんやり見える。ほぼ真横にトラバースするが傾斜が強いうえに部分的にアイゼンの爪がはいる程度の堅雪がありちょっといやらしい。 |
雪庇を乗り越し尾根に出る。後は尾根を忠実に詰めるだけだ。初めは膝下ぐらい潜っていたが次第に堅くなる。それにつれ傾斜もついてくる。前方右手上部にぼんやり岩稜が出てきた。 |
少し左に舵を切り直登する。岩稜を右に見る付近、つい片手をつく格好になるほどの傾斜になる。アイゼンの爪が利く程度だ。このまま行けば反り返る形状で傾斜強くなるので左の草付に逃げる。草付を直上、小コブを越え、再び沢筋に戻る。 |
右岸を行く。そろそろ傾斜がきつくなってくる。 | 標高1250m付近。ここから雪壁を直登 |
やがて右上から左下に斜下降したスキーのトレールに出会う。横切るように直上すれば今度は左から右斜上している靴跡。西面からの登行者があるようだ。頂上台地が近くなったようだ。一本立てる。標高は1450m位だ。あと150m程で頂上台地である。 |
この辺り傾斜が強い。雪面も半分バーンしておりスリップしたらまず止まりそうにない。慎重な足運びが必要である。 気を抜かずに登りつめると急に傾斜が落ちる。どうやら頂上台地についたようだ。あたりはガスで視界はいくらもない。遊歩道の残骸が台地に踏み込んだことを示している。時刻は10:40である。長い時間歩いたようであるが横手道から約2時間しか経過していない。 |
上部は部分的にバーンしており慎重に通過 | 頂上台地に到着 |
視界はないが遊歩道の手摺やらトレースやらを頼りに東方へ進むとぼんやり山頂小屋のポールが見えてきた。今日はエビの尻尾はついていない。先日の好天で落ちてしまったようである。 小屋着11:00。小屋で休憩しようと思ったが除雪中の管理人?はアイゼン脱いでください、という。まあ当然のことだがちょっと面倒・・・するとすぐそこに雪洞がある。そこで休んだら・・・というので御言葉に甘えて小屋の西側に移動。ありました、たいそう立派な雪洞が。 |
山頂小屋横の雪洞で大休止(ほんの10分足らずですが)。ここが今回の終了点でした。 |
中に入り熱い飲み物を取り腹ごしらえをする。大休止だが長居してもしょうがないので10分ぐらいで切り上げ出発。下山は夏道を6合目まで行きそこから大山の西面をトラバース気味に下降、横手道に出ることにした。 |
夏道は北方向に下るので北風をまともに受ける。寒さを通りすごして氷粒が顔にあたり痛い。夏道はほぼ一定間隔の赤布があり吹雪いても迷うことはない。一目散で駆け下り6合目。ここからは今日のオプショナルツアーである。ワクワクしてトレースの全くない沢にはいる。気持ちのいい雪面が下っている。少しトラバースするが、沢の上部になるので結構締まっている。歩くの面倒・・・カッパが少しもったいないがシリセードに切り替える。 |
シリセード、そしてトラバース、シリセード・・・を繰り返し徐々に下降する。雪崩のデブリで埋まった牡丹沢の下部あたりを越えるとさすがに傾斜は落ちシリが滑らなくなる。時折股下までもぐる雪を掻き分け下降する。それにしてもよく降ってる。人の気配が全くない真綿に埋もれた樹林帯はなんとも気持ちがいい。登りのラッセルは黙々・・だが下るラッセルは大股で大胆、足が気持ちよくスーッ、スーッと出るから楽しい。 |
私の生涯で、ここで雪と遊ぶのはこれっきり!? |
傾斜が殆どなくなるとひょっこり横手道に出た。:12:30着。山頂から1時間20分だから結構早い。横手道を左に20分で桝水原スキー場の上部に出る。ここは傾斜が緩くシリが滑らないので左隅を歩いて下降、駐車場着が丁度13時であった。 今日は前半が単調な雪面登行で変化に乏しかったが、後半が楽しいシリセードとふかふか雪のラッセルになりそれなりに充実した1日でした。悪天にかかわらず参加された皆さん、おつかれさまでした。3月にもう1回行きますから懲りずに御参加ください。(Y.Kubo記) |
★参加者:豊田、新、高木、赤澤、久保、以上5名 ★装備:ザイル、スコップ、ツェルト、スノーバー、各自(アイゼン、ピッケル、登攀具一式、ヘルメット、、ミトン、魔法瓶、行動食、雨具、等) ★ザイルは使用しなかったが、条件によっては上部で必要。ヘルメットはなくてもいいが雨具のフードかぶる時フードが垂れ下がらず具合がいい。防寒にも最適。 ★温泉:時間に余裕があったので神郷温泉による。お客が少なくいい湯でした。ここは露天風呂があります。 ★山行情報:宇部山岳会殿の山行報告より情報をいただきました。 |