伯耆大山東面:地獄谷〜振子沢 2003.10.25-26 

■昨年は、時期を逸して秋の大山を愉しむことができなかった。今年は紅葉鑑賞には最適と思われる10月下旬に山行を実施することが可能となったので、念願だった地獄谷から振子沢を訪ねることにした。

さて、問題は入下山である。一向平〜地獄谷〜振子沢〜野田ヶ山〜大休峠〜一向平の周遊もよさそうだが、宝殊尾根も捨てがたい・・・・思案の結果、少し距離は長くなるが、川床を起点・終点とする周回ルート:川床〜大休峠〜大休口〜地獄谷〜振子沢〜宝珠尾根〜阿弥陀川〜川床、をとることにした。

■ルートと所要時間(休憩時間含む)

【10/25】 川床-(2時間)-大休峠-(1時間)-大休口-(大山滝往復:1時間)-大休口-(地獄谷経由:3時間15分)-駒鳥小屋前河原(幕営)
【10/26】 幕営地-(振子沢経由:1時間45分)-ユートピア小屋-(三鈷峰往復:30分)-宝珠尾根分岐-(宝珠尾根経由:1時間50分)-阿弥陀川ルート取付-(1時間20分)-阿弥陀滝-(1時間30分)-川床


■参加者:川中、田村、岡田、原田、赤澤、久保、以上6名

東面登行ルート概念図




 計画では、1日目の実行動時間が6−7時間になりそうなので前夜発とする。10/24、21:35小倉紫川ICで高速へ乗る。夜間のせいか順調に飛ばし?、25日2:00川床に到着。ネットの情報では川床は駐車スペースが十分でないとのことだったが、なるほど登山口正面の道路脇空き地にせいぜい5−6台かな。遅いので早速空き地奥にテント設営し2:30には就寝する。

 10/25:朝方はかなり冷え込み寒さで目が覚める。登山者の車も多くなったので早目に起床、撤収し7:40出発とする。阿弥陀川にかかる橋を渡ると、阿弥陀滝コースとの分岐を示す道標がある。皆さん!明日の14時過ぎには一周してここに帰ってくる予定ですよ・・・・そうなんですか、ふ〜ん、ハイハイ・・・とそっけないが明日になればワカル!


阿弥陀川コースとの分岐。明日の終点はここ! この辺りは来週ぐらいが盛り? 石畳道

【阿弥陀川】この清らかな流れは阿弥陀川といい、三鈷峰・野田ヶ山の水を集め阿弥陀滝等の大小の美しい滝をかけて流れ出ています。
水脈の少ない大山にあっては、清流の絶えない川で古くは木地屋がこのあたりで生活していたことが川床の墓地や集落跡でしのばれます。

 少し冷え込んでいるが歩き出すと汗もかかず丁度いい気温である。30分程で香取分岐に出る。ここで朝食やら用足しを済ませる。大休峠までは中国自然歩道の一部になっておりよく整備された歩道で、川床からの標高差はおよそ400m、峠までは緩やかなのぼりである。標高700mの川床辺りはまだの感があったが、峠に近づくにつれ木々の色づきがよくなる。時折現れる石畳道を踏んでいくと川床から2時間ほどで大休峠避難小屋前(1112m)に出る。9:45峠着。

【石畳道】:人里はなれたこの石畳は、遠く大山寺とは離れていますが、野漆・野井倉方面からの参道の一部として付近の村人達によって慶長年間(1600年頃)に寄進造成されたものといわれており大山寺に対する信仰の厚かったことがしのばれます。

 峠付近は、秋色濃厚、秋真っ盛りである。快晴で遠くにユートピア小屋も望まれ、少し汗ばんだ肌に乾いた冷風が心地よい。気温は低めなのでのんびりベンチに寝転んで日向ぼっこ、といきたいくらいところだが・・・・10:15大休口に向かって出発。よく整備された歩き易い歩道を行く。青空と紅葉のコントラストが眩しい山腹をしばらく行けば彼方に無機的な鉛色の大山東壁が望まれるようになる。日差しを浴びる鮮やかな紅葉をめでながら1時間も行けば、11:15大休口に到着する。


大休峠から振子山方面をのぞむ。最奥は大山の稜線 避難小屋前にて全員集合


峠から大休口へ下降 途中、大山:槍尾根〜東壁を遠望

 地獄谷コースはここから分岐し谷に下りている。直進すれば一向平に至る。折角なので大山滝(名瀑百選)を見に行くことにする。ザックをデポ、15分も下れば大山滝の展望台がある。ここからでも滝は見えるが、歩道を伝えば滝壷まで下降できるのでマイナスイオン?を浴びにいく。落差37mの2段滝で、1段目と2段目の間にも滝壷があり、正面から見ると岩の伽藍のなかに上の滝壷があるように見え、そこに1段目が水を落とし、更に伽藍から湧き出た水が2段目として下の滝壷にストレートに落ちる様がすっきりしている・・・こんなところでしょうか?

 少し下の吊り橋付近?まで散歩された女性群と合流して大休口まで戻る。腹ごしらえして本日のメインイベント、地獄谷遡行スタート!

大休口までは紅葉の盛り
大休口(地獄谷分岐) すっきりしたたたずまいの大山滝(名瀑百選)

★地獄谷!聞くからに険悪な谷を想像させるが実際は穏やかな谷である。大休口から数分下降すれば堰堤上流の河原に出る。ここから駒鳥小屋前まで距離は3km強ほどあるが標高差はおよそ350mしかないので平均傾斜は極めて緩い。したがって大部分は河原歩きに終始し登攀的な個所はないが、取付きからすぐ右岸を巻くところがありここの登下降が簡単な岩場になっている。ここはフィックスがあるので問題なし。
 その他、駒鳥小屋あたりまで堰堤が3箇所ほどある。重荷の場合、1箇所だけ乗越に苦労するがここもフィックスがある。又、歩き易いところを探して遡行するので右岸〜左岸の渡渉個所は多い。踏み跡は切れ切れに続いているが、水流沿いに歩けるので踏み跡をはずしても問題ない。水量少なければ濡れずに渡れるが、飛び石はぬるっとしたものが多いので、すべって靴をぬらすよりは沢靴を履いたほうが快適である。

地獄谷に入る 岩場の登下降が1ヶ所あり おおむね河原歩きだ

 大山滝の観光を終え、大休口を12:30出発、地獄谷へ下る。河原までは立派な道がついている。全員、沢靴に履き替え遡行開始。
フィックスのある右岸の巻き道を越え、同じくフィックスのある岩場を下降、谷に降り立つ。次の堰堤は右岸、左岸ともにフィックスがある。楽そうな左岸に取り付き、これを越える。

 谷は、左・右岸が迫って狭くなったり、広い河原になったりしながら少しずつ高度を上げていく。入谷付近は色づきのさえなかった両岸も大休滝を過ぎるあたりから色濃くなる。

左岸にかかる大休滝 次第に濃くなる秋色

   

右岸も左岸も秋一色!

 このあたりから木々の色濃さに反するかのように上空が雲に覆われ少し日差しが乏しくなる。赤や黄色は、薄いグレーのベールに包まれたようにシックになる、が時折射す日差しにパーッと若さを取り戻したように燃え上がる。その度に、ワーッとか、きれ〜い!とか騒いでいた面々も、時間の経過と共に変化のない景色に飽きがきたのか、疲れてきたのか次第に口数が少なくなる。それにあわせるかのように日差しの射す機会も次第に少なくなりほんとうに曇りになってしまう。

 まだ歩くんですか?と言いたそうな不機嫌な顔つきになる頃、正面奥に槍尾根の稜線が視界に入る。やれやれだ・・・・・もう少しで本日のお泊り場だ!
 何とか我慢の範囲内に駒鳥小屋前の河原に到着した。時刻は15:45。大休口から3時間15分ほどかかった。荷物かついで休み休み来たからまあまあのペースである。

駒鳥小屋(写真中央) 早速、ビールで乾杯!

テント2張設営、玉葱+ベビーハムの炒めもの、きゅうり、その他各種のつまみと運び上げたビール・焼酎でささやかな宴を催す。メインディシュはカレーライス。疲れたのか誰もトラ?に豹変することもなく早目に就寝。夜半、降雨あり。

■テントサイト:河原に6-7張りOK。

昨晩ほど冷え込むことなく曇天の朝を迎える。

今日も長丁場になる。テント撤収して7:15出発する。今は標高900m位から1200-1300あたりが盛りのようである。曇天にもかかわらず丈の高い樹木が多い振子沢取付からしばらくは秋色濃厚な眺めが続く。取付からユートピア小屋までは標高差600m弱、2時間強の登りである。踏み跡は明瞭なのでそれぞれのペースで登る。

曇天のなか、高度が上がるにつれてまわりの季節は中秋から晩秋へと変わる。やがて標高1300mをすぎる。見えるはずの稜線は今日は濃いガスのなかである
天候、思わしくないが、2日目スタート!

振子沢取付 振子沢の下部樹林帯

 象が鼻に続く急登の尾根取付で全員集合。あとひと登りでユートピア小屋である。それぞれのペース(各自マイペースですからバラバラになります)でスタート。先頭は9:00小屋着。なぜかしらメンバーの一人は天狗峰をピストンしてしまう・・・・が、10時前には全員小屋に集合。宝珠尾根分岐まで移動し、三鈷峰を往復する。残念ながら少しガスのかかる宝珠尾根や剣谷を除いて山頂からの眺望は得られなかった。

  
三鈷峰山頂 ガスでぼんやりかすむ宝珠尾根

 10:30、宝珠尾根に向かって下降開始。この辺りまで来ると紅葉目当ての多くの登山者にすれ違う。宝珠尾根は予想通りの色づきで今が盛りである。尾根から見下ろす元谷もなかなか綺麗である。小さな登下降を繰り返し次第に高度を下げていく。中宝珠で一服してのんびり下降する。この辺りブナ林が目をひく。色づいた低く薄い藪から程よい間隔でブナがすくっと立ち上がり、さわやかな秋風が吹きぬける!

 薄い藪のすっきりした樹林帯で心地いい風に吹かれて皆さんの顔がほころぶ。その調子でもうひと踏ん張りだが・・・・・・・

宝珠尾根から北壁基部をのぞむ 宝珠尾根からの墓場尾根

宝珠尾根を行く。すっきりしたさわやかな尾根です

 下宝珠越を超えて宝珠山方面へひとのぼりで向かって右に下る阿弥陀川ルートの分岐である。時刻は12:20、テープがあり分岐は明瞭だ。踏み跡は、時々途切れそうになるが気をつければ見失うことはないし、ほぼ一定間隔でテープもある。

 踏み跡は宝珠山を巻くようにトラバースしながら少しづつ下降気味に続いている。途中、複雑に数条の岩稜を急激に剣谷に落としている三鈷峰の北西面〜北面が望まれる。急斜面の下降に注意しながら1時間も行けば、阿弥陀川をはさんで十分に色づいた対岸の樹林帯が近づいてくる。最後は木の根や枝をホールド、スタンスにして小さな尾根を急下降すれば阿弥陀滝の真ん前に出る。時刻は13:40である。皆さん、腕力と神経をつかう下降だっただけにほっとした表情。お疲れ様です!

水流僅かな阿弥陀滝 阿弥陀川両岸も愉しめます

 阿弥陀滝は落差30mはありそう、今は水流僅かであるが周辺のもろそうな断崖の中にあって、滝だけが彫刻された岩の塊のようでもある。阿弥陀滝から流れ落ちる清流で喉を潤し20分ほど休憩する。あとひと踏ん張りである。

 滝から川床までは標高差約250mだが、距離があるので緩やかな谷の下降である。切れ切れな踏み後を追って右岸〜左岸と渡渉を繰り返し下降する。滝らしい滝は殆どないが、鬱蒼とした感じのない明るい谷である。淡々と下るが、本日の行動時間は7時間を超え皆さん、そろそろお疲れのようで予定の1時間を越え3時半過ぎに大休峠コースとの分岐にたどり着いた。やっと終了です。御疲れ様でした!

帰りは、いつもの食堂で『大山そば定食』を食べ、大山環状道路〜鍵掛峠〜裏大山スキー場と観光ドライブ、最後はこれまたいつもの神郷温泉で汗を流し帰北しました。

常に原生林の紅葉を愉しみながら歩けるこのコースは、長時間で多少足許の悪い個所あるものの『伯耆大山の秋』を堪能できますヨ。
お勧めで〜す!(Reported by Y.KUBO & Photo by K.AKAZAWA)

【川中さんからのお便りです】
先日はお世話になりました。今晩HPを開いて私の始めての本格的荷物を背負ってのデビュー山行がこんなにも美しい映像で飾られているなんて。感激です!あの美しさは胸に 刻まれていると思っていたのですが、再び思いださせて頂けるなんて・・・。きつさ、痛さ、辛さ、も忘れてTry Again できそうです。   (^_-)-☆  川中
大休峠との分岐に到着!




伯耆大山東壁を望む