2003年正月合宿 南アルプス南部:赤石岳〜荒川三山縦走 2002.12.28-2003.01.01 |
■南アルプス南部の核心部3000m峰五座(赤石岳〜荒川岳)を次々と踏破する本年の冬山合宿は、連日の好天に恵まれかってないすばらしいものになった。計画では、当会冬期未踏破の赤石岳〜聖岳縦走の予定であったが、赤石岳東尾根(ラクダ尾根の冬ルート)登行に予想以上の時間を費やした為、急遽変更した。変更したとはいえ大沢岳〜兎岳〜聖岳と比較して甲乙つけがたい登り応えのあるルートだと思う。予定通りとはならなかったが赤石〜荒川は初めての3名(新、原田、赤澤)にも満足してもらえたはずである。 |
■赤石岳〜聖岳の縦走は、荒川への縦走より1−2日余計に見ておいたほうがいい。大沢岳、兎岳、聖岳間の切れ込みは大きく距離もある。長くなれば天候も考慮せねばならず、そういう点では荒川岳への縦走よりワングレードあがると見ておくべきだろう。 |
■今回も岡村Mさんにお願いして格安でロングボディ車をお借りした。各人の山行費用負担が少なくてすむだけでなく、足の便の悪い地域にもかかわらず入下山がスムースになり、時間限定のメンバーは非常に助かりました。有り難う御座いました。 |
12/27、21:00JR小倉駅北口出発。山陽道、名神、東名を乗り継ぎ 12/28 6:30AM静岡ICで高速を降りる。 コンビニで朝食を買出し、362号線〜県道60号線経由で畑薙第1ダムまで入る。ダム堰堤を越えしばらく行ったゲート前駐車場着が9:30。早速身支度を整え、10:00出発。 椹島までおよそ18kmの車道歩き、考えただけでもうんざりだが一般車の通行は禁止されているので仕方ない。椹島が標高1100mだから標高差はおよそ150m、ゆる〜い登りなのでベースまでのキャラバン、と都合よく考えて、時速3kmの見当で、のんびり歩くことにした。 聖沢出合いには赤石ダムができておりこの辺りだけは15年前と様変わりしていた。それ以外は昔のままで、ふところ深い南アをたっぷり味わえる車道歩きである |
畑薙ダム堰堤から茶臼〜上河内の稜線を望む | 椹島登山小屋でくつろぐ |
少々、うんざりする頃、15:30椹島登山小屋に到着した。1棟が冬期用として開放されており、利用させてもらう。嬉しいことにストーブ付である。丁度、鹿をさばいていた地元の猟師の許可?を得、薪をくべ火をおこす。ありがたいですねえ、ネット情報ではストーブあり、とあったけど本当に暖を取れるとは思いませんでした。 水場も近くにあり言うこと無し!あとは酒・・・こればかりは現地調達というわけにはいきません。チビリのつもりが、つい・・・・持参したボトルは半分カラ!ブレーキの利かないメンバーですから仕方ないですが。 昨夜は夜通しの移動の為睡眠不足、酒の助けもかりてぐっすり休みました。夜半に2人パーティが到着。本日のお泊りは計7名でした。 |
★12/29 快晴。昨夜は満天の星であった。6:30、熟睡した為か寝覚めよく気持のよい出発である。今日の予定は標高2540mの赤石小屋までだ。標高差は約1400m、かかっても7時間かな。小屋までは夏道(大倉尾根)をたどる。 取り付きは明瞭、車道から直接鉄製の階段を登り取り付く。しばらくは桧カラマツの植林帯である。積雪はわずかで登路は程よい傾斜の為、難なく高度を稼ぐ。標高差250m/1ピッチ(45-50分)位のペースで2300m位まではいたって順調。 さすがに2000m越えるあたりから積雪は増してきたが幸いにも先行者のトレールがありそれをトレースさせてもらう。 |
まだまだ元気!ペースを守って快調 | 雪に埋もれた赤石小屋 |
このペースでいけば予定より相当早い12:30頃小屋着!と思いきや、そうはいきません。実はこの尾根、標高2300m辺りから傾斜が落ち、登り一方からわずかではあるが登下降のある登路に変わります。その分横引きが長くなるわけで時間の割には高度が上がらない、しかも積雪がさらに増しトレールをはずすと股下までもぐる、そのような状況でなかなか着かない。少々気持ちがイラツキかかる14:00、やっと赤石小屋(冬期小屋)着。(歩けば必ず着く、時間の問題!、当たり前なんですが、当たり前のことがそうでなくなるのが山でして) 自分勝手に思い込んでいるにもかかわらず思い通りいかなければ疲れがどっと出ます。体と精神は直結してますからネ。岩登りに限らず歩行でもマインドコントロールが大事ですぞ! |
赤石小屋から北面:荒川三山を望む。右端が千枚岳 |
小屋は、先着者2名。リーダーは富士見平(2700m)までトレース、とのこと。冬期小屋のちょいと上部に新しい小屋が立っている。そちらの方が眺望がいい。南面には赤石沢を隔てて聖東尾根〜聖岳の大きな山体、さらに目を右に移すと奥に兎岳の三角錐、さらに右に転じれば赤石岳の巨体がそそりたつ。北面に目をやると、荒川三山のゆったりした白い稜線が陽光に輝いている。そう、この尾根は、南ア南部3000m峰すべてをぐるりと一望できる展望台なんです。富士見平にあがれば富士山も眼前!訪れる価値は十分ありますよ。 |
雪に埋もれたトイレを掘り起こし用足しできるようにして早めに休憩、というか酒宴。残りもわずかな為、思い切ってカラにしようと決意。ないならないであきらめつきますから・・・・しばらくして昨夜同宿した2人パーティがやってきた。彼らは荒川三山縦走とのことである。 各自500ccの魔法瓶に夜用の白湯を詰め、さらに各自1リットル朝用の水を作る。これは朝用であるが湯たんぽにもなりシュラフに入れダッコして寝ると暖かい。今夜も星が綺麗だ。明日も晴天のようだ。オヤスミナサイ・・・・。本日のお泊りは9名でした。 |
赤石小屋南面:聖岳東尾根〜聖岳。右奥は兎岳 |
12/30 晴天。昨日先行していた2人は赤石岳往復とのことで4時ごろ出発した。我々は、4時半起床、6:40出発。上部の新しい小屋を経て富士見平を目指す。登るにつれ頭だけ顔出していた富士山が、ジリッ、ジリッとその端麗でどっしりした姿をあらわす。雲海を抜きでた富士は、まさしく『謹賀新年の年賀状』そのもの。モルゲンロートに燃える赤石も美しい。ここに、この時刻にいなければ味わえない優越感の混じる爽快感、いつもながら感激の夜明けです。 |
モルゲンロートに燃える赤石岳 | 雲海に浮かぶ富士山 |
富士を背にして、尾根を進む。重荷でのブッシュ混じりのコブの登下降は結構しんどい。やせたコブを越えていけばやがて最低のコルに降り立つ。ここは富士見平より低い。コルからはブッシュの殆どない雪稜、先行者のトレールはあるが、こちらの方が重荷、もぐる足を一歩一歩引き上げながら進む。トレール全くなければさらに大変な労力だろう。御二人さん、昨日に続き先行してもらい有り難う御座います。 |
富士見平から東尾根を望む | ブッシュ混じりの痩せたコブを越えていく |
ルートは次第にやせてくる。いくほどに赤石岳は威圧的になり、そして紺碧の空を区切る白い稜線が近づく。やがて細いリッジをはさんで尾根は小赤石岳の頂稜に向かって急激に高度を上げる。ここが東尾根の核心部だ。ここで初めてアイゼンを履き、登攀具をつける。軽装なれば問題ないだろうが今回は重荷、安全の為ザイルを出す。およそ40mの岩と雪のミックス壁。慎重に越える。これ以後は急傾斜だが容易な雪稜、アイゼン装着でさらに重くなった足をだましながら稜線に這い上がる。すでに13:00を回っている。 小休止の後、零下の強風を右頬に受けながら広い稜線を赤石岳へ向かう。途中で赤石岳往復組の先行者2人に会う。ラッセルのお礼を述べる。お互い御安全に! |
赤石岳北面(三本のリッジが目を引く) | 東尾根核心部(40m程のミックス壁) |
雪煙舞う赤石山頂 | 小赤石岳直下をトラバース稜線に出る。もう一息 |
14:00、標高3120mの赤石岳山頂着。山頂からは、予定している大沢岳、兎岳、そして聖岳に続く稜線が見える。はるか彼方だ。もう2時を回った。強風の稜線を避け幕営できる地点までは少なくとも2時間はかかりそうだ。5時間程度で東尾根は抜けると踏んでいたが、予想外に時間を食ってしまった。今から2時間歩くのはたぶん困難、今日歩けても明日も明後日もある。疲労困憊したら最後である。どちらにしても今日は山頂泊りになる。明日からどうするか?・・・・・そう思いながら山頂直下にある避難小屋(冬期一部開放)に入る。せまいが綺麗な小屋だ。今日はここに厄介になろう。 |
相談の結果、転進することにした。南へ向かわず、北へ向かう、即ち荒川三山を踏破し、千枚岳から蕨段経由で椹島に下山することとする。そうすれば2日間で帰れる。岡村S、久保は再来であるが、南アの一級のルートだ。何回いっても損はない。 |
あの2人、そのうち来るだろうなあ、と思ってたらやっぱりやってきた。本日のお泊りは7名でした。 |
東尾根全景(右端が富士見平、左の凹部が核心部) | 赤石山頂にて満足の5人 |
残照に染まる小赤石岳、右にのびる尾根は本日の登行ルート:東尾根、遠くは荒川三山 |
12/31 晴天。今日も晴れた。こんなに晴天が続くのははじめてである。6:45出発。今日は千枚小屋まで行く予定。相当の長丁場になるだろう。風は強いが視界明瞭で何の不安もない。昨日の小赤石岳まで戻り、東尾根に別れを告げ北へ向かう。稜線はウインドクラストしておりアイゼンが小気味よく効き、爽快そのものだ。やがて大聖平への下降にはいる。ここも強風で軟雪は飛ばされて、残りはクラストし傾斜は急であるが、歩きやすい。所々顔を出している夏道を拾いながらおよそ300mの下降で大聖平(2680m)である。ここで足かせであるアイゼンをはずす。足が軽〜い!。 |
黎明の富士右に見て北へ向かう! |
荒川前岳までは夏のトラバースルートを避け稜線通しに行く。緩やかな起伏を2つほど越していくと眼前に衝立状の岩が屹立、その左は大岩の急なガレである。ルートはこのガレの登り易いところを伝っていく。下部は大岩で浮いた部分もあり注意が必要だ。やがて細かいガレに変わり、注意深く詰めると稜線にでる。ほぼ稜線通しにいけば荒川前岳(3080m)である。大聖平〜前岳は標高差400mあり、急なガレのぼりで気も使うため思ったより疲れる。赤石岳を出てから前岳まで5時間強費やしている。千枚まで全行程の4割くらい残っているからあと3時間はかかる。着合いを入れなおして後半戦だ! |
荒川中岳(3083m)までは一投足である。中岳には避難小屋がある。15年前にお世話になった。2人で暴風雪の中、逃げ込んだ小屋である。吹きさらしの稜線では実に有り難い小屋だと思う。東岳(悪沢岳、3141m)へはゆるい下り、所々痩せた岩稜もあるが、問題なくいける。やがてコル。コルからは急傾斜200m強の登り。ほぼ夏道通りにひと踏ん張りで東岳山頂。朝出発して7時間を越えた。疲労の色濃いがあと2時間で今日は終りだ。頑張ろう! |
振り返れば、赤石岳照らすモルゲンロート |
東岳からは、岩を伝い、あるいは岩の間を縫いながらいく。やがて平凡な丸山。平凡といっても標高は3032mある。ここから千枚岳に下る。初めは淡々と下るが千枚岳へは3つほどコブを越えねばならない。ここにきての岩場は堪える。我慢の一歩一歩で千枚岳(2880m)。ようやく本山行のラストピークだ。 振り返れば薄暮に赤石岳〜荒川岳の稜線が浮かぶ。最後のホットポカリを飲んで千枚小屋へ下降。初めは夏道沿いだが途中からハイマツ帯を突っ切って直接千枚小屋へトレールがある。ワカンのトレールはよくもぐる。本日最後のひとあがきで千枚小屋(冬期一部開放)に到着。時刻は16:20、今日の行動時間は、約9.5時間でした。4日目でもありみんな疲れました。 |
小赤石岳を下降、大聖平へ向かう。眼前に荒川三山ガ待っている。遠いなあ! |
荒川前岳に到着 | 本日最後の悪沢岳への登り。みんなヘトヘト! |
やっとたどり着いた悪沢岳山頂 | 富士山を友にした山行もこれでオシマイ・・・またくるよ・・・ (千枚岳を下る) |
埋もれたトイレ掘り起こそうとトライしたが、積雪1m以上もありギブアップ。早めに夕飯、アルコールないのは寂しいが明日は下山なので好きなものを食べる。あの2人どうしたのかなあ?・・・・・真っ暗になっても音沙汰なし。今日は中岳の避難小屋だろう。・・・・ところがやってきたのです。辛抱強い!、おそれおりました。ということで結局本日のお泊りは7名でした。 |
夜の予報では、関東地方平野部でも積雪!とのこと。ようやく普通になりそうな気配。降りすぎませんように!(なんと身勝手な) |
01/01新年 降雪はたいしたことはなかったようである。椹島への下山ルートのトレールはしっかり残っている。視界も悪くなく、曇り時々晴れ、といったところ。今日が一番の長丁場である。椹島まで5時間、さらに車道を畑薙のゲートまで5時間の予定だ。出発は6:20、小屋が標高約2600mだから椹島まで1500m駆け下らねばならない、ワカンのトレールを追って下山開始。このルートは傾斜がゆるい分距離がある。途中、一部のぼりもあり、気合いれていかないと先が長いので精神的にくたびれそうである。それでも下山だから足取りは重くない。 |
サイナラ、赤石岳!またネ〜(標高2350m付近から) |
サイナラ、荒川岳!またネ〜(標高2350m付近から) |
蕨段(2073m)をすぎ、小石下(1586m)を通過、最後は?、下りの筈なのに登りがある、いやな気分でその岩稜を登り、そして凍てつく急なガレを下れば吊橋を渡って車道に出る。11:00着。大休止の後、畑薙のゲートへ向け出発。車道をひたすら歩く、歩く、そしてやっとゲートに15:30到着した。これで歩行は終了した。あとは1000kmのドライブを無事故で帰るだけだ。 |
到着した頃から急に気温が下がり始め、曇ってきた。降雪か? 静岡までは標高1000m近い山越えをしなければならない。井川をすぎ山手にかかる頃から降り始めた。見る見るうちに道路が白くなる。降雪とカケッコしながら山越えし、ぎりぎりで平地に戻った。静岡でスパ”美人湯”で汗を流し、静岡駅近くの”のみくい処 魚彩”で打ち上げ、駐車場で仮眠後帰途に着いた。北九州着は1月2日午前10時でした。皆さん御疲れ様でした!(Y.Kubo記) |
■参加者:新、原田、岡村S、赤澤、久保、以上5名 ■主要装備:6人用テント+外張(冬期小屋利用で使用せず。入会して初めての経験!)、40mザイル×1、ワカン×2、登攀具一式(ビナ、シュリンゲ、スワミベルト)、スコップ×2、その他冬山標準装備、食料(朝夕各7食、行動食6食)。ザックウエイト:初日時点で22-24kg |